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鷹の目が見つめるもの


兜十蔵は、見つめていた。
真っ直ぐに、見つめていた。
常人には見えぬ、虚空の彼方を見つめていた―




天才たる彼の見つめていたものは、何だったのか。
地べたに這う凡人には、それを見ることは出来ない。
大地を這う地虫には、それを見ることは出来ない。




彼は、鷹のようだった。




遥かに飛びぬけた頭脳と才能を持つ彼が見つめていたものは、何だったのか。
重力を切り離して天空を突き抜ける鷹の見つめていたものは、
鷹の目が見つめたものは―




今は亡き彼の跡を、人々は追い続ける。
鷹の目が見つめたものを、己の目で確かめようとして。
一人の天才の足跡を、人々は追い続ける―




それが徒労であろうとも。
それが無益であろうとも。




そこに、希望がある限り。