ドイツ語アルファベットで30のお題
〜マジンガー三悪編〜


"E"--die Erinnerung(回想)





思い起こして見れば、子どもの時から…俺たちは、ずっとそうだった。




嫌いなモノを残そうとして、後で殴られたこともある。
口答えをちょっとしたばかりに、腕を思い切りつねられたこともある。
陰でおやつをとりあげられたことはしょっちゅうだ。
「勉強になるでしょ」とか言って、何故か彼女の宿題をやらされたこともある。
ひどい時には、裁縫の宿題までさせられた。
けんかをすれば一方的で、殴る蹴る噛み付くひっかく体当たり踏みつけ髪の毛引っぱりとさんざんな目に合わされた。
それでいながら彼女は何故か俺を「立派な男」に鍛えることにご執心で、それはそれはもうとんでもない特訓を俺に強いた。
めちゃくちゃに大きな犬とむかいあわされ、なつくように仕向けろだの、
15mはゆうにある大木のてっぺんに登れだの、
挙句の果てには泳げない俺を湖の中に突き落とした。
…本当に、よく死ななかったものだと、今になって思う。
まだまだある。
料理の失敗作を喰わされるのはいつも俺だし、愚痴を聞かされるのもいつも俺。
相談事も困り事も、彼女は何でも俺のところに持ってくる。
何だか、どう考えてもつりあいがとれない。
何だか、どう考えても…俺は、彼女にひどい目にあわされる一方なのではないだろうか?








「んー?ミヒャエル、どうしたの?」
「いや…少し、昔を思い出してた」
「へえ…!何かセンチメンタルじゃない?らしくないよ、ミヒャエル!」
「…ふふ…俺って…随分、かわいそうだったんだなあ、って思ってさ」
「?…な、何で?」
「それを俺に言わせるのか、このいじめっ子め」
「え、ええー?!わ、私ぃぃ?!」
「…当然だろ」
「ななな、何でよぉぉ!わわ、私は、いっつもミヒャエルのこと心配して…」
「ま、いいよ、そんなに気にしなくて。昔のことだし」
「え…」
「…それに、」








「これから、ラウラにはたぁっぷり返してもらうよ…
あの頃からのつけだ、随分楽しませてくれそうだしな?」
「…?!」









マジンガー三悪ショートストーリーズ・"Zwei silberne Ringe, ewige Liebesbande"より。
どういう「つけの返し方」かは、あなたのご想像に任せます。