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女優の幕間






『重いだろ?俺が運ぶよ』
『あら、いいんですよ甲児さん!』
『何言ってるんだい!まかしとけって』
地獄城、ドクター・ヘルの研究室。
光子力研究所に放った密偵から送られてきた映像を見る老科学者の目は、彼らが宿敵…くろがねの城たる機神を駆る青年を見ている。
画面の中で、彼は同い年ほど…いや、それよりは少し年上だろうか、キャップとつなぎという快活な服装に身を包んだ、器量のいい少女にでれついている。
「…ふむ」
薄暗い、無数の機械群に支配された研究室の中…
長く伸びた真っ白いあごひげをなでながら。
ドクター・ヘルは、興味深げにひとりごちた。




「な…」
「何ですって?」
それより数時間後。
主君より新たな光子力研究所攻略が為の作戦を聞かされた指揮官・あしゅら男爵とブロッケン伯爵は、驚きのあまり思わず大声を上げていた。
「わかったか、二人とも…外と内からの挟撃を狙うのだ!」
「で、ですが…」
「何か不服があるか、ブロッケン伯爵?」
と、指揮官の一人、ブロッケン伯爵が異を唱えんとする。
かつてはナチスの鬼将軍であったが、今はヘルの手によって機械仕掛けの首なし騎士…その走狗と成り果てた男は、困惑に言いよどみながらも続ける。
「いえ…機械獣を指揮するという役目、我輩は理解します。
しかし…」
そこで、ちらり、と。
侮蔑と憐憫が混ざり合ったような視線を、隣に立つ政敵に投げる。
…男であり女でもある、その怪人に。
だが、意外。
とんでもない役目を振られた彼は、顔を上げ…誇らしく言ってみせたのだ。
「構わん、ブロッケン」
「あしゅら?!」
「面白い、やってみせようではないか!」
男女両方の声色が、絡み合って不思議なハーモニーを為し響き渡る。
その言葉には、自信が満ち溢れていた。
必ずこの作戦を成功へと導き、憎き兜甲児を、マジンガーを打倒すという…
「それではあしゅら、お前も大丈夫じゃな?」
「はい、ドクター・ヘル」
再度問う主に、半男半女の怪人は力強く断言してみせる。
男の黒い瞳に、女の青い瞳に、同様にたぎる闘志。
凛とした声で、誓ってみせる―
「お任せください、このあしゅら…
大役を見事やり遂げてみせましょう!」


クリーニング屋の白いバンは、明るい日差しを照り返しながら山道を行く。
「さて、次は…ええっと、武田さん家ね」
顧客リストを片手にハンドルを握るのは、看板娘のひとみだ。
空は爽やかに晴れ渡り気持ちのいい日、もうすぐすべての得意先を回り終えられる。
ひとみは気分も軽やかに、鼻歌なぞ歌いながら山道を進んでいく…
リアビューミラーに、「それ」が映るまでは。
「?!」
突然だった。
目の錯覚かと一瞬動じた、しかしそうではない。
顔の半分が、女。
顔の半分が、男。
フードをかぶったそれは、顔面が…真ん中で、真っ二つに、男と女に分かれている…?!
常識では考えられないそれが、リアビューミラーに映っているということは…
「それ」がいるのだ、自分の背後に!
ひとみはすぐさまにブレーキを踏み車を止めようとした、
しかし相手はそれよりも先に動いた。
「動くな」
二つの声が、同時に響く。
そして自分に即座に突きつけられたモノ、それが拳銃…
平和な庶民の日常生活では目にかかることすらない、危険そのものであることがわかった瞬間、ひとみは恐怖のあまりに気を失いそうになる。
だが、薄れそうになる意識の中、叩き付けられるかのように放たれた化け物の言葉が、脳内にがんがんと反響する―
「命が惜しければ、従え!」


