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パソコンと私。


人はそれを崇めたてまつった。そのありさまはまるで狂宴のようであった。
そしていま、彼らを取り巻く環境はどうなっているのだろうか。


その部屋は、いつでも彼らと人であふれている。パソコン自習室という名の、『世界への扉』である。
ここで人はレポートを書いたり、メールを読んだり、あるいはただ単にひまをつぶしたりする。
その媒体となるのが、パソコンである。ここにはマッキントッシュもウィンドウズもある。今日私はマックを使いに…いや、
触れに、やってきたのだ。そのまだ新しく美しい筐体は、鈍くやすりがかった半透明の蒼きアクアマリン。
そう、あの…iMacだ。いつからだろう、私の心の中に彼への感情が生まれたのは。
CMで、店先で、雑誌で彼を見つめるたび、たとえようもないその感情が生まれ、その姿をまるで目の網膜に焼付けでもするかのように
私の視線をそのなめらかな肢体にくぎ付けにしてしまうのだ。
…だが、もはやその思いが私の胸にわいてくることはない。
彼が、ほかならぬ彼自身がそれを拒絶する。
彼は、彼は、もはやその誇りも悲しみもすべて捨て去り、諦観の年すら漂わせ、私の目の前に、ただ、存在している。
その姿が私に感情を表させないのだ。
今まで彼を用いたものは、初め彼の美しさをたたえた。
だがそのくせひどく扱い、傷を残し、苦しめ、そして彼を置き去りにしてしまった。
そして、この私も…そうなのだ。
そのすりガラスのような体の中なら、スピーカーを通し、諦めにも似た単調なせりふを語る。
『…かかか……かかかっってて…かか…かかかかかか…っ…(人間語訳:…お前もどうせ俺でネットにつないで、アソビたいだけなんだろ?
テキトーに設定いじってフリーズさせて、その挙句いきなりリセットしやがる…)』
だから人間はいやなんだ、そう、まるで呪詛のごとくその言葉はうつろに宙に霧散する。
そんな『彼ら』の声に、ほかの誰も気づかない。
そして私もそんな人間の一員であるわけだ。
だから私は何も言わず、ただその声を無視しキーボードをたたく。
多くの人間にさらされたそのキーボードは、少しばねが弱くなっていた。

(つづくならつづけ!)

*はい、六回目です。しかしいいます。これはフィクションなので、ここに出てくる私ってのはゆどうふではないんですよぅ^−^;