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◆ 脱出breakout〜対峙
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同じモノで違うモノ。それが、彼女たち。
恐慌状態に陥ったNo.0の精神は拡散し、強大なエネルギーを撒き散らし…
同じモノであるエルレーンのモノと連なりあい、
そして、つながった精神は彼女の中にダイブした。

エルレーンが、No.0にあげると「約束」したモノ…
それは、「名前」。
「ハ虫人」たちがNo.0には与えようとしなかったモノ、
彼女だけのモノ、この世で最も美しく響く音の連鎖。

人は自分の「名前」に固執する。
「名前」を付けた時点で、それは特化され、個として認識される。

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◆ 「死の風(El-「風」sion-「死」)」
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エルレーンがNo.0に与えたモノ。
「名前」…かつて、自分があの友に与えられたモノ。
そうして、その贈り物はNo.0のこころを開いた…
彼女に、一つの大きな決断をさせるまでに。

この「No.0」というキャラクターは、この話を考えたかなり当初から
スパロボ編に出すつもりだったわけですが、
実は、初期の話では、
○初登場時のテンションと性格のままで突っ切る(えーッ?!)
○戦いのさなか、精神をエルレーンに取り込まれてしまう…身体を奪われる
ということになっていました。
これじゃあ、No.0は単なるエルレーンの精神のイレモノ状態。
あまりにそれはひどすぎると自分で思ったので、
彼女にも物語を作ったのですが…
いやあよかった、そんな残酷な事しないで(笑)

話も深くなった気がするので、コレでよかったんだと思います。

ちなみに、エルレーンは何も考えずに
「恐竜帝国にあった絵の中にいた、キレイな女神様」の「名前」を
彼女の「名前」として与えたわけですが、
実はこれは、「エルレーン」という彼女自身の「名前」の由来と
対を成すものです。彼女は知る事がありませんが。

「エルレーン(El-raine)」。その名が示すのは、すなわち…
Prologueキャラクター紹介参照)

<ちなみに、「エルシオン」というのは
ギリシャ神話に出てくる「エリュシオン(エリジウム)」と
関連がなくもありません。
エリュシオン [(ギリシヤ)Elysion] :
ギリシャ神話で、神々に愛された人々が死後に住む楽園。
ヘシオドスはここを「至福者の島」と呼び、ホメロスでは西の果ての野原などとされ、
またウェルギリウスでは地下の冥界にあるとされた。
〔ローマ神話ではエリジウム。
フランスの「エリゼ宮」や「シャンゼリゼー」という名称はこの語にちなむ〕>

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◆ Forget-Me-Not(「私を忘れないで」)
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彼女の最後の望み。それは、自分を「名前」で呼んでもらうこと。
彼女自身がつくった、大切な四人の「トモダチ」に…

自分の身体をエルレーンのモノと為し、
そして自分自身をもエルレーンと為す事を決めたNo.0(エルシオン)。
彼女の「答え」は、正しかったのか?
だが、その「答え」に、誰も何も言う事は出来ない。
それが、彼女の選んだ最も幸福な道なのだから…!

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◆ 融合fatalfusion
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最も愚劣かつ容易。最も甘美かつ自己犠牲的な選択。
そして、エルシオンはエルレーンに溶け、
二人の流竜馬のクローンは、一人の少女…エルレーンへと融合します。
その全てを、共有して。

さて、リョウの精神の中に取り込まれたエルレーンは
彼と対話する事すら出来ず、彼の精神の中に浮遊しているだけでした。
にもかかわらず、何故No.0の身体の中に取り込まれたエルレーンは
そのような状態にならなかったのか?
それはひとえに、「No.0の自我の弱さ」にあります。
彼女がいともたやすくエルレーンに同化できたのは、
ひとえに「彼女の自我」が遥かに弱かったから…
エルレーンを包み込めるほどに強く広い精神を持っていたリョウのようにはなれず、
No.0の精神は彼女を取り込めなかったのです。
それほど、No.0の自我は弱く小さく、そして幼かった。
それは、リョウの中で消えなかった、同化することができなかった
(リョウにとっては完全な「異物」となるほどに、強い「自分自身」を持っていた
…リョウを圧倒し、相対する事が出来るほどではないにせよ)
エルレーンと対比すると興味深いです。
エルレーンもまた、彼女の望み…
エルレーンと同化し、エルレーンの一部になりたい…を聞き、
戸惑いながらもそれを止めることはしませんでした。
…それは、かつて自分も望んだことだから。

挿入されている文言は、宗教歌Requiem、Introitus(入祭唱)より。
原文の「彼ら」「私」を「彼女」に変えています。
「あってんのか、ヲイ」という突っ込みは、あえて言わない(笑)
↓以下、原文

