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俺たちゲッターロボマニア>ヒャッキーロボG第四話


<♪ヒャッキーロボ!(『ヒャッキーロボG』オープニングテーマ)>

ガン! ガン! ガン! ガン!
若いいのちが 真っ赤に燃え〜て〜
ヒャッキースパーク〜 そ〜ら〜たか〜く〜
見〜たか〜 合体〜 ヒャッキーロ〜ボ〜だ〜
ガッツ! ガッツ! ヒャッキーガーッツ!
みーっつ〜の〜こ〜ころ〜が〜 ひとつになれ〜ば〜
ひ〜とつ〜の〜正義は〜 百万パーワーアー
あ〜く〜を許〜すな〜 ヒャッキーパ〜ン〜チ〜
ヒャッキ! ヒャッキ! て〜い〜こ〜く〜 ヒャーッキーロボ〜♪



ヒャッキーロボG 第四話 死闘!嵐吹く戦の道




<♪熱風!疾風!サイバスター(『スーパーロボット大戦F』より)>


「…!」
早乙女研究所・司令室。
警戒警報。レーダーに映る不審な光点3つ。
そして、その光点の正体は―リョウたちの懸念どおり、大音量のテーマソングとともにやってきた。
「くっ…やはり、また来たか!」
「ああ、そのようだな…相手は相当手ごわいぜ」
「…くそ、今日のテーマソングもやたらに格好いいじゃねえかよ…!」
強敵たちの再来に、緊張走るゲッターチーム。
それに対し…せめる側のヒャッキーチームはというと、
「♪か〜ぜが〜 よ〜んでーるー いつか〜 きーた〜 あーのーこーえが〜〜〜!」
今日も無駄にノリノリだった(ただし、三名中二名のみ)。
「♪うぃーーーーーーーーーーん きらめくぅ りうし はーなちー」
「♪れっぷーーーーーーー あんうーん きりさい〜て〜!」
「♪うぃーーーーーーーーーーん かなたへー おもいとーばーすぅー」
『♪ねっっぷーーーーーーーー しっっぷーーーーーーーー さいばすぅーーーーーたぁーーーーーーー!!』
「…お前らいい加減に黙れ、JAS○ACに見つかったらまずいぞ」
サビをハモった鉄甲鬼と自雷鬼に胡蝶鬼がツッコミを入れたその時。
レーダー画面に、彼らのライバルたちの姿が現れた―
「!…おいでなすったぜ!」
真紅、輝蒼、鮮黄のゲットマシンが、研究所から飛び出す。
彼らと多少の距離をとり―まるで鏡に映したかのごとく、6機の戦闘機が対峙した。
「さあ!お前らゲッターチームを迎えに来てやったぞ、感謝して崇めたてまつれ!」
「…『迎え』だと?」
「そうさ…」
自雷鬼の挑発には、絶対の自信に裏打ちされた余裕があった。
自分たちが絶対に勝つ、という自信は…辛辣な皮肉に変わり、ゲッターチームを撃つ。
「…今までお前らが殺した、百鬼百人衆!彼らが待つ場所…『地獄』へなァ!」