どさり、と、洗濯物の山の中に投げ出された身体は、何の抵抗もなくその中に沈み込んだ。
「…これでよし」
大きな音を立て、あしゅら男爵はトランクの扉を閉ざす。
ひとみを薬で深く眠らせ、この人気もない山道にバンを置き去りにしておく…
捜索するにしても、なかなかここまではたどり着けまい。
少なくとも、一日はたっぷりと時間が稼げよう。
「しばらくここで眠っているんだな…」
「男」の声と「女」の声が、バンに閉じ込められた美少女に最後に投げかけられた。
「あしゅら様、我々は如何いたしましょう?」
と、侍っていた数名の鉄仮面が、指示を仰いできた。
「ここからは私一人で動く…
お前たちは後々の指示を待て」
「はっ!」
飛ばされた命令に、一斉に敬礼で答える鉄仮面軍団。
ざっ、と隊列を組み、何処かへと去っていく。
その様子を見送りながら、あしゅらは山道に立ち尽くす。
白い陽光に照らされたその姿は、まさに怪物…
紫と紺が、中央で真っ二つに分かれた、頭を覆い隠す頭巾のようなマントのような、奇妙な服。
奇妙な服をまとうその人物も、平たく言えばその服と同じ。右半身、紫の頭巾。その下にあるのは、女の顔。
白い肌、切れ長の瞳、細い眉、紅い唇。
左半身、紺の頭巾。その下にあるのは、男の顔。
浅黒い肌、鋭い瞳、太い眉、少し厚い唇。
溶け合うはずのないその両性が、身体の中心を境界線として真っ二つに分かれ、一つの身体を構成している。
「…!」
瞳を閉じ、両腕を合わせ、長身の怪人は意識を集中させた。
すると、眩い光があしゅら男爵を包み込む。
足から腰へ、胸から顔へ、全身を包んでいく奇妙な光は魔術なのか。
そして、その光がゆっくり失せていくと…
そこには、二色二性の怪人の姿は、もう何処にもなかった。


「それでは、ひとみさん…今日からよろしくお願いします。
家事も手伝っていただけるとのことで、助かります」
「ええ、よろしくお願いします!」
光子力研究所、応接室。
敵の本丸であり、地獄城の手の者・辣腕のスパイですら入り込むことに苦慮する敵基地内。
その場所に、あしゅら男爵は軽々と入り込んだ…
クリーニング屋の娘、「青空ひとみ」として。
どうやらこの娘、以前より研究所の人気者だったようだ。
さらさらと流れる黒髪、整った容貌にきらきら輝く笑顔。
なるほど、この容姿ならば男どもは放ってはおくまい。
堅物の弓教授ですら、その顔がにこにことうれしそうである。
…が。
「いやぁ〜、ひとみさんが来てくれるなんてなぁ〜!
これだったら俺、いくらでも調教されちゃう!」
「まあ、甲児さんったら!」
「掃除とか洗濯とか、別にそんなに無理しなくってもいいんだぜ!俺とシロウでちゃちゃっとやっちまうからさ〜!」
スーパーロボット・マジンガーのパイロット…兜甲児が鼻の下を伸ばしまくる態度は、あまりにも度が過ぎていた。
何とか笑みを取り繕って返したものの…
(…阿呆め、にやにやしおって…気色悪いわ!)
さすがに顔には表せぬが、今まで散々殺しあってきた宿敵のだらけきった様子には、さすがのあしゅらもいささか怖気だってきた。
ヘルが立てた今回の作戦は、ブロッケンとの共同作戦…
まず、変身能力のある自分がクリーニング屋の娘「青空ひとみ」になりすまし、光子力研究所内に入り込む。
そして隙を見て電波妨害装置をレーダーなどに取り付け、研究所が敵機の接近を察知できぬようにするほか、可能ならばマジンガーやアフロダイにも爆弾を設置しダメージを与える。
ブロッケンは地獄城にて待機、合図があり次第飛行要塞グールにて出撃し、機械獣ファンガスB3を引き連れ、本格的に攻撃に乗り出す。
レーダーが機能しなければ、研究所は盲目同然。
完璧な奇襲を行うことができる、素晴らしいアイデアだ。
あの忌々しいブロッケンが派手な攻撃役というのが多少気に喰わないが、まあそれはいい…
作戦が成れば、後から鉄仮面軍団も投入することもできるだろうし、我らの手で兜甲児の首を上げることも可能だろう。
(だが…「調教師」、とはな。
こ奴らの考えることはよくわからんわ)
今、自分がその姿を変えている、ロングヘアの美少女…
研究所に潜入するのに、何故この娘が選ばれたのか。
密偵からの話によれば…弓一家に転がり込んだ兜兄弟は、
どうやら身の回りの手入れもよくしないようだ。
掃除もしない、洗濯もしない、部屋を汚しまくる甲児たちに、弓さやかもとうとう堪忍袋の緒が切れてしまう。
どうしようもない兄弟の生活態度を締め直すため、調教師を雇おうと言い出したのだ。
弓弦之助もそれに応じ、家事手伝い役としても適役とみなされたこのクリーニング屋の娘に頼み込んだという訳だ。




