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恋愛小説「パソコンと私。」


出会いは別れのはじまり。そしてカウントダウンが始まる。
いつそのカウントがつきるかなんて、誰にもわからないから。



ほの暗い液晶のディスプレイは何も言わぬまま私を見ている。
新たな私のパートナー、彼の表情は読み取れない。
前の彼と違って薄くスマートで、軽く、性能も段違いだ。
だがそれでも私の中に「不安」という感情が見え隠れするのはなぜだろう。
私はそっと彼の電源スイッチ…銀色に鈍く光る突起に手をかけた。
静かなファンの音。そして画面が静かに浮かび上がる…
私の高鳴る心とはうらはらに、彼は静かに「キー入力しよう」の画面を
表示したまま、動かない。
ああ、私を待っているのね。「次へ(N)」を押せと…
なんてまどろっこしい手順。二人の出会いには無粋だわ。
そう思いながらウィンドウズの導入をさっさと済ませていく。しかし、多少浮かれ気味の私とは対象的に、彼は何も言わないまま。
作業速度が速いためではあるが、無口に作業を進めていくその姿は、まるで私を…新たな主人である私を拒絶し、無視しているかのようにも取れた。
どうしてなにもいわないの。私が気に食わないの。何かいやなことでもあるの。
私は彼に問い掛ける。私だけが、問い掛ける。
彼は…違っていた。たとえメモリが少なくても、それでも話し掛けてくれた。
それとも…それは彼が無力だったせい?
わかってる彼を捨てたのもその無力さのせいだということも。
ナニを私は追憶しているの?私はのぞむ物を手に入れたんじゃなかったの?
「…ならそんなんじゃなかった」禁忌の言葉が思わず口を突いて出る。
それでも何も言わない彼。私は先ほどまで心一杯にあふれ出るかのようであった高揚感がすうっとさめていくのを感じた。
「ねえ、なにかいったらどうなの?!」私はたたきつけるようにキーを打ち、彼に呼びかける。
時折彼が発するのは私への言葉ではなく、そのうちつけられる痛みによるものだった。
そして私たちの一日目は、終わった。

(電車はつづく〜〜よ〜〜〜♪)


*5話目にまできましたが、まだこれがゆどうふだと思ってる方はいないでせうね^^;