その時。
戦場となった開けた草原、対峙するヒャッキーチームとゲッターチームを見つめる瞳があった。
冷酷な、薄い笑いを貼り付けて。
その場所を容易に鳥瞰できる少し小高い丘より、その瞳はまっすぐに彼らを見下していた。
「…ふん」
冷笑にも似たそのあたたかみすら感じられない笑い。
百鬼帝国が参謀・ヒドラー元帥は…冷たい瞳で、彼らを見下していた。
ヒドラー元帥。
百鬼帝国の作戦を指揮する立場に在る彼は、しかしながら己の無能が災いし、これまで対早乙女研究所戦において幾度もの敗北を喫していた。
その度にブライ大帝からの手ひどい叱責を受けることになっていた彼は、勝ちを焦っていた。
ともかく、ゲッターロボGに勝たねばならない。
勝って、そして早乙女研究所が有するゲッター線増幅装置を手に入れねばならない…
しかし、敗北で塗りつぶされてきたその戦ぶりは、ブライ大帝の激昂を呼ぶのみだ。
もし、これ以上負けが重なるとあれば…大帝は、その罪を自分にかぶせるだろう。
「死」という何よりも激しい罰をもってして、自分を裁くだろう…
傲慢であるが惰弱なヒドラーの精神は、それから逃れることにしか向かなかった。
一刻も早く、ゲッターロボGを倒さねば。
藁にでもすがりつきたかった、多少の勝算が見えるのならば、何にでも。
そんな折…ヒャッキーチームが見せた全開の戦いぶりに、彼はチャンスを見た。
奴らならば。
奴らならば、ゲッターチームを倒しうるに違いない。
いや、例え相打ちになろうとも…その時、自分がゲッターを倒せばいいのだ。
そうするだけで、全ての手柄は自分のものになる…
「ひ…ヒドラー様、」
…と、手下が、弱々しい声で進言した。
彼はキャノン砲を搭載した装甲車の運転席から、心配そうな顔でこちらを見ている。
「は、はたして…こんなことをしていいんでしょうか」
「…それは、どういう意味だ?」
「鉄甲鬼様は、『正々堂々』と戦う、とおっしゃられていました。
こんな、私たちが横槍を入れるような真似など…」
「うるさい!」
言うなり、彼の顔に拳が叩きつけられた。
悶絶し、鼻を押さえもがく手下。
彼をにらみつけながら、ヒドラーが怒鳴る…
「いいか!ともかく、ゲッターを倒さねば我々に未来はない!
…何が『正々堂々』だ!勝負というのは、」
肥大した自我が、狂気をはらんで自分勝手な論理を吐き出す。
「勝負というのは、勝たねば意味がないのだ!」
己以外のものを踏みつけにし踏み台にしてのし上がってきた男は、恥じ入ることなくそう言いきった。

「ふん…ほえ面かくなよ、『鬼』どもめ」
「何…?」
一方、火花を散らすヒャッキーチームとゲッターチーム。
ポセイドン号の車弁慶は、不敵な笑いを見せ、鉄甲鬼をねめつけた。
「俺たちがこないだと同じだと思ったら、大間違いってことさ!」
「ふん、戯言を!」
「そう思うんなら、見てみるといいさ!…いくぜぇ、リョウ、ハヤト!俺からだ!」
『ああッ!』
吼えるベンケイ、応じるリョウとハヤト。
「チェーンジ・ゲッターポセイドン!スイッチ・オーンッ!」
「チェーンジ・ヒャッキードラゴン!スイッチ・オーンッ!」
三機が舞う。すぐさま、トレースしたかのような動きで、残り三機が舞う。
そして、合身。
天下無双の合体ロボが、鋼鉄の足で大地を踏みしめる…
ヒャッキードラゴン、そしてゲッターポセイドン―
…が。
「?!」
「な…ッ」
その瞬間。
ゲッターポセイドンの勇姿を見た彼らの胸を衝撃が走りぬけた…!


<♪Runner(爆風スランプ)>


「ね、ネタとられたーーーーーーーーーーーーーーーー!」
「ふふん…!」
サン○ラザ中野の熱唱を背後に、ショックのあまり絶叫する鉄甲鬼。
まさに「ガビーン」と言わんばかりの表情で…
にやり、と、実に満足げに、ベンケイが笑んだ。
「べ、ベンケイ!お前…こ、これはッ?!」
「なあに」
鼻頭をぽりぽりとかきながら、何処か自慢げなベンケイ。
「早乙女博士に頼んで、ちいっとばかり改造してもらったのさ」
「…〜〜ッッ!!そんなわけわからん改造なんかゲッターにしてどうするつもりなんだお前わあッ!」
「…」
ベンケイの説明を、やはり生真面目一直線の男は笑って許してはくれなかった。
ぎゃんぎゃんチームメイトに怒鳴りつけるリョウを横目に、もう一人のゲッターチームは軽いため息をついた。
…「自分もそう言えばよかった」と思って。
混乱のゲッターチームをよそに、一方のヒャッキーチームも別の意味で混乱していた。
「て、テッちゃん!どうするあいつ意外にカッコいいぞ?!」
「ううううううううろたえるなライちゃん!意表こそ突かれたが、なあにテーマソングならこっちのほうが…」
「ていうかそれはうろたえるところでも何でもない。落ち着けアホ二人」