Requiem aeternam dona eis, Domine: 永遠の安息を彼らに与えたまえ、主よ。
et lux perpetua luceat eis. 絶えることのない光を彼らの上に照らしたまえ。
Te decet hymnus, Deus in Sion シオンにては主に聖歌を捧げ
et tibi redetur votum in Jerusalem. そして、エルサレムにては祈りを捧げまつる。
Exaudi orationem meam! 私の願いを聞きいれたまえ!
ad te omnis caro veniet. 全ての肉は、主の御元に参ります。

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◆ Awaking(「眠り姫」の復活)〜
甘く、切なく、泣いてしまうくらいに素敵な「約束」
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さて、スパロボ小説第二部「No.0編」は、この章で終わりを告げます。
エルレーンはエルシオンと融合し、そして復活する…
己の分身、そして今まで心を通わせる事すら出来なかった
己のオリジナル、リョウとの再会をも果たして…

エルシオンは、これ以来出てくることはありません。
彼女はエルレーンに溶け、エルレーンの一部となったのですから。
…ですが、それは彼女の「消滅」を意味しているのではない…
それが証拠に、この章の中、またこれ以後の話の中。
エルレーンの中に、ほんの少し…
「エルシオン」の姿を垣間見る事が出来るはずです。

No.0は…エルシオンは、苦悩と混乱の末、それでも救われました。
…では、彼女を救ったのは一体誰なのか?

その「答え」は、きっと彼らだけが知っている…

「人間は可変である」
そう、エルレーンはまた一つ変わりました。
No.0との戦いの中で、エルレーンという少女が手に入れた変化…
「『敵』ならば必ず殺さねばならないのか?」
「戦いの他に、道はないのか?」
これらの問いに、「いや、違う」と答えることの出来るこころ…
彼女は、「正義」を手に入れたのです。

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◆ You listen to me, El-raine!
 (…あるいは、リョウの苦悩)
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…訳すと、「俺の言うこと聞けよ、エルレーン!」です(笑)

ボクは、やっぱりドラクエ世代なのデ(笑)
(しかも、ファミコン版の頃の!)
こういう明るく平和で素朴なお色気とかが好きなんだよな。

まあ、それはさておき。
この時点で、もうすでに
リョウのエルレーンへの意図的な介入が見られます。
それはまるで教育ママのように(笑)→(参照
このスパロボ小説編でははっきりとは出しませんが、
できれば書きたい続編でこのあたりのことを書いていきたいと思っています。

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◆ Monologue〜Nobody hears, Nobody knows〜
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さあ、いよいよ始まります第三部…「剣鉄也編」。
今まであまり目立っていなかったグレートマジンガーのパイロットである彼、
この小説のもととなっているゲーム
スーパーロボット大戦α外伝
では、とても大きく扱われています。
それにならい、この小説でも彼の苦悩と戦いを書いていくつもりです…

グレートマジンガーのパイロットとして戦うため、
施設から科学要塞研究所に引き取られてきた「子ども」。
それが、剣鉄也でした。
彼は苦しい特訓を課す兜剣造に、次第に「父親」を求めるようになっていきますが…
甲児と鉄也の確執は、つまりその根本からあったということです。
一人の、たった一人の「父親」という人物から。

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◆ 来たれ我が最大の宿敵よ、我に殺されんがために来たれ
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鉄也はもともと、この未来の世界の揉め事に干渉することを嫌い
はやく自分たちの時代に帰りたがっていました。
その理由の一つはやはり…
己が宿敵、ミケーネ帝国の存在にあるものと思われます。

ミケーネと戦うために育てられた鉄也。
彼にとって、その『敵』のいない世界では、戦う理由がないに等しい…
戦う事をしなければ、自分の存在価値がゆるがせになってしまうにもかかわらず。

だから鉄也は焦っている。

最後のほうの描写が、ちょっと怖いのも…
その辺で、彼がぎりぎりのところにいるのをあらわしたかったからです。

ダンテをよみがえらせたのは、誰か?
…それは、暗黒大将軍とゴーゴン大公です。
No.0(エルシオン)と同じく、魂呼び(たまよび)の秘術を用いて…

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◆ ねじれる絆(所詮、交わらない道)
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「こんな『未来』の世界に来てまで家族を忘れられないような甘ちゃんは引っ込んでろ」
これは、実際ゲーム中で鉄也が甲児に向かって言ってたセリフです…
これで一挙に険悪になった二者ですが、
この二人をいさめてたのがあの獣戦機隊だったので、
何か笑ってしまいました^−^;

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◆ 三日月〜光浴びて、初めて光り輝くモノ〜
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「長嶋茂雄は向日葵の花、どうせ私は月見草」
野村前ヤクルト監督・野村監督のこの言葉が、忘れられません。

「華」のある、っていうか、目立つ奴ってやっぱり何しても目立つんだよね。
それがいい悪いッてんじゃないんだけど。
けれど、だからといって―
そうじゃない奴がダメって言うわけじゃない。

胸張れよ、


お前はお前でいいのさ。



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