Now you are in the Website Frau Yudouhu's "Gag and I."
TOP俺たちゲッターロボマニア>青春Fire!〜知力・体力・チームワーク!〜(1)


青春Fire!〜知力・体力・チームワーク!〜(1)





「―クイズは、格闘技だ!」



「何が何でも、第一問、突破するぞーッ!」

-uuuuuuuuuuuuuuuuooooooooooooooooooooooooooooooooo!!

「燃えていくぞ!」

「Fire!」 Fire!
「Fire!」 Fire!
「Fire!」 Fire!


「YESのみんな!自分たちの選択に、自信はあるかーーーーッ?!」

-uuuuuuuuuuuuuuuuooooooooooooooooooooooooooooooooo!!

「Fire!」 Fire!
「Fire!」 Fire!
「Fire!」 Fire!

「NOのみんな!自分たちの答えに、賭ける勇気はあるかーーーッ?!」

-uuuuuuuuuuuuuuuuooooooooooooooooooooooooooooooooo!!

「Fire!」 Fire!
「Fire!」 Fire!
「Fire!」 Fire!

「行くぞーーーーーーーッ!オーロラビジョンに、注目ゥゥゥゥゥゥッ!!」

-uuuuuuuuuuuuuuuuaaaaaaaaaooooooooooooooooooooooooooooooooo!!



神隼人は、頭を抱えていた。
文字通り、頭を抱えているのである。
その表情はさえず、何か重苦しい苦悩の色を漂わせている。
だが、こともあろうに―その苦しみ、その悩みをともに分かち合うはずの仲間たち、同じ早乙女研究所所属ゲッターチームメンバー、流竜馬と車弁慶は…
「おい、やっぱ着替えってたくさん持ってったほうがいいかな?」
「そうじゃないか?何てったって夏だからな、洗い換えだっているだろうしさ」
「う〜ん、でもさあ…一回戦で負けたら、そこでもう長野にとんぼ返りだろ?
そしたら、そんなたくさん荷物持ってくの恥ずかしいし…」
「バッカだなあリョウは!はじめから負ける気で行く奴があるかよ〜!」
「…それもそうだな!あはははは!」
「はっはっはっは!」
げらげらご陽気に笑いながら、うきうき気分で荷造りをしているのだった。
…何で、こんなことになってしまったんだ。
ハヤトは、自分の中でその問いを繰り返す…
あの時から、幾度も幾度も繰り返しつぶやいてきたその問いを。

そう、それは先週の日曜日のことだった。
朝っぱらからベンケイに激しく叩き起こされ、不愉快な目覚めを迎えたその日。
何故か、その傍らにはリョウも立っており、ベンケイと一緒に早く出かける準備をしろと自分を急かしてくる。
もしや百鬼帝国のメカロボットが襲来したのか、と、寝ぼけた頭にばちっ、と火花が散る。
すぐさまに支度を済ませ、リョウとベンケイに続いて飛び出た―のだが。
連れて行かれたのは、早乙女研究所ではなかった。
バイクに乗って向かったのは何故か駅、そこから電車に乗ってしばらく揺られ乗換えをして着いたのは―名古屋。
おい一体どういうことだどうして名古屋に来なきゃならなかったんだ、と詰問した自分に、その時になってようやくベンケイが見せたモノ…
それは、一枚のはがきだった。
そしてその裏面には、でかでかと書かれた文字…


「マイオンスペシャル・第16回全国高等学校クイズ選手権」


その瞬間になって、二人の意図をようやく悟った―
「いいじゃん、高校生クイズだぜ?高校生のうちしか参加できないんだからさ〜」
「思い出作りと思って、な?」
にやにやと笑いながら、そんなことをあいつらは言っていた。
全国高等学校クイズ選手権。通称・高校生クイズ。
世界的にも有名だった「アメリカ横断ウルトラクイズ」には年齢制限のため参加できない高校生のために、新しく作られた「高校生だけが出場できる」数少ない全国規模のクイズ大会だ。
全国47都道府県から大量の参加者を集め、「世界一参加人数の多いクイズ番組」としてギネスブックにも掲載された経歴を持つ。
毎年夏休みにいつも大会が開催されるということは知ってはいたのだが…
まさか、こいつらがそんなものに出てみたいと思うような奴だったとは。
ベンケイはともかく、リョウまでも…
「あ〜最初の問題とかわかるかなあ?そこで間違って帰るのって、何か情けないしな!」
「おいおい、予習とかしとくかベンケイ?一応図書館でクイズの本いくつか借りてきたぞ!」
「おっ、さっすがリーダー!頼れるぜ〜!」
…二人とも、やる気満々だった。
もう、ごねたところで帰してもらいそうにない。
ここはとりあえずこいつらに付き合ってやって、適当に参加して負けて帰るか…
そう思いながら、到着したのは「すいとぴあ江南」。
俺たちの高校、浅間学園の所在地・長野県を含む中部地方の予選大会の第一次会場である。
同い年ぐらいの高校生であふれるその広場は、熱気と人いきれで軽いめまいすらした。
そこに現れた、TVでおなじみの若き名司会者・河豚澤朗(ふぐさわ・あきら)―
彼の口から、放たれた第一問。○か×、YESかNOかの二者択一問題。
青空に、二つの張りぼての城。
"YES"ののぼりを立てた城。そののぼりの色は、青。
"NO"ののぼりを立てた城。そののぼりの色は、赤。
そして、その中空に浮かぶアドバルーン。
河豚澤アナは、遠くに揺らぐアドバルーンを指差し、高らかに問うた…