得意のテーマソングネタをとられ、動揺しまくりの鉄甲鬼&自雷鬼。
そんな彼らに一人冷静な胡蝶鬼がツッコミを入れるが、あわあわしている二人にその忠告はなかなか届かないのだった。
と…戦況が、動いた。
「さぁ、行くぜッ!」
「…!」
そう、大地を激震でゆすぶって、ゲッターポセイドンが地を駆ける!
その鋼鉄の脚が地を揺らす!大きなストライドで、一気にヒャッキードラゴンとの差を詰める!
折りしも、ベンケイのテーマソングは、英雄的(ヒロイック)な旋律のサビのリフレインに入りかかっていた―
走る、走る、ポセイドン!流れる景色切り裂いて!
泡を喰っていた鉄甲鬼の瞳が、ようやくその異変を感じ取り操縦桿を強く引く―!
がきぃ…ッ!
「…!」
強烈なきしり音とともに、ヒャッキードラゴンに上方からの激しい重圧が襲う。
ゲッターポセイドンのパンチを、何とか両腕をクロスして受ける…
しかし、ゲッターロボGの中でもっとも重量級のゲッターポセイドンのパンチは、少々ヒャッキードラゴンには重すぎたようだ。
ぎりぎりと押しつぶされていく、コックピット内に警告音が鳴り渡る。
「く…ッ!分散するぞ!」
「ああッ!」
「私がやるッ!チェーンジ・ヒャッキーライ…」


だが。
その時、誰も予想もしない爆音が、緊迫感で満ちた戦場の空気を突き破った。


それは、違うことなく貫いた。
ゲッターポセイドンの背を、一直線に。
火薬の力で弾き飛ばされた砲弾は、光沢を放つ鮮黄のゲッターポセイドンの背に突き刺さり、四方八方に飛び散った。
真っ赤な炎と真っ黒な煙を伴って。


ヒャッキーロボGの通信機を、強烈な、悲痛な絶叫が揺さぶる。
リョウの、ハヤトの、ベンケイの絶叫が。


もんどりうって、ゲッターポセイドンの巨体が前のめりに倒れふす。
地面が波打つ。
漏れ出すオイル。ほとばしる火花。
今の一撃が、ゲッターロボGの機構に重篤なダメージを与えたことは明白だった。


「な…?!」
「こ、これは?!」
思いもしない突然の出来事に混乱するヒャッキーチーム。
不審な砲弾が放たれた箇所を、目視で探す…
「…!」
「あ、あれは?!」
彼らの視線は、ようやく見つけ出す。
戦場を囲む小高い丘、その一辺にそれは在った。
不気味に光る長い砲身を伸ばし、その砲口をこちらに向けて。
ゲッターポセイドンに向けて。
それは、一台の装甲車。
そして、その傍らに立ち、薄気味悪い笑いを浮かべこちらを見ているのは…
『ヒドラー元帥?!』
「…」
三人の声に、ヒドラーの冷笑がなおその影の色を濃くした。
「な…何のつもりですか、ヒドラー元帥ッ!」
「どういうことだ、元帥!」
「一体何を考えておられる、ヒドラー元帥!」
突然の砲撃に非難めいたセリフを発する三人を、ヒドラーは…いかにも意外だ、とでもいいたげな目で見返した。
「何を、だと?…ふん、決まっておる。お前たちを、手助けに来てやったのよ」
「?!」
「な…」
それは、ヒャッキーチームには思いもよらぬ言葉だった。
今回の任務は、自分たち三人に与えられたもの。
自分たち三人がヒャッキーロボGを駆り、ゲッターロボGを倒す…
にもかかわらず、何故この男がしゃしゃり出てきたというのか?!
その事実は、三人のプライドを著しく傷つける。
とりわけ、ゲッターチームとの真剣勝負を汚された鉄甲鬼にいたっては、尋常ではない怒りの表情でヒドラーに喰ってかかっている。
「何を余計なことをッ!」
「そんなことをして点数稼ぎか、この小心者がッ!」
「俺たちの邪魔をするな、ヒドラー元帥!」
「…くっ、やかましいわぁ!」
が、ヒドラーは吼え返す。
「貴様ら、百鬼帝国元帥のこの私に逆らうというのか!」
「…!」
三人の瞳が、ひるんだ。
そう、ヒドラーは百鬼帝国が元帥…つまりは、百鬼百人衆である自分たちよりも、立場は上なのだ。
だが、それをかさにきて、このような行いをすることが果たして許されていいのか…?!
しかし、三人は黙り込む。不快な感情を、必死に押さえつけて。
それをいいことに、ヒドラーはなおも勝手なことをほざき続ける。
「さあ、今のうちだ!撃て!早くゲッターチームを殺せ!」
「な…!」
「鉄甲鬼、何をしている?!早くそいつらを殺してしまえ!」
「し…しかし、」
「馬鹿者が!今がチャンスだ!殺せ!殺せ!殺せぇえええええええっ!」
「…」
惑う鉄甲鬼。操縦桿を握る手は、動かない。
目の前できしる金属音を立てながらもがくゲッターポセイドンは、それでも立ち上がれない…
胡蝶鬼も自雷鬼も、一体自分がどうしていいか決めかねているようだ―



