Now you are in the Website Frau Yudouhu's "Gag and I."
TOPそれはそれはもうごたまぜな小説のお部屋Great Bookmaker's table(偉大なる胴元の円卓)(3)


Great Bookmaker's table(偉大なる胴元の円卓)(3)


そして、問題は第三問目に滑り込む。
背後に流れるフォスターの「草競馬」も軽やかに、司会者・小橋小泉の問題の朗読。

「ことわざ問題です。
仕事に一生懸命すぎて、自分自身のことを顧みないのは『紺屋の白袴』。
では、あてにならないことのたとえとして使うのは『紺屋の何』という?」


このクイズダービー、出題の特徴としては時事問題、そして直観力を問う問題が多いということが言えるのだが、それでもこのような常識問題は欠かせない。
ましてや博士たちなどという知的職業についている彼らにとっては当然取ってもらいたいところ…
5人がそれぞれつつがなく答えを書いたところで、またもや倍率ドン。
1枠から、2、2、2、2、3。
そして、次なるは出場者チームのベットタイムである。
「さあ、赤チーム!」
最初に賭けを行うのは、あしゅら・ムサシの赤チームである。
…と、少し困り顔のあしゅらが、小声でムサシに問いかけた。
「…私にはわからん。巴武蔵よ」
「んー?」
「この問題、日本のコトワザだな?ということは、日本で育った者なら誰でも知っていて当たり前か?」
「ん、んー…」
が。
どうもいまいち反応の悪いムサシ。
それを悟ったあしゅらの表情に、呆れの色が混じる。
「…まさか、お前わからんとか言うんじゃないだろうな」
「ち、違うよ!お、お、オイラだってわかるよ!…博士たちも、みんな知ってるに決まってらあ!」
必死にムサシは胸を張りそう言い張るが、どう見たってその様子は「泡を喰っている」としか言えない。
が、まあ、博士ともなる人々にすれば、みんなわかる問題ではあろう(例えムサシがわからなかったとしても)。
「では、決まりだな。一番倍率の高い者に賭けよう」
「と、いうと?」
「5枠の敷島博士に…1000点だ」
点数板…上段には彼らの現在の持ち点・3500の表示。
そしてその下に、賭け点・1000が表示された。
「では、黄色チームは?」
「うーん」
「そうねー…」
次は、ジュン・ミチルの黄色チーム。
お互いひそひそと、なにやら相談している。
「でも、これって答えすぐわかるよね?」
「みんな知ってそうだけど…どうかしら?」
「じゃ、」
「安全にいこっか?」
「それでは、どうなさいます?」
どうやら、まとまったようだ…
呼びかける小泉に、ジュンとミチルは二人仲良く一緒に答えた。
『ボブカットのよく似合うたらはいらさんに、1000点!』
そう。こういう時の「安全」とは、やはり当然の本命狙い。
ミスター・クイズダービーことたらはいらに1000点。
堅い、これは堅い。
そして、最後は鉄也・バット将軍の緑チームなのだが…
「で、緑チームですが…」
「か、兜所長に2000て」
「い、いい加減にしろ!剣鉄也!」
自分ひとりで勝手にゲームを進めようとする鉄也に、さすがに今回はバット将軍がキレた。
いきなり入った横槍に、明らかにむっとした顔を見せる鉄也。
「何をする!俺の選択に文句があるのか?!」
「お前はアホか!先ほどからわしの意見も聞かず突っ走りおって!だいたいお前には」
「兜所長に2000点!」
「…はい!」
が、まったく彼の意見を聞き入れるつもりなどなかったようだ。
「年上の者を敬う気持ちが欠けておる、ってお前はぁぁぁぁぁぁあああ!」
「やかましい!男・度胸だ、どんとゆけ!」
「ば、馬鹿者ー!そんなものは『グレートマジンガー』だけでやっておれーーーッ!」