「名古屋城、犬山城などの名城を持つ、ここ中部5県の中には、あのアドバルーンよりも高くそびえる城がある」

わああっ、と会場がどよめき―
人の群れが、右往左往し始める。YESに向かい、NOに向かう…
「どどど、どっちだ?!どう思う、ハヤト?!」
「えー…城って言われても!ハヤト、お前わかるか?!」
「…」
リョウとベンケイはもう最初から見当のつかない問題のようだった。
…「このまま間違いのほうに連れて行って、とっとと終わらせて帰ろうか」とも思ったが…
まあ、一問目で負けて帰る、と言うのは、さすがにあんなにもわくわくしていたこいつらがかわいそうかな、と思い直した。
せめて準決勝ぐらいまでは行ってから…というほうが、いい思い出とやらにもなるだろう。
そういう「仏心」と言うのを、がらにもなく出してしまったのがよくなかったのかもしれない。
「…YESだ。あのアドバルーン、50mはなさそうだ。名古屋城は50m以上あったような気がする」
「よ、よーし!じゃあYESだ!YES行くぞ!」
「急げ!締め切られちまう!」
興奮した二人にひきずられるようにしてYESのゾーンに移動。そこで、答えの発表を待つ。
やがて、YESゾーン・NOゾーンの間にロープがしかれる。
熱気でもやる大気の中、その場にいた6500人以上の高校生の視線が、一点に集まった―
河豚澤の声が、マイクを伝わりスピーカーを揺らす。
「それじゃあ、行くぞーッ!お裁きキャッスルゥゥゥゥゥ!」
その途端だった。
大地が、震えた。
いや、震わされているのだ―
「…ES!YES!YES!YES!YES!」
「NO!NO!NO!NO!NO!NO!」
叫んでいる。四方八方が。
いつの間にか、その場にいる誰もが叫んでいた。
声を枯らさんばかりの絶叫が、俺の鼓膜を貫き、大地を震わせているのだ―
脳まで揺さぶらんばかりの絶叫の海に、俺は飲み込まれていた。
「YES!YES!YES!YES!YES!YES!」
「YES!YES!YES!YES!YES!いーえーすーッ!」
リョウも。
ベンケイも。
全力で、叫んでいる。
暑い。熱い。
汗が流れる。
吸い込む息も吐き出す息も、全てが熱い。
照りつける太陽。思考を狂わせる。
音が、聞こえない。
こんなにも強烈な音なのに、むしろその音が聞こえない―
熱い。熱い。熱い。
「YES!YES!YES!YES!YES!YES!」
「NO!NO!NO!NO!NO!NO!」
「YES!YES!YES!YES!YES!YES!」

目の前のデカい兄ちゃんが叫ぶ。
妙な仮装をしたチビが叫ぶ。
タンクトップ姿のボインちゃんが叫ぶ。
揃いのTシャツを着た三人が叫ぶ。
リョウが叫ぶ。
ベンケイが叫ぶ。
そして、そのYESコールの海の中、別の音が耳朶を打つ…
それは、俺の心臓の音だった。
どくどくどくどく、速い鼓動。
速い脈動が、俺の全身に血を巡らせる。
危険なぐらいに、速く速く速く速く。
勝手に速すぎるビートを刻む心臓についていくべく、俺は大きく息をつく。
熱気を吸い込む。感染する。
ああ、つまりは、俺は―
俺も、飲み込まれているのだ…この異常で異様な空間に!
(…畜生!)
俺は、自暴自棄になることに決めた。
柄にもない。馬鹿らしい。
けれど…畜生。
俺は、思いっきり息を吸い込み―吐き出した!
「…い、」
照れくさい。間抜けっぽい。
「い…YES!」
ばかげている。本当に、阿呆みたいだ。
「YES!YES!YES!YES!YES!YES!」
自分でもそう思いながら、俺も叫んだ。
リョウが、ベンケイが振り向いた。
にやっ、と、そんな俺を見て笑う。
俺はわざとそっぽを向いて、叫び続けた。
三人同じの答えを―
「YES!YES!YES!YES!YES!YES!」
「YES!YES!YES!YES!YES!YES!」
「YES!YES!YES!YES!YES!YES!」

NOの答えに、負けないように。
奴らも負けじと、叫び返している―
「NO!NO!NO!NO!NO!NO!」
「NO!NO!NO!NO!NO!NO!」
「NO!NO!NO!NO!NO!NO!」

二つの雄たけびが、天を衝く。
「YES!YES!YES!YES!YES!YES!」
「NO!NO!NO!NO!NO!NO!」
「YES!YES!YES!YES!YES!YES!」
「NO!NO!NO!NO!NO!NO!」

ようやく河豚澤アナが、大きく右手を掲げ…がなりたてる!
「行くぞっ!正解は…」
叫びの波が、いっそう大きくうねる―
「正解は…」
13000の目が、真っ直ぐに向く―



「これだぁぁぁぁぁぁぁあああッ!」



突然!
激しい炸裂音とともに、張りぼての城が砕け散った―
そして、もう一方の城から、幾多もの幾多もの幾多もの風船が空へ向かって飛んでいく!
その風船は青い色をしていた…
まるで、希望の蒼空そのもののような。
青空を染めていく、幾多もの幾多もの幾多もの青い風船。
太陽の光に照らされて―
その光景を目にした時、太陽の光がやけにまぶしく俺の目を貫いた。
そのせいで少し涙がにじんだだけなのに、そんな俺を見てリョウとベンケイが―また、微笑った。