ドッキドキ!ドクター・ヘルの羅武理偉(ラブリィ)三国志珍道中☆ (16)


「でも、それって一体どういう仕組みなの?」
「ああ、それはですね」
首を傾げるヤヌス侯爵に、大斧使いの老爺はにこり、と笑んで答えた。
「まず、書かれた書簡は一つの場所に集められるのですよ。
そうして、そこから各地に配送しなおされる…と、いうわけです」
「なんかよくわかんねえなあ、その『縦横往来』ってのは」
と、理解できない…と言った様子で口を尖らせるのは、妖杖使いの少女。
ブロッケン伯爵には、同胞の夏圏使いが耽溺しているその趣味自体がよく納得できないようだ。
「だってさ、相手の素性もわからずに書簡なんて送りあってさ。
手紙書いてる相手が誰かも知らねえのに、そんなこと楽しいのかい?」
「ええ」
ある意味もっともな彼女の疑問に、暗黒大将軍は首肯する。
そして、意味ありげな口調でこう付け加えるのだ…
「素性がわからぬからこそ、成立するものもあるということですよ…」
「…?」
一方のアシュラ男爵は、もう彼ら三人の会話などちっとも聞こえていない。
返事を一通分書き上げ、さっそく二通目の書簡に手を伸ばす。
達筆でつづられたその書簡には、しかしながら書き手の心の若さを思わせる勢いがある…

こんにちは、「円月少女」さん!
転居されたのですね、通知が来て驚きました
今頃はちょうど新居でくつろいでおられることでしょうか
私は相変わらず書に埋もれるような毎日を送っています
よき師たる方がおられるので、いつも勉強させてもらっています!
私もいつか戦場にて、あのように立派に軍を動かしてみたい…と
気は流行りますが、今はやはり勉学をつまねば(*´Д`)
それでも、いくつか計などを思案で立ててはみたんですよ
敵陣を一網打尽にするような火計や、敵の兵器を
逆用して一挙に火薬で焼き尽くすような奇計など…
いろいろな古代の戦略などを研究していますが、
やはり火計に勝るものはありませんね(`・ω・´)シャキーン!
もちろん、策だけで将としてやっていけるわけでもないので、
双剣にて一騎打ちの修練などもするのですが…
それでも、訓練を終えて自室でゆっくり書を紐解いているときが
私にとって一番心安らぐ時みたいです(´∀`)

それでは、また!
「燃えながら火の鳥のように」より


(おー…「燃え火の」さんは、やっぱり火が好きなんだ)
書簡につづられた彼の策からは、その筆名の通り火計をかなり重んじていることがわかる。
彼女の主君たるあの男とは雲泥の差と言えるだろう…
(ちょうどいいや、こないだのこと書いちゃえ…っと)
アシュラ男爵は、以前諸葛亮より下された特務の顛末を、ちょっとばかりその返信に書いてしまうことにした。

「燃え火の」さんへ
お手数かけちゃってごめんなさい、「円月少女」です!
おかげさまで、だいぶこちらにも慣れました
今はもうぜんぜん平気です〜☆
「燃え火の」さんは、やっぱりお名前どおり火の技が大好きなんですね
私のご主君は、なんか逆なんですよー(・∀・)
この間も火計の効率を計る…みたいな特務に出向いたら、
その最中に大事な装備品を燃やしちゃったみたいで。
しくしく泣きじゃくりながら帰ってきました、ちょっとかっこ悪い(´;ω;`)
でも、やっぱり一流の武将になるためには、
いろいろな策に通じてることが大事ですよね!
いつも勉強がんばってる「燃え火の」さんも、
きっと素敵な軍師様になられるに違いありません( ´∀`)b!

それでは、またのお手紙お待ちしております
「円月少女」


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