…その時。
鉄甲鬼を、ガラスの破片のような言葉が切り裂いた―
彼が何よりも嫌い軽蔑するはずの、あの人種をあらわす言葉で。



「…『卑怯者』!」



「く…ひ、卑怯者ッ!」
「?!」
「何が『正々堂々』だ!この、卑怯者があッ!」
「な…あ、」
「ふん、こんなこったろうと思ってたぜ!」
「やっぱり、所詮『鬼』は『鬼』ってことだ!」
「…」
リョウが。ハヤトが。ベンケイが。
口々に彼らを罵る。
この狙撃が彼らヒャッキーチームの差し金であると誤解したゲッターチームの罵声は、容赦なく彼らを貶める。
「ま、待ってくれ…お、俺たちは、知らなかったんだ!」
「ふざけるな!この嘘つきめッ!」
「ほ、本当なんだ!私たちは、こんなこと…ッ」
「はっ、この期に及んで言い訳か?!ここまでしておいてくれて!」
「知らない!俺たちは本当に知らない!」
「うっせえ!黙れよ薄汚え『鬼』どもめ!」
「…!」
リョウが。ハヤトが。ベンケイが。
口々に彼らを罵る。
鉄甲鬼を。胡蝶鬼を。自雷鬼を。
自分たちの力で、『正々堂々』と戦おうとした彼らを。
必死に否定する彼らの言葉を、ゲッターチームは罵倒で一蹴する…!
「…!!」
鉄甲鬼の瞳が、揺らいだ。
その表情に、恐怖のような、怒りのような、悲しみのような、絶望のような、苦悩のような―
何の救いも得られなかった者が浮かべる痛みにあふれた感情が浮かび上がる。
心の臓が、ぐらり、と蠢いた。
気色の悪いその動き。鳴動するその鼓動に、吐きそうな気すらした。


それが、押し込められた自分の「正義」、その絶叫だと気づく―
その前に、鉄甲鬼は決断していた。


「よし、もう一発だ!」
「は…はい」
ヒドラーの命令に、やるかたなく従う手下。
彼の操縦通り、装甲車の砲口が再びゲッターを狙う―
「!」
「リョウッ!」
「ゲットマシンに分散だ!ドラゴンで行くぞ!」
「ああ!…オープン・ゲーット!」
それを察したゲッターチームは、一刻も早くこの状態を脱せんとする。
素早くオープン・ゲット(合体解除)を行い、ゲットマシン形態となって空中に飛び出す!
「チェーンジ・ゲッタードラゴン!スイッチ・オォンッ!」
そして、空戦用モード・ゲッタードラゴンに変形合体する―
…が。
それこそが、ヒドラーの狙っていた、千載一遇のチャンス。
ゲットマシン形態という、合体形態に比べてはるかに装甲が薄い戦闘機。
すでに被弾しているポセイドン号、車弁慶の機体を狙い―
「今だ!」
ヒドラーは、砲弾を放つよう命じた!
再び、鳴り響く轟音。空を裂く砲弾。
鮮黄のゲットマシン目がけ、一直線に飛んでいく…!


しかし、その直後だった。
紅の影が、その針路上に割り入った―
そして、砲弾は加速度を増し、そのまま紅の影に突っ込んでいく。
吸い込まれていった砲弾はやがて着弾、破裂。


リョウたちの、ヒドラーの目に映った、豪奢な火花の炸裂。
それは、ヒャッキードラゴンを…他でもない、ゲッターを倒すためのロボット…中心に、大空にぱあっ、と広がっていった。


