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TOP俺たちゲッターロボマニアMonologue〜車弁慶〜一人、遅れてきた騎兵隊


Monologue〜車弁慶〜
一人、遅れてきた騎兵隊


俺は、戦いが嫌いだ。
争いごとなんてくだらないし、みんな仲良くやっていきゃあいいのに、と思う。

ずっと、そう思っていた。

だから、俺は昔っからケンカが嫌いだった。
なまじ俺のガタイがいいもんだから、ツッパリだの何だの…くだらん奴らが俺に目をつけてくるなんてこと、しょっちゅうだったけれど。
でも、俺はそのたびにそれを拒否してきた…
ケンカなんてやったって何になる、お互い疲れて怪我して、それで終わりじゃないか、と。
そんな説得聞くような相手じゃない、そんなマシな脳みそを持ち合わせていない奴らだってことは、重々わかっていたんだけど。
で、最後には殴り合い。
とはいえ、俺がちょっと本気でやったら、相手をのすなんてこと簡単なのだけど
(そうできない相手ってのは、リョウやハヤトぐらいだ…親父を除いては)。
俺だって殴られるのは嫌だから、仕方なくそいつをぶちのめして帰る。
ああ、まったく面倒くさい奴らだ、と思いながら。

つまり、結局は。
百鬼帝国の鬼どもってのも、そんな奴らと同類なんじゃないか。
俺は、最近そう思い始めた。

だったら、正直くだらない。
お前らはお前らの国で平和に暮らしてろよ。
お前らが世界最強だとか、そんなことはどうでもいいんだよ。
お前らが「人間」支配したところで、人口無駄に増やすだけじゃねえのか。
まったく、面倒くさい奴らだ。
俺は、心底そう思う。

ゲットマシンに乗るのは、不思議な感じがする。
それに乗って百鬼ロボットと戦うのは、正直怖い気もする。
だって、下手したら死んじまうんだから。
でも、あの三機のゲットマシンが合体する感覚、そして体を貫く緊張感―
脳髄がしびれきるようなあの感覚は、好きだ。

だけど、俺は―それがなくったって、生きていける。

そして、ゲットマシンに乗るのは…別に俺でなくったっていいわけだ。
リョウやハヤトがどう考えてるかは知らない。
だが、ポセイドン号に乗るのは、別に俺である必要なんてない。
こうやって身体張っていのち張って百鬼ロボットと戦うのは、別に誰だっていいわけなんだ。
俺だって、元気ちゃんに連れられて研究所に行った時に、何故か早乙女博士に気に入られて半ば無理やりパイロットにされただけなんだから。
だから、ゲットマシンに乗れるだけの体力がある奴なら、ポセイドン号に乗る資格があるんだ。
そうすれば、俺も戦いなんて続けなくてもすむってことだ。



…だけど。



だけど、あいつらは殺そうとするから。
俺の好きな人たちを殺そうとするから。



もしリョウが百鬼の奴らに殺されそうになったなら、俺はその鬼を殺すだろう。
もしハヤトが百鬼の奴らに殺されそうになったなら、俺はその鬼を殺すだろう。
もしミチルさんが百鬼の奴らに殺されそうになったなら、俺はその鬼を殺すだろう。
もし元気ちゃんが百鬼の奴らに殺されそうになったなら、俺はその鬼を殺すだろう。
もし早乙女博士が百鬼の奴らに殺されそうになったなら、俺はその鬼を殺すだろう。

そして、俺は―そんなことすらたくらむ、悪辣で危険な鬼どもを、この世から消し去ってやる。



俺の戦う理由。
漫画のヒーローがよく言うような、陳腐でなんのかわりばえもしない、てんでありがちな理由。
だけど、俺はあいつらが好きだから。
もう、好きになってしまったんだから。
もし、あいつらが死んだら―
ニュースが毎日飽きずに流し続けてるような交通事故死の犠牲者みたいに、受け止めることなく流してなんかいけやしないだろうから。



俺は、戦いが嫌いだ。
争いごとなんてくだらないし、みんな仲良くやっていきゃあいいのに、と思う。
それでも、





俺はゲットマシンに乗り続ける。
俺の守りたい人たちを、守るために。






リョウやハヤトに比べ、話にあがることが少ないベンケイ(TV版)…
でも、私は彼が大好きです。
ムサシの後釜でありながら、彼とはまったく違うキャラクター。
リョウにもハヤトにもない強さを持つ彼なくしては、百鬼帝国との戦いは勝ち得なかった―
一人、遅れてきた騎兵隊は、しかしながら最高の援軍であったわけなのです。