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Who Wants to Be a Millionaire?(富を掴むのは誰の手か?)
〜その後〜


 年度末、単年度会計の帳尻合わせのため、会計システムにかじりついたままで、ついまどろみかけた弓は、警報音に叩き起こされた。分厚い領収書の束や表計算ソフトを立ち上げたままのコンピュータやらをそのままにして、所長室を飛び出し、管制塔に向かう。管制塔では既に三博士達も所員達も集まって、モニターを見つめていた。弓の足音に、一緒になってモニターを覗きこんでいた甲児とさやかが振り返った。
「所長、機械獣です。これはどう見ても例の……」
せわし博士が言い終わる前に、弓はそれが先週テレビでちらっと紹介されていた物であることを見て取った。
「モノミンターM1000……完成したのか……予算内で」
「あの番組の司会者にどことなく似てますが、何やらスピーカーを背負ってますなぁ……」
 樹海の木々を容赦なく踏み折りながら、モノミンターM1000が近付いてくる。
「とにかくバリアを張れ!」
 弓の声に、所員がバリア発生装置のレバーを跳ね上げた。富士山を模した光子力研究所の外壁の頂点に向かって、氷山のようなバリアが覆っていく。
『フハハハ、弓博士。そんなことをしても無駄だ。ワシの質問に答えてもらおうか。答えられなかったら研究所を明け渡してもらうぞ』
 ヘルの声が響き渡った。
「まだミリオネアに出ている気分でいるようですなぁ、ヘルは」
 のっそり博士が腕組みをした。
「では、これから出題してくるということだな」
「先生、俺がぶちのめしてやります」
 甲児はドアに向かって駆けだした。
「甲児君、君の成績では無理だ!」
「はぁ!?」
 弓の言葉に、甲児は思わずつんのめった。無茶をするなと止められたことなら数え切れないほどあったが、成績を理由に引き止められたのは今回が初めてである。
「とにかく、相手の出方をみるんだ」
『弓博士、貴様にそんな余裕は無いぞ』
「貴様も私も同じ科学者だ。製作会社の連中に比べれば、出題範囲など限られているはずだ」
『さっさと答えなければ貴様は破滅だ。何故なら……』
 モノミンターM1000がバリア越しに、管制塔の弓と対峙した。
------ファイナル・アンサー!
 確かに大音量でそう聞こえた。だが、それは人間の可聴域だけであった。スピーカーからはさらに周波数の高い指向性の強い超音波が、ハイパワーで同時に発振されていた。超音波を受けたバリアは、細かい面ごとに音波のエネルギーを受け、分子レベルで揺さぶられ、振動による応力は面と面の境界に集中した。圧電効果で面の境界が光を放ち、バリアは粉々に砕けて崩れ落ちた。管制塔の強化ガラスにもヒビが入った。
「何だと……?これでは答えても答えなくても研究所が無事では済まんぞ」
 弓は両手で耳を塞いでいたが、それでもワーンという耳鳴りが残っていた。
 鉄筋とコンクリートという、力学的特性の異なる材料の組み合わせでできている研究所の建物が超高周波にさらされたら、材料の接触部分から崩壊することになる。
「あのスピーカーさえ壊せばいいんだろ!」
「しかし、マジンガーZだってあの超高周波には耐えられんぞ、甲児君」
「堅い材料を組み合わせて作ってあるものは、まともにエネルギーを受けてしまうからのう」
「せわし博士の言う通りだ……だが、方法が無いわけではない。私は、極秘にプロジェクトHという研究を進め、新素材を開発していたのだ。出撃したまえ、甲児君」
 パイルダーで飛び立った甲児は、いつも通りにパイルダーオンした。
「で、どうすればいいんです?先生」
「今、武器を地下から出す」
 研究所脇の地面が左右に分かれ、下からエレベータがせり上がってきた。細長い板を何枚も重ねたような形状のものが載っている。
「剣や斧じゃないんですか?」
「まあ、手にとって振ってみたまえ」
 マジンガーZが金属板の端をまとめて握って左右に振り回した。しなりながら風を切る音がした。
「超合金Zで作った新素材だ。マジンガーZの装甲に使っている超合金Zは格子欠陥がなく、それゆえ非常に固くて丈夫なのだ。これは、格子定数の違う金属を混ぜ合わせて急冷し、欠陥を作り出すことで、超合金Zの丈夫さをある程度保ったまま、弾性を持たせたのだ。柔らかいから、超高周波を喰らってもうまくエネルギーを吸収し、壊れることはない」
「何かよくわかんねぇけど、凄そうだな……」
「よく見ればわかると思うが、それは細長い板を重ねたものではなく、一枚の大きな金属板を折って作ったものだ。広げれば、超音波攻撃に対するシールドに使える」
「そうとわかったら……!」
 マジンガーZがモノミンターM1000に向かって走る。
『こしゃくな弓め!』
------第一問!
「その手を食うかっ!」
 同時に発振される超音波ビームを、扇状に開いた一枚板で防ぎながら一気に間合いを詰める。扇を握ったままZは手を横に振り切った。扇の先端がモノミンターM1000の顔面を直撃する。衝撃で、スピーカーの片方が音を立てて壊れた。
「右の頬を打たれたら左の頬も出しやがれっ!」
 扇を握ったままの裏拳打ちは、再びモノミンターM1000の顔面に決まった。モノミンターM1000が地面に倒れ込んだ。
「ざまー見ろ!」
『くそっ……退却だ……』
「逃がすかっ!光子力ビーム!」
 起き上がろうとしたモノミンターM1000の胸をビームが貫く。モノミンターM1000は爆発四散した。
「……ふう、何とか撃退できたか。しかしこの迎撃の費用は1000万円では済まんぞ。新素材の開発まで含めれば相当な金額になる。年度末なのにどうしたものか……」
 管制塔で呟いた弓に、所員達の冷たい視線が集中した。
「……な、何かね?」
「今年は妙に各部門への予算配分がきつかったと思ったら、所長の裏プロジェクトが原因だったんですか」
「プロジェクトHなんてもっともらしい名前をつけてるけど、要するにハリセンのHでしょ」
「費用対効果って言葉、ご存じなんでしょうね?」
「……あ、まあ、機械獣は倒せたし研究所も無事だし、私は年度末の報告書を抱えて忙しいので……」
 弓は、逃げるように管制塔を後にした。


RHさんにいただいた、ミリオネア話の「その後」です!
光子力研究所の大事な財源を「ハリセン」に変えた弓教授、
そしてガキみたいにミリオネアにはまってしまったドクター・ヘル。
イカシタ博士たちに拍手!です(゚∀゚)
素敵な作品をありがとうございました!