「う…!」
「うわあッ!」
「…!」
胡蝶鬼と自雷鬼の悲鳴が、鉄甲鬼の耳を焼く。
歯を喰いしばって、耐えた。聞かないふりをしようとした。
鉄甲鬼は、操縦桿を必死にひく。
しかしその努力もむなしく、打ち抜かれたヒャッキードラゴンは傷つき、地面に落下していく…
激震。
強烈な衝撃とともに、ヒャッキードラゴンが大地に伏す。
数秒もせぬうちに、がらがらん、という音を立て、焦げ付き捻じ曲がった金属片が、天から落ちてきた。
それは、焼き砕かれたヒャッキードラゴンのウィングだった。
「ぐ…ッ」
「な…何をするのだ、鉄甲鬼!」
「鉄甲鬼…?!」
「ヒドラー…貴様にッ、これ以上邪魔はさせんッ!」
一言のもとに、切り捨てた。
困惑する胡蝶鬼と自雷鬼を介しもせず、混乱するヒドラー元帥をにらみつけ、鉄甲鬼は血を吐くかのような鋭さで怒鳴りつけた。
「な、な…」
「消えろ…俺たちの前から消えろ、今すぐにッ!」
ぎりっ、と音のしそうなほど鋭い視線で、黒曜石色(オブシディアン)の瞳がヒドラーを射抜く。
殺意ともいえそうなほどの怒りを含んだその咆哮は、熱をはらんで戦場に響き渡った。
「…」
「…あいつ…」
リョウたちは、呆然としてその対立を見る。
無事に合身したゲッタードラゴンは、大地に立ち尽くす…
もし。
もし、あの時、ヒャッキードラゴンが割り込んでこなければ。
鉄甲鬼が救ってくれなければ。
ポセイドン号は、あの砲撃にやられ、こっぱ微塵になっていただろう…
パイロットの、ベンケイごと。
しかし、それが明らかに彼の独断であったことは明白だった。
それが証拠に、目前に見えていたゲッター破壊を台無しにされたヒドラーは、露骨なセリフで彼を責めている。
「な、何と言うことを…わ、私に逆らってただで済むと思うなよ、若僧が!」
「やかましいッ!」
しかし、鉄甲鬼はもはや退かない。
彼は吼える。吼える。吼える!
「俺は『正々堂々』と戦う!それこそが俺の誇り、俺の名誉!
…その名誉を、ヒドラーッ!貴様は汚したんだ!」
「…!」
がきゃっ、と、音を立て、ヒャッキードラゴンが立ち上がる。
流れ出すどす黒いオイルにまみれた右手が、トライデント(三叉槍)をにぎりしめ―ヒドラーを狙う。
「さあ!消えろ、ヒドラー!さもなくば…」
「ま、ま、待て!わ、わかった!わかった…」
傲慢であるが小心でしかないヒドラーは、たったそれだけの脅しに屈した。
怯えをはりつかせたその顔には、鉄甲鬼への逆恨みをも浮かばせて。
「…だ、だが…忘れるな、鉄甲鬼!百鬼帝国に帰ったら、必ず貴様を軍法会議にかけてやるッ!」
「…」
鉄甲鬼は、無言。
ヒドラーはなおも捨てゼリフを吐く。
負け犬のものでしかない、それは滑稽な遠吠えだが、それでも彼が言うことは近い将来の真実だ。
「ゲッターを倒せずに帰ってきてみろ!その時は…貴様ら、残らず死刑だッ!」
「…」
「…」
胡蝶鬼は、無言。自雷鬼は、無言。
吼え続けるヒドラーは、彼らの無言に気圧されながら…ぷっ、と唾を吐き捨て、逃げるようなスピードで装甲車に飛び乗った。
「ほえ面かくなよ、鉄甲鬼ッ…!」
それだけ言い残し、凄まじいスピードで装甲車は反転、あっという間に走り去っていった…
…戦場に、風が吹く。
生ぬるい、からみつくような風が、ゲッタードラゴンとヒャッキードラゴンの間を埋める。
「…」
「…」
「…疑って、すまなかった」
「…」
リョウは、静かに詫びた。
だが、鉄甲鬼は何も言わなかった。
何も言わぬまま…じっと、うつむいている。
「『卑怯者』なんて罵ったりして…」
「…そんなことは、どうでもいいッ!」
が。
次の瞬間、再び彼は顔を上げた―
きっ、と、モニターの向こうに在るリョウを見据え。
ゲッタードラゴンを見据え。
彼は、声高らかに宣言した―!
「さあ、勝負だゲッターチーム!邪魔者はいなくなった、今こそ決着をつけてやるッ!」