ぎゃあぎゃあとまたもやもめる緑チーム。
その争いのあまりのやかましさ醜さに、思わずカメラもパンアウト。
司会者・小泉の黒縁眼鏡の奥、黒い瞳がぎらり、と憎しみの光で輝いた…と見えたのは、果たして視聴者の気のせいか。
「それじゃ、開けてみましょう…まずは誰にも賭けられなかった、弓教授・早乙女博士の解答を見てみましょう」
カメラが、1枠・2枠に寄っていき、弓教授と早乙女博士を映し出す…
「せーの、ドン!」
小泉の掛け声とともに、二人のモニターが同時に開く!
そして、同時に真っ赤に染まった二つのモニターは、まったく同じ答え…「あさって」を映し出した!
ぱーぱっぱぱー!という派手なジングルが、二人を祝福する…!
「もーう、お二人にとっちゃ楽勝ですよねえ?みんなも二人に賭けとけばよかったのに!」
「いや〜、あっててよかったです」
「そうですな〜」
正解したこともあり、にこにこ顔の弓教授と早乙女博士。
大分緊張も解けてきたようで、弓教授の表情にもいつもの穏やかな笑みが戻ってきた。
「じゃあ、次は…めんどくさいから、もう三人一気に開けちゃおう!」
黄色チームに賭けられた3枠・たらはいら。
緑チームに賭けられた4枠・兜所長。
赤チームに賭けられた5枠・敷島博士。
三人のモニターに、皆が思わず視線を集める…!
「せーの…ドンッ!」
ぱっ、と画面が切り替わり、赤と青、二色でモニターの色が塗り分けられる…!
赤いモニターはたらと敷島。
そして、青いままのモニターは、意外にも…兜所長!
見ると、兜所長のモニターには、何の文字も書かれていなかった!
「あらら、兜所長が…こりゃまたどうして?」
「はは、面目ない…ど忘れしてしまいました」
「あら、サイボーグでもど忘れとかあるんですねえ!」
「いや〜最近特に激しくって…はっはっは!」
小泉の驚きに、照れ笑いをまじえながら少し恥ずかしげな口調で答える兜所長。
まあ、サイボーグだって人間である(少なくとも、脳みそは)。
ど忘れだってあったっておかしくないのだが…
悪びれもなくからからと明るく受け流す兜所長、侮れないサイボーグ。
侮れない男、科学要塞研究所(本当に一体何を研究しているのか)所長兜剣造である。
…ちなみにこの時、緑チームブースでまたもや醜い小競り合いが起こっていたのだが、カメラマンがあえて画面からはずして撮影を続けていたのでまったく問題はなかった。
点数がそれぞれ加算・もしくは減算される。
赤チーム・6500点、黄色チーム・5500点、緑チーム・8000点。
今回の問題をはずしたとは言え、まだまだ緑チームがリードである。

「『仮面ライダー』シリーズと言えば、何といっても子供たちのヒーロー!
かつて放映された番組を、興奮しながら見ていたお子さんは多いことでしょう。
そして、その敵役はみな個性的で恐ろしく、子供たちを震え上がらせたものです。
さて、故・天本英世氏もその『仮面ライダー』シリーズに出演していたことで知られていますが、その役名は?
1、ヨロイ元帥
2、十面鬼
3、死神博士」


そして、第四問目は選択問題。
あの有名俳優が、これまた有名な特撮番組に出ていた時の役名を答えよ、との問題だ。
これはある意味簡単といえる問題が出たものだが…果たして、世間の常識は博士たちにとっても常識であろうか?
このような子供向け特撮テレビ番組など、博士たちのような多忙かつ高い次元の世界で活躍する人々が見ていただろうか―?
しかし、視聴者のそのような思い込みを見事打破してくれたのが、2枠・早乙女博士である。
彼は、3枠の「ミスター・パーフェクト」「宇宙人」ことたらはいらとともに、この問題を「3」と正答した!
さて、その早乙女博士、小泉の賞賛にさらりと応えて曰く、
「これは息子が好きだったんで、一緒に見ていましたよ」
とのこと。
なるほど、達人・元気の二人の息子、ミユキ・ミチルの二人の娘を持っていた子だくさん博士だけある。
「おや、意外とアットホームパパでいらっしゃる?」
「はっはっは、そういわれるとこそばゆいですが」
「いや〜何をおっしゃいます、はっはっは」
そんな如才ない会話を交わす早乙女博士であるが、赤チームと黄色チームの指名を受けていた。
それぞれ1000点ずつ賭けられており、2枠倍率が4倍だったため、それぞれ持ち点が10500点・9500点となった。
…相変わらず誰かさんの暴走でまたもや4枠に賭けていた緑チームについては、もう言うまでもないので省略させていただく。
と、いうわけで、第五問目。