…と。




何やら、とげとげしい視線を背中に感じる。
「…」
「?」
気づけば、それは弓さやか…
振り向くと、彼女は自分を鋭い眼で睨みつけている。
そう言えば、先ほど入口でばったり会った時もそうだった。
それは新しく家に来る家事手伝いを「出迎える」というより、「待ち伏せしている」かのような剣幕で。
「…ふんっ!」
勝気なヘアバンドの少女はこちらの怪訝な顔に気付くや否や、勢いよくその顔をそむけてしまう。
最早、敵意は丸出しだ。
(…なるほど)
どうやら、弓さやかは…調教師を雇う、ということを言い出してはいるが、それがこの娘、青空ひとみであることは気にいらないらしい。
それもそのはず…そして、その苛立ちの原因は明らか。
目の前でだらしなくやにさがっている兜甲児とシロウの様を見ればそれは一目瞭然。
多分に兜甲児に好意を持っているだろうさやかが、他の女にでれつく奴を見て気分がいいはずがない。
「甲児君ったら!
でれでれしちゃって、情けないんだから!」
その怒りの切っ先が、兜甲児本人に向く。
豊かな情愛は、裏切られれば灼熱の嫉妬と化す。
「大体甲児君たちがまともに家事もしないからこの人に頼んだって言うのに…何よ、今さら!」
「さやかさ〜ん、へへ、やきもちなんてみっともないよ?」
「もう!シロウちゃんは黙っててよ!」
怒り散らすさやかにシロウがいらぬ口を聞き、彼女の立腹にさらに火に油を注ぐ。
弓教授はと言えば…「また始まった」とでも言わんばかりの表情で、呆れ顔で見ているだけ。
面喰らうあしゅらの前で、甲児とさやかのいがみ合いは続く。
「さやかさんには関係ねえだろ?黙ってろよ!」
「『黙ってろ』とは何よ!」
売り言葉に、買い言葉。
甲児が怒鳴りつけるから、さやかも声を荒げる。
互いに退かない性質の二人の言い争いは、エスカレートするばかり。
思わず耳をふさごうとした、その時だった―
甲児の吐いたセリフが、冷酷に響いた。




