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五千円以内で幸せになる方法


10、鏡。

鏡。
実にいい響きであります。
今回はこの、「鏡」についてであります!

鏡は結局、己のナルシシズムの象徴であります。
それ以外の利用法がないというのも、
如実にその事実を反映しているであります
(あの、一部風俗店などに使用されている「マジックミラー」は
たしかに別の用途につかわれるでありますが、
それは鏡本来の役割ではないので、
ここでは割愛するであります)。
あのガラス製品の前で我々が何をするか。
それはすなわち、整髪であり化粧であり服装のチェックであり、
顔ヤセ顔面体操であり
スマイル¥0(ぜろえん)の練習であります。
これ全て、己の姿かたちを、他人が見て
「すばらしひ!いやんもうアタシアナタのトリコなのうっふんもうスキにして〜☆」と
思うような状態にすることが目的であります。
これがナルシシズムでなくてなんでありませうか。
しかし、自分もそうは言いながら、
鏡は好きであります、隊長(だれが隊長だ)!
なぜなら、左右さかさまであるとはいえ、
明瞭に自分自身の姿をこの目で見ることができるからであります。
この世の中、何億人、何十億人もの人間がいたとすれども、
畢竟(結局)、最も難解かつ理解するのに困難を伴う相手というのは、
ほかでもない、自分自身であります。
それはなぜか、この理由をつらつら考えてみると、
どうも自分には、
「自分の姿を自分の目で見ることができない」という点に
あるのではないかと思えて仕方ないのであります。
ケモノから独自の進化をしたホモ・サピエンスは、
触覚・嗅覚・聴覚など、
周りの状況を把握するのにほかのケモノが用いる力を
大幅に失ったのであります。
その代わりにホモ・サピエンスが得たのが、
視覚の力の向上でありました。
つまりヒトは、大半の情報を目で得ておるのであります。
然るに、その目で見えない位置にある自分自身の情報は、
得ることがかなり困難となり、
それが己への理解を困難とするのではないかと
自分は推測するであります。
鏡というものは、それを改善することができる道具ではないでせうか。
何しろ、光の反射を利用して、
自分の顔が拝めるというわけでありますから。
これで、他人が自分をどう見ているか、
つまり自分の外見(そとみ)の情報を、
他人同様に得られるのであります。
いわば、「自己認識」のための道具であるともいえませう。
これほど大事な道具でありながら、
それに対してかけられる費用の少ないこと少ないこと。
自分はこれに対して、強い遺憾の意を示すものであります。
きょうび鏡など安いもの、夏目漱石先生三枚も出せば、
大判の立派なものが手に入るさうではありませんか。
男であれ女であれよき鏡を持つことは必要でありますので、
然るにこの点を強調しておかなくてはならないであります。
薄めたシャンプーやボディソープで磨けば、
きらきらと輝くその破璃(ハリ)は
まるで水晶のように美しくなるであります。
そんな鏡で自分の姿を見ることができるとなると、
それはなんと素晴らしいことでありませうか。
おそらく二割、いや三割増しほど
美しく、凛々しく微笑む自分の顔をそのなかに
みることができるでせう(当社比)。
重ね重ね申し上げますが、
自分は鏡が好きであります、隊長(だからだれが隊長だ)。
さあ、さっそく鏡をかいにいきませう。
そして、そのなかに映る、自分自身に会うのであります。