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ジンギスカン(Dschinghis Khan)にあこがれて


Kasper Hauser(カスパル・ハウザー)

★対訳
彼は寄る辺なく、ぼろをまとっていた
ニュルンベルクの街に現れたとき
彼は何もわからない様子で、ただ黙り込んでいた
彼の素性も―わからない

人々は驚いて彼に視線をやった
秘密めいた彼は皆の興味をひきつけた
皆にとって、彼は賤しい道化
半獣半人の存在だった

カスパル・ハウザー、彼を人はそう呼んだ
カスパル・ハウザー、一語たりとも理解できなかった男
左の手に、何がしかの証を持っていたけれど
それでも彼の秘密は明かされぬままだった

人は彼を教え導いた、だんだんと
だがそのうち、疑いを抱くようになった
彼は自分たちの言う以上のことを理解しているのではないか―
だからそのうち、彼のことを用心するようになった

もしかしたら彼は王子だったんじゃないか?
王位を簒奪された王子―
その不運からただ逃げ去ることしかできなかったのではないか?
そしてそいつらは彼がとうに死んだと思っているのでは―

だがある日、カスパル・ハウザーが戻ってきたのだ
…胸に、ナイフの刺し跡を刻まれて
彼は死んだ―今まで同様に、一人で
何故か、如何にしてかなど、誰も知りえない
何故か、如何にしてかなど、誰も知りえなかった

カスパル・ハウザー、彼を人はそう呼んだ
カスパル・ハウザー、一語たりとも理解できなかった男
左の手に、何がしかの証を持っていたけれど
それでも彼の秘密は明かされぬままだった

★解説
実在の人物・カスパー・ハウザーが主題。
幼少に言語を獲得不可能な状況におかれるとどうなるか…という、
非常に哀しい実例の一人です。