「いちいち口出ししてきてうるっさいんだよ、
女のくせに!」




「な…何よ、甲児君たら!私が、今まで…」
女のくせに、と。
さやか自身がどうしようもできないことを、さやか自身が
内心に悩んでいることを、一片のデリカシーすらなく貫く。
甲児の罵倒は、率直な悪意そのもので。
彼女のプライドを、面と向かって砕いてしまうようなもので。
今までの彼女の献身も自己犠牲も顧みすらしないもので。
それでも気の強い少女は、何とか言い返そうとする。
が…果たせるかな。
女心を理解する度量もない男は、彼女を目の前の美女と比較する…という、残酷な方法でさらに彼女を傷つける。
「あ〜あ〜、やだねぇ〜女のヒステリーは!
ちったあひとみさんの爪のアカでも煎じて飲めばどうだ?」
「〜〜〜ッッ!!」
さやかの瞳が大きく開かれ、そして…少し、揺らめいた。
にじんできた涙が、彼女の目を縁取る。
生来の負けず嫌いが何とかこらえさせてはいるものの、押さえ込んですら顔中一杯になる哀しみと怒りは、いまにもその我慢を超えてしまいそう。
(…)
ちくり、と。
胸の何処かが痛んだ―
弓さやかのその姿を見る、青空ひとみの右の瞳。
変化の奥、青い瞳が…侮辱され、傷つく少女を見ている。
彼女の肩を持ってくれる者は…どうやら、いない。
兜シロウはにやにやとしているだけ、
弓教授も困り顔で見ているだけだ…
この場にいる男どもは、どいつもこいつも。
…ちくり、と刺すような痛みが、何処かあしゅらを急かす。
その感情の正体は、「苛立ち」だった―
そうだ。
兜甲児の吐いた言い草は、自分も幾度か聞いたことがある。
そうして今のさやかのように、屈辱に歯噛みしたこともある。
…何故なら、それは。
かつて自分にも浴びせられ、悔しさのあまりに涙を流させた言葉だからだ―
「女」としての自分が、泣いた記憶。
自分も、それを…知っている。
だから。
「女」のあしゅらは、我知らず口を開いていた。




「…こら、甲児君!」




「えっ、」
「ダメよ?女の子にそんな失礼なこと言っちゃあ」
思わぬところから言葉を掛けられ、間の抜けた声を漏らす兜甲児。
…さやかの表情が、少し変わった。
「で、でもさあ、ひとみさん!」
「それに!…さやかさんはいつもキミをいろいろ助けてくれてるじゃないの。そうでしょ?
『女のくせに』なんて、ひどいこと言うものじゃないわ」
口答えしようとする奴に、さらに言ってやる。
当然の主張、正論の説法。
だから、甲児も口ごもって、目線をそらしてしまう。
言い返す言葉のなくなった男はいつもそうする、詫びることすらろくにできずに。
「…ふん」
見れば、弓さやかが…口をへの字にして自分を見つめている。
今にも泣きそうな、叫びだしそうな、哀しそうな顔で。
わかる。
彼女の気持ちが、まるで自分のもののように。
邪魔者だと思っている自分に助け舟を出されたのが悔しくて恥ずかしくて情けないのだ。
真っ赤な顔で、しばらく彼女は自分をねめつけていたが…
「…!」
突如、ぷいっと顔をそむけ、足音も荒く部屋を出て行った…
とどめとばかり思いきり叩き付けられたドアが、ばんっ、と悲鳴を上げた。
その感情の起伏が激しい、あまりにも年頃の娘らしい反応に、つい苦笑を誘われる。
今は扉の向こうに消えてしまったさやかに、性懲りもなく、甲児がなおも心無い嘲笑を飛ばす。
「へん、なんでえ!
だぁ〜からじゃじゃ馬は扱いきれねえってんだ。
まったく、調教師が必要なのはお前の方だよ!」
「そうだそうだ!」
シロウも調子に乗って迎合する始末。
(…やれやれ)
内心、ため息。
「甲児さん、シロウちゃん!」
「おっと!…へへ」
もう一度きっ、とにらみをきかせてたしなめる、すると甲児たちはまたもでれでれと笑いながら引き下がる…
…まったく、男というものは!
湧いてきた苛立ちは、先ほどのものと同じ類のもので。
まあ、言っても奴らに判るはずはないのだが…
と。
(…?)
精神の中で、「男」の方の自分が何やら首をひねっているようだが、無視した。


