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Great Bookmaker's table(偉大なる胴元の円卓)(1)






キャンプタウンの女が歌う
Doo-dah! Doo-dah!
キャンプタウンのレーストラックは5マイルさ
Oh, doo-dah day!
へこんだ帽子をかぶった俺は
Doo-dah! Doo-dah!
ポケットいっぱいに銭持って帰る
Oh, doo-dah day!

走れ、一晩中!
走れ、一日中!
俺はあの老いぼれ馬に賭けようか
鹿毛の馬に賭ける奴もいるけどな!
(『草競馬』フォスター)





♪トーロ トーロ トーロ
トーロ トーロ トーロ
トーロせーいや〜〜〜〜〜く〜〜〜〜〜〜♪



「小泉の、クイズダービーー!」ガッコン!
ちゃーらーらーらっらっ、らー
ぱらぱっぱらぱっぱらぱっぱー
ぱぱぱぱーや!




やや古臭い感じを受けるセット、そのセットを眼前にした観客席から、浴びせかけるような拍手の波。
その波がやや静まったところで、スタジオ中央でライトを浴びる壮年の男が、マイク片手にこう切り出した。
「こんばんは、小橋小泉(こはし・こせん)です!」
かつてより「野球は巨人、司会は小泉」とのキャッチフレーズにて幅広い活動を続ける高名な司会者。
それが彼、小橋小泉である。
そして彼が持つ看板番組の一つが、この「クイズダービー」。
まずは小泉の軽妙なトークで番組は始まる…
「最近はね、『スーパーロボット大戦シリーズ』?ってのでね、
昔のロボットアニメに興味を持つ人もいるようでね、
まあ僕なんか聞いたってちっともわかんないんでございますけれど、
ロボット、それは男の夢だーなんてね。
そんな感じで、今日はね、日本を代表するロボットアニメ、
『マジンガーZ』『グレートマジンガー』そして『ゲッターロボ』の人たちにね、来てもらいました」
小泉がそう言うと、カメラがぱっと切り替わり、赤・黄・緑の三つ並んだペアブース…出場者席にシーンが移った。
「ちなみにね、普段顔つき合わせている人間とペア組んでも面白くないという事でね、シャッフルしたってわけです」
すらすらと述べながら、小泉が出場者たちに目を向ける。
「それじゃあね、まずは赤チームから!自己紹介お願いします」
と、またも画面が切り替わり、赤チームのブースが大写しにされた。
そこには…緊張した面持ちで座る学生服姿の青年と、右半身が女性、左半身が男性となった奇妙な人物が座っていた。
「げ、『ゲッターロボ』、ゲッターチーム・ゲッター3の巴武蔵です!」
「『マジンガーZ』より、あしゅら男爵だ」
硬くなっているせいか、ややろれつがまわっていない青年の自己紹介。
それを追いかけるように、男女両方の声音がハーモニーを為して己の名を紡いだ。
そのあまりにちぐはぐなコンビっぷりに、思わず小泉も苦笑い。
「う〜ん、これまたえらいミスマッチなペアが誕生したもんだね〜」
「…私もそう思う。一体何故このような…」
「お、オイラだってそりゃ同じだよ!」
ため息をつくあしゅらに、ぷんすか怒って抗議するムサシ。
そのあまりのちぐはぐぶりが、やはり意図せずとも視聴者の笑いを誘う。
「まあ、だが、せっかく縁があってペアになったのだ…優勝をともに目指そうぞ」
「お、おう、わかってらい!」
だが、何故か割とすんなりと意気投合したようだ。
お互いにやる気を見せている二人をよそに、小泉は次のチームの紹介に移る。
「は〜い、それじゃあ次は黄色チーム!」
カメラのズームが、今度はその隣の黄色いブースに向けられる。
「『グレートマジンガー』・ビューナスAパイロット!炎ジュンよ」
「私は、『ゲッターロボ』でコマンドマシンを担当している早乙女ミチルです」
黒く長い髪、浅黒い肌の美少女。
そしてカチューシャをつけた、きらめく大きな瞳の美少女。
タイプは違えど、人目を引く容姿の二人組の登場に、海千山千の小泉もニンマリ顔。
「うんうん、キレイどころもやっぱりいないとね!」
「うふふ…」
照れ笑いをするミチルとジュンの表情に、すかさずカメラがズームを向ける。
かすかに頬を紅くした二人の様子が、全国ネットで放映された。
全国の若い男性視聴者は、ついついテレビ画面ににじり寄ってしまった事だろう。
「お二人は、どちらもパイロットなの?」
『はい』
「う〜ん、それは頼もしいけど怖いなぁ〜、僕が何かやってもミサイル発射とかはカンベンですよ〜?」
「ふふ…!」
大げさなセリフでこうふざけてみせた小泉の言葉に、くすくす微笑う二人の少女。
笑顔の小泉が、最後のチーム紹介に進める。
「それじゃあ最後は緑チームね」
