ドッキドキ!ドクター・ヘルの羅武理偉(ラブリィ)三国志珍道中☆ (15)


「毎度!…えーと、アシュラ、だんしゃく…さん?」
「!あっ、はーい、私ですぅ!」
それは、とある日。
主君・司馬懿のもとに向かった曹操軍都尉ドクター・ヘルの留守宅を預かっていた副将たちのもとに、男が書簡を届けにやってきた。
どうやら、彼が持ってきた数通の書簡は、全て…
「わーい、一気に三つも来た♪」
…夏圏使いの少女・アシュラ男爵あてらしい。
彼女は書簡の束をうれしそうに受け取ると、にこにこしながら差出人を確認している。
そんな彼女を見やって、半ば呆れ気味につぶやくのは、妖杖使いのブロッケン伯爵。
「…アシュラの奴、よくやるぜ」
「?…書簡、かしらぁ?」
首を傾げる新入りの桜扇使い・ヤヌス侯爵に、彼女は説明を付け加えてやる。
「ああ、文通が趣味なんだってよ」
「へえぇ、何だか意外ねぇ?」
「何でも、お互いの居場所を知らせずに書簡を交換できる…んだってよ」
「あら、それ聞いたことあるわ。あれでしょ、『縦横往来』?」
「そうです」
と、そこに割り入ってきたのは、大斧使いの老爺・暗黒大将軍。
「お…そういや暗黒大将軍さんも、あいつの文通仲間だっけ」
「ええ、退屈しのぎに出してみたのですよ」
「へえぇ、知らなかったわぁ…暗黒さんはそんなこともやるような人だったのねぇ」
「ふふ…色々と、ね」
ヤヌスに不思議そうにそう言われ、老人は穏やかに笑んだ。
相も変わらず、底が知れない笑み…
一方のアシュラは、そんな三人の会話など一向に耳に入らない様子。
早速返事を(三通分!)書かねばならないので、ちょっとばかり忙しいのだ。
彼女が最初に一つの書簡を開く…
小さな字で、丁寧に記述されたそれは、差出人の繊細さを表すかのようだ。

急な転居とのこと、とても驚きました。
さぞかし大変だったことでしょう。
新しい場所でも、「円月少女」さんならすぐにやっていけそうですね。
わたくしのほうは、何とか無事にやっております。
しかしながら、やはり難しいものは人間関係でしょうか。
未だに同輩たちとなじめず、少々つらい思いをしております
わたくし、生来社交下手なもので、もともと人付き合い自体が
苦手なのですが…
つい、執務室に引きこもるか、一人で鍛錬に励むなど
してしまって…
これではやはりいけないですよね。
「円月少女」さんが以前おっしゃられていたように、
わたくしから皆に近づいていくべきなのでしょう。
ですが、悲しい事に、わたくしがあまりにも拙いものですから
冷酷無比で何を考えているのかわからない、などと
最近ではうわさされているようです…
仕官先を変えたほうがいいのか、とも思いましたが、
やはり一度その器に惚れ込んだ主君をお守りするため、
またその大望を実現するお手伝いをさせていただくため、
もう少しここでがんばりたいと思います。
わたくしの長双刀が何らかの力になるのなら…と思い、
今日も訓練に心血を注ぐのみです。
また落ち込みそうになってしまったら、どうか喝を入れてやってください。
あなたのお便りを、いつも本当に楽しみにしています。

それではこの度はこの辺で
「物憂い仮面」


(あー…「物憂い仮面」さん、相変わらず真面目だなぁ)
うんうん、と軽くうなずきながら、「円月少女」ことアシュラ(これは彼女の筆名)は軽く眉根を寄せた。
(あんまり無理しすぎないで、って書いとこう…
ただでさえまっすぐすぎるんだもん、がんばりすぎても良くないよね)
そう心の中で一人ごちながら、彼女は筆をとる…

「円月少女」さんへ。
お久しぶりです、「円月少女」です!
お手間を取らせちゃって申し訳ありません、本当に突然で…
今は何とかやっていけてます、ありがとうございます
「物憂い仮面」さんはすごく細やかな方なんですね、私のご主君にも
ちょっとは見習ってほしいくらいです(´・ω・`)
私のご主君は、本当に強引で自分しか見えていらっしゃらないような方です
そこまでいくとちょっとダメかもですが、
ちょっとぐらいわがままでもいいと思いますよ(´∀`*)
周りの人も、きっとそのうちに「物憂い仮面」さんのやさしさをわかってくれるはずです
だから、あんまり無理なさらないでくださいね(´∀`)ノ
「物憂い仮面」さんのご主君も、「物憂い仮面」さんのような忠実でひたむきな方を
部下に持ったこと、本当に幸運だと思っていらっしゃるに違いありません!
私も夏圏がもっと上手く扱えるよう、一生懸命修練しますね
お互い技に磨きをかけましょう\(^o^)/

それでは、またのお手紙お待ちしております
「円月少女」


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