「そのプロデュースを、シャ乱Qのつんく♂が行っている人気アイドルグループと言えば、『モーニング娘。』。
今年で結成10年目を迎える『モーニング娘。』、現在のメンバーは何人?」


今度の三択問題は、アイドル関連の問題である。
これも、世間的にはまあ簡単に誰もが解答できそうな問題だが…博士たちにとってはどうであろうか?
かつかつ、とペンをタブレット画面に走らせる音が重なって聞こえ、やがて止む。
解答者たちのシンキングタイムが終わったところで、ここでお決まりの
「倍率ドン!」
今度の倍率は、1枠より4、3、2、4、7。
全体的に、割と高めの倍率がふられた。
その倍率をかんがみ、赤チーム・あしゅらとムサシは協議の結果兜所長に2000点をベットした。
黄色チーム・ジュンとミチルは、悩んだ挙句に1500点を弓教授に。
そして注目の緑チームは、わちゃわちゃと一悶着の末、鉄也の隙をついたバット将軍が3枠・たらはいらに1000点ベットすることに成功。
もちろん醜い言い争いが繰り広げられまくりなのだが、あまりに見苦しいので画面からはずされた上に音声もカットである。
「さあ、それじゃ開けてみましょう〜」
それでは、解答お披露目の時間である。
小泉が軽く眉を動かしながら、こんなことを言ってのけた。
「うん、分かれましたね〜!二人が同じ答え書いて、三人がま〜た別の答え書いてる!」
どうやら、答えが二つに割れたようだ。
「こりゃ、いっぺんに開けてみるか〜!せーの、ドンッ!」
一気に引いたカメラが5つの解答者席を映し出す―
刹那、その上部にある解答モニターが、瞬時に二つの色に分かれていった!
赤く染まったのは、「10人」「10」と書かれたモニター。
正解者、赤いモニターの主は…3枠・たらはいら。
そして意外なことに…1枠・弓教授、5枠・敷島博士!
「いやはや!まあ〜意外な感じの方々が正解してますね〜!」
感嘆する小泉、敷島博士のブースに歩み寄っていく。
「敷島博士、『モーニング娘。』なんてご存知だったんですねえ?しかも正確な人数まで!」
アイドルグループ「モーニング娘。」と言えば、メンバーの出入りが激しいことで有名だ。
加入・卒業の繰り返しで、メンバー人数もどんどん変動していくというのに…
しかし、敷島博士はあっさりとうなずくのだ。
「う〜ん…確か、今年、2007年の5月にのう?」
「そうそう、吉澤ひとみが抜けたんでしたよね」
そして、その敷島博士の発言に合いの手を入れるのは1枠・弓弦之助。
「それで10人じゃな」
「そうですね、卒業してハロプロに行きましたからね〜」
わきあいあいと語り合う様子、詳しすぎる描写にもはや視聴者は驚きである。
かたや理知的かつ高潔そのもの、と言った風貌の弓教授。
かたや狂気を孕んだ得体の知れぬマッドサイエンティスト、と言った敷島博士。
どちらも、そんなアイドルなどには目もくれなさそうなものなのだが…
人間、見た目だけで判断できるものではない。
そういう貴重な人生訓を視聴者に否応なく悟らせる、そんなクイズダービー・第五問目だった。