カメラがぐるりと焦点を水平移動させると、最後のチーム…緑のブースの二人が映し出される。
…まるでコウモリのような頭をした、妙なヒゲの中年と、
なんだか似たような髪形をした、やたら濃い顔の青年が並んで座っていた。
…先ほどテレビ画面ににじり寄った全国の若い男性視聴者が、勢いよく後方にのけぞってしまった事だろう。
「『ゲッターロボ』、恐竜帝国出身!バット将軍である!」
「『グレートマジンガー』、グレートマジンガーのパイロット!剣鉄也だ!」
くわっ、と目をかっ開きながら、どでかい声で名を名乗る二人。
はっきり言って、気張りすぎである。
小泉も思わず眉根をひそめて、本音を言ってしまっていた。
「ありゃま〜、これまた最後は濃いペアだね〜!」
「…」
「…」
「えっと、バットさんのほうは恐竜帝国から来たってことだけど、大丈夫かな?」
ご存知の通り、バット将軍は恐竜の進化した知的生命体の一種族、「ハ虫人」である。
恐竜帝国の「ハ虫人」は日光、ひいてはそれに含まれるゲッター線に弱い。
そんな話を振ってくる小泉に、自信たっぷりな様子でバット将軍は答えた。
「無論、ゲッター線止めをたっぷり顔に塗ってきましたわい!」
「なるほど、最近じゃ男でもお肌の手入れは必要ですからね〜」
よくわからん答えに、よくわからん応え。
よくわからん応答を笑顔で交わす二人を、鉄也はこれまた「よくわからん」といった顔つきで見ていた。
と、小泉が思い出したようにこう言うと、途端にカメラがズームアウト。
「あ、そうそう!お仲間の皆さんも、今日来てくださってるってことでね」
スタジオ全体像が映し出される。
「あちらの観客席のほうに来ていただいてます〜」
ぐるり、とカメラが反転し、後方の観客席にレンズを向ける。
すると、その最前列には…おなじみの顔ぶれがずらりと一列に並んで座っていたのだった。
「…」
「…」
左端に並んで座るのは、ゲッターチームのリーダー・流竜馬にマジンガーZの搭乗者・兜甲児。
「…ゲッターチームのリーダーは俺なのに…」
「マジンガーシリーズ三作皆勤なのは俺のほうなのに…」
二人とも、薄暗い顔でややうつむき加減になっている。
口から漏れてくるのは、自分が選を外れた恨み節だ。
「お前ら、まだぐだぐだ言っておるのか?」
「!…ゴーゴン大公!」
一番端の席であるリョウの隣に立っている(彼は下半身がトラなので、椅子に座ることが出来ない)ゴーゴン大公が、呆れた口調で声をかける。
いつまでもうっとおしい二人組に、断じるようにこう言って彼らをいさめる。
「仕方なかろうが、作者・ゆどうふが公正にアミダくじで決めた結果だ
そう。
何処までも公正公平なる抽選に外れてしまったために、彼らはこうして日陰の身となっているのだった。
誰が悪いわけでもない。
強いて言えば、彼らの運が悪かったのだ。
「あ、アミダとか!アミダとかありえない!」
「普通は俺たちみたいな主役級キャラを入れるべきだろうが!」
「バカモノ、人間諦めが肝心だ!黙って座っとれ!」
だが、それにもかかわらずに文句を垂れる二人に一喝するゴーゴン。
あきらめの悪いリョウと甲児を横目に、ふん、と鼻を鳴らして言い放つ。
「まったく…スタジオに入らないからという理由でくじにも名前を入れられなかった、暗黒大将軍の気持ちも考えてみろッ!」
『知るかッ、そんな事ッ!』
そんなやりとりを眺めるブロッケン伯爵と神隼人は、すでに「どうでもいい」の境地に入っているらしく、やる気のない様子でこうつぶやくのみだ。
「…阿呆らしい」
「…まったくだ」
「え〜?でも僕はちょっと出たかったなあ、ブロッケンさんやハヤトさんはそう思わないの?」
ハヤトの隣に腰掛ける早乙女元気にそう聞かれた二人。
ため息まじりに吐き出された無気力な応えは、何故かキレイにハモっていた。
『思わんな』
元気の隣には、ヤヌス侯爵・弓さやか・ガレリイ長官・兜シローが並んで座っている。
そして、ヤヌス侯爵と弓さやかはきいきいとでかい声で言い争っていた。
「何よ、ひじかけ自分だけで占領するんじゃないわよ!」
「ええい、うるさい小娘め!目上の者に譲る心配りくらい見せろ!」
「きーっ!何よ何よ、おばさんのくせにいばるんじゃないわよ!」
「!…言ったな、おのれええええ!」
くだらない言い争いの果て、「おばさん」というNGワードに激怒したヤヌス侯爵…
肩の黒猫がにゃー、と鳴けば、ヤヌスの首がぎりぎりと後方に反転しそこから世にも恐ろしい老婆の顔が…!
「ひ、ひぐぁーーーー!ば、バケモノーーーーーー!」
「やかましいッ!トカゲ人間が言えたことかッ!」
恐怖に絶叫するガレリイ長官(トカゲ人間)に、ヤヌス侯爵(オニババ)が怒鳴り返す。