「それじゃあひとみさん、今日はゆっくり休んでくれよ!」
「じゃあね〜!」
「ありがとう、甲児さん、シロウちゃん」
とりあえずは明日から本格的に働く、ということになり、
これから先使うことになる寝室に連れてこられた。
ピンクの壁紙、ベッド、机…
与えられた個室は、愛らしいピンク色を基調として飾られた部屋で、いかにも「女の子が好きそうな」という言葉で男が想像する、そんなイメージ通りの部屋だった。
にこり、と甲児たちに微笑み返す、最後の最後まで油断なく。
ばたん、と扉が閉まるまで、二人の男はずっとしまりがない表情のままだった…
「…ふう」
二人分の足音が遠くなり、消え失せるのを確認して。
やっとのことで、肩の力を抜くことができた。
ともかく、ようやく一人になれた…
もうあの阿呆どもに媚を売る真似をする必要もない。
演じることは不得意ではないにせよ、不倶戴天の敵に対してしなをつくってみせるのはさすがに疲れることだ。
ひとみの姿をした男爵は、ベッドにどさり、と転がる。
(…おい)
「!…何だ?」
その時。
己の片割れ、「男」の自分が、こころの中から呼びかけてきた。
彼は、「女」の自分に、不可思議そうに問いかけてくる。
(何故、弓さやかにあれほど肩入れする?
あの憎らしい小娘が、どれ程我らの邪魔をしてきたか!)
当然といえば、当然の問い。
今まで散々自分たちの作戦をご破算にしてきたのには、ひとえにあの小娘…アフロダイの捨て身の戦いぶりが一因であることには反論の余地がない。
にもかかわらず、何故にあの弓さやかをかばおうとする…?
「男」のあしゅらの疑問はもっともだ。
が、「女」のあしゅらは、事もなげに答える。
「わかっておるわ…それくらい」
(ならば、何故?)
「ふん」
鼻を鳴らす。
頭の回転の悪い「男」に、「女」は丁寧に解説を加えてやる。
…ここまでしてやらねばわからんほどなのだ、男の洞察力というものは。
「あの莫迦どもの言いぐさがあまりに聞き苦しくてな…
つい、味方をしたくなったのよ」
(兜甲児たちが、か?)
そうだ、とも言わず、無言。つまりは、そういうこと。
ひとみに化身したあしゅらは、目を閉じたまま。
しばしの間を置いて、彼女の中で「男」がうなった。
(うぅむ…何が気に喰わなかったのか、俺には分からん)
「…はっ!」
それが、「心底理解できない」というような、あまりに途方に暮れた弱々しいものだったから。
つい、「女」の口調に棘が生じる。
そう、いつだって男というものはそうだから。
「これだから、お前たち男は駄目なのだ…
鈍感で単純で、そのくせ女に頼っていながら女を見下す!
まったく、手も付けられん莫迦者どもよ!」
(…ぬぅ)
「男」の嘆息。「女」の沈黙。


そうして、しばしの間をおいて。
(と、ともかく)
少し動じたような声。
にわかに真面目になった「男」が、無理やりに話題を変えてしまう。
(我らの任務…わかっておるな?)
「元より承知」
間髪入れず、「女」が答える。
青空ひとみの声で、狡猾の色を溶かし込んだ声で。
(電波妨害装置を取り付け、研究所の防御を解く!)
「ああ!」
ここまでは、ほんのお遊戯に過ぎない。
内部より研究所の防衛機構を崩壊させるという大仕事、それこそがこの娘の姿を借りて潜入した本来の目的なのだから。
「さて…」
ぎしっ、と、ベッドが鳴る。
身を起こしたひとみの瞳に、闇色の闘志。
化けの皮の下で、男の黒い瞳が、女の青い瞳が、不吉に輝く。
「それでは、始めようか!」
美少女の化けの皮をかぶった邪悪が、動き出す。
この堅牢な砦を、内部から破壊するために。
迫りくるその時を、その正体を―




光子力研究所の間抜けな連中は…まだ、知る由もない。





2011年トツゲキ一番様の夏冊子に載せていただいたゲスト原稿です!
第63話「爆弾を抱えた美少女」よりとりました。
甲児くんは本当に、さやかやボスを馬鹿にしすぎです。
あしゅら男爵は男で女…「女性」としての彼女は、一体どう思うだろうか?
そんなことを考えて、書いてみました。