「な…?!」
「お、お前、そんな状態で…まだ戦うつもりなのか?!」
「ああッ!」
…何と。
何と言うことだ―
こんな状態になっても、それでも鉄甲鬼は戦意を失っていないのだ!
鉄甲鬼は、モニターをにらみつける。
そこに映るリョウを、闘志をたぎらせる鉄甲鬼に困惑する「敵」を力の限りねめつけ、彼は声の限り言い放った―!
「…俺は、俺の造ったこのヒャッキーロボGで!
胡蝶鬼と、自雷鬼と、俺の『仲間』たちといっしょに…俺は、貴様らゲッターチームを、絶対に倒す!」
「!」
「鉄甲鬼…!」
鉄甲鬼の叫びを、胡蝶鬼と自雷鬼は己のコックピットで聞いた。
彼は―あの、どこまでもまっすぐな、強い瞳で、何の迷いもなくそう言ったのだ。
…それは、彼が己の「仲間」たちに告げた彼の思いそのままだった!
「し、しかし…!」
「さあ抜け流竜馬ッ!」
惑うリョウ。猛る鉄甲鬼。
言うなり、ヒャッキードラゴンは思い切り駆け出そうとした―
…が。
「ぐ…!」
構えたトライデントの切っ先を届かせることもできないまま、たったの二、三歩でヒャッキードラゴンはその場に無様にくずおれた。
無理な稼動を強いられた破損箇所はますますひどく傷つき、不吉なアラート音がしつこくコックピットに鳴り響く。
それでも、戦うことをあきらめない、決して退こうとしない、かたくなな鉄甲鬼…
その様は、ゲッターチームのこころを動かしめる。
「…やはり無理だ、鉄甲鬼。今日のところは、百鬼帝国に帰るんだ…
次に会った時、今度こそ『正々堂々』と勝負すればいいじゃないか!」
「ふ…ふふふ…!」
「敵」であるリョウの、甘っちょろい、そして同情心に満ちた言葉。
その言葉に、鉄甲鬼の唇が皮肉げな薄い笑いを形作る。
「ヒドラーに逆らい、命令に逆らった俺に、何処に帰れというのだ…
もしも、百鬼帝国に帰るというならばッ!」
言い放った鉄甲鬼の瞳には、もはや尋常な精神はないように思えた。
黒曜石色(オブシディアン)の闇が抱き込むのは、ただただ己の闘志を完遂するための執念のみ。
そして、その執念が彼を操り、そしてヒャッキーチーム三人の避けられない敗北を呼ぶことなど、その場にいる誰の目にも一目瞭然だ。
しかし―
胡蝶鬼も、自雷鬼も、動かない。
微動だにせず、鉄甲鬼の雄たけびを彼らは聞き届ける!
「俺たちは、ゲッターロボを倒し!堂々と帰ってやるんだッ!」
「…鉄甲鬼ィッ!」
「さあ…いくぞ、ゲッターチーム…ッ!」
「止めるんだ鉄甲鬼!…俺は、お前だけは殺したくないんだッ!」
リョウの絶叫を無視して、ヒャッキードラゴンは重い重い重い一歩を踏み出す。
その度に機体が不自然に揺らぎ、揺らぎ、その度にオイルが大地に撒き散らされ、撒き散らされ、
それでも鉄甲鬼は操縦桿を離さない。
それでも鉄甲鬼は操縦桿を離さない。
だから、不恰好にもよろめきながら、ヒャッキードラゴンはトライデントを振りかざしゲッタードラゴンに向かっていく―!
「…!」
だが。
だが、リョウたちだって、負けてやるわけにはいかなかった。
殺されてやるわけにはいかなかった。
だから、リョウは…ヒャッキードラゴンの隙だらけのモーションを見切るとほぼ同時に、操縦桿を押した。




殺意も悪意も敵意ももはやない、そのくせに…彼のそのわずかな腕の動きが、あの三人を殺すのだ。




<To be continued...!!>




<♪不滅のマシーンヒャッキーロボ(『ヒャッキーロボG』エンディングテーマ)>

あ〜おく輝く 地球を狙い
百鬼帝国 躍進だ〜
い〜そげ〜 三人の〜 わーかものたちよ〜
せーぎのこころで合体だ〜
おーおぞら高く〜 ひ〜ばなをちらし〜
へ〜いわのーたーめーにー あーくーをーうつ〜
お〜おヒャッキー ヒャッキー ヒャッキー
ふ〜めつ〜の〜マッシ〜ン ヒャーッキーロッボ〜!