すぐそばで展開される恐怖劇場に、たまらずシローが泣き声で訴える。
「う、うわああ〜ん、この席やだよ〜!お兄ちゃん、かわってよ〜!」
「もう!うるさいわよん、そこ!」
さらに隣には、ボス・ヌケ・そして何故かDr.ヘル・ムチャが仲良く並んでいる。
「ボシュ〜、ポップコーンいるか?」
「あっ、その前にもうひとつかみもらっとく!」
「ワシもいただくとするか」
「あっ!とりすぎだわよ、お前ら!」
そして、何故かやたらにここだけ平和だった。
「はっはっはっ、君たちの仲間は愉快だね〜!」
スタジオの上から、そんな様子を見た小橋小泉が楽しそうに笑ってそう締めくくった。
その後は、解答者の紹介だ。
「そしてね、今日は解答者もそれにちなんでね、えら〜い博士の面々に来てもらったってわけですよ〜」
混乱の観客席から、今度は解答者席に場面が変わる。
一列に五つ並んだ解答者席は、左から1枠、2枠…5枠となっている。
「1枠、『マジンガーZ』より、弓弦之助(ゆみ・げんのすけ)教授!」
わー、ぱちぱちぱちぱち!
拍手の音とともに、やや緊張のためか頬を染めた弓教授の姿がズームになる。
光子力研究所を率いる所長であり、言わずと知れた兜十蔵博士の愛弟子だ。
「こ、こんばんは」
「いや〜弓教授、緊張してますね〜」
「は、はい」
「娘さんも来ておられるそうで、パパ頑張って!なんつって」
「は、はあ…」
小泉が軽くギャグを振るが、こういう場に慣れていないのか、弓教授はまだまだ硬い表情のままだった。
「2枠は『ゲッターロボ』より、早乙女(さおとめ)博士!」
「こんばんは!」
「こんばんは〜」
次のブースには、ゲッター線研究の第一人者であり、早乙女研究所の所長である早乙女博士が座っている。
「いやあ、いつも家内と一緒に拝見してます!」
「お、それはうれしい!じゃあ博士、ここは一発ガツンと活躍して、奥さんにアピールしないとね!」
「ははは、まったくですな!頑張ります!」
こちらはまったく如才ない、軽妙なトークを小泉と交わす。
3枠に紹介が移る…
このブースは毎回おなじみ、「クイズダービー」の顔が鎮座ましましている。
「そして3枠は、毎度おなじみ!漫画家のたら・はいらさん!」
「うーん、ここに僕が座ってていいんですかね?」
周りを「博士」だの「教授」だのといったお偉い方々で固められたたらが、無表情なままでそう漏らす。
「何言ってんのたらさん、いつもどおりの『宇宙人』っぷり見せてよ〜」
「まあ、テキトーにがんばります」
小泉の言葉に、やはり普段のように淡々とした答えを返す様は、言葉とは相違して「博士」たちに臆した様子は見られない。
まさにミスター・クイズダービー、百戦錬磨の男である。
「4枠、『グレートマジンガー』より、兜剣造(かぶと・けんぞう)所長!」
「…こんばんは」
紹介は次の4枠、兜所長へと流れた。
ミケーネ帝国の脅威に対抗するために科学要塞研究所を擁する、グレートマジンガーの製作者だ。
「はいこんばんは!兜所長はサイボーグってことで、いやあ僕もはじめてですよ、サイボーグの解答者呼ぶの!」
「まあ、そうでしょうな!」
彼は事故によって一度死に瀕し、身体を機械化したいわゆる「サイボーグ」であるが、あっさりと小泉にネタにされてしまった。
苦笑しながら応える兜所長に、小泉はこういって軽く〆(しめ)た。
「うちの『宇宙人』のたらとどっちが強いか、これは見ものですな!」
最後の枠には、異彩を放つ…というより、常人離れしている、と言えるほどに目をぎらつかせた老人。
「そして最後5枠は、マンガ版『ゲッターロボ』より、敷島(しきしま)博士!」
「よろしくの〜!」
明るくあいさつする敷島博士、目がイってしまっている。
「敷島さんは、普段は何研究しておられるの?」
「無論、兵器じゃ!まあこのように一発当たっただけで3センチの鋼鉄の壁をも溶解するという強力な腐食液弾を発射する獣やアフリカゾウの頭をスイカのように砕く事ができるハイパーマグナムなど」
「あ〜はいはい、敷島さんそれちょっとしまっとこうかー、でないと僕までくさいメシ喰わなきゃならなくなる」
がちゃがちゃと何やらどう考えても危険物扱いで警察に捕まりそうなブツを出してこようとする敷島博士を、笑顔で小泉はすぐさまに制止した。
敷島博士は残念そうな顔をしたものの、その場はおとなしくそれらをしまう。
さて、これで全ての人物の紹介は終わった…
となれば、後はゲームに入るだけ。




さあ始まるぞダービーが
1枠2枠3枠に、4枠5枠が競い合う
誰に賭けるか捨てるのか、予測が予想が渦を巻く―!




「まあ、こういったメンツでお送りする今日のクイズダービー、それでは第一問目から!」