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対決!ゲッP−X(げっぴーえっくす)対ゲッターロボ(3)


「いやー、絶好の決闘日和だなー!はっはっはあ!」
胸を張り、浅間の清らかな朝の空気を吸い込んだケイは、そう言って高らかに笑うのだった。
そして、朝っぱらからその哄笑が浅間山中に山彦となって響き渡る。
一夜が明けて、もう朝だ。
さわやかな日差しが、きらきらとこぼれんばかりに落ちてくる…
「…」
「…」
「…」
が、朝日の中できらめくそのケイの後ろ姿を見るゲッターチーム三人の表情は、そこまでさわやかとは言いがたいようだ。
…と、とうとうリョウが、おずおずと本人に問いかけた。
「…け、ケイ君…君、本当に大丈夫か?」
「なあに言ってんだよー!」
しかし、そう問われたケイはげらげら笑って返すだけ。
…これが本当に、昨夜記憶喪失になった挙句リキとムサシに思いっきり投げられ、頭から勢いよく地面に落下した結果綺麗に意識をふっとばし昏倒した男の言うことだろうか。
もちろん、よく見るとその跡は彼の頭に「包帯ぐるぐる巻き」という形で生々しく残っているのだが、それを感じさせないケイの(暑苦しいほどの)活力あふれる様は、とてもではないが信じられない。
「で、でも、その…」
「リョウ、もうほっとけ。本人が大丈夫だって言ってんだから、大丈夫なんだろ」
「…」
「それに、博士たちもいいデータが取れるかもしれんって言ってるしよ」
「あ、ああ…」
なおも心配げにしているリョウだが、ハヤトにたしなめられ、口をつぐんでしまう。
よく見れば、一番彼のことを知っているはずのゲッPチーム残り二人が平然としているのだ、多分平気の平左なんだろう…
きっと、多分、おそらく…は。
リョウはそう考え直し、そう思い込もうとした。
よく考えれば、昨日からずっと彼らのペースに乗せられっぱなしだ…
こんなことでは、これから始まる模擬試合でも、相手に飲まれてしまう。
そうリョウが思いなおし、気合を入れなおしたその時…ちょうど、研究所のスピーカーが、早乙女博士の宣言を大音量でがなりたてた。
「…よし!それでは、ゲッターチーム、ゲッPチームの諸君!早速模擬試合を始めるぞ!」
『応!』
六人の気合が、猛る闘志とともに燃える―
誰からともなく、駆け出す―
研究所前にて己が主の到来を待ちわびる、鋼鉄の翼へと!
そして、次々に空を切り裂くジェット噴射音…
真紅の鳥が、蒼輝の鳥が、鮮黄の鳥が、透き通る空へと舞い上がる。
―しばしの飛行・旋回の後、彼らはお互いフォーメーションを組んで対峙した。
早乙女研究所ゲッターチーム。
イーグル号にリョウ、ジャガー号にハヤト、ベアー号にムサシ。
宇宙ロボット研究所ゲッPチーム。
ファルコン号にケイ、シャーク号にジン、パンサー号にリキ。
とうとう、はじまるのだ。
世紀の決戦、前代未聞の変形合体巨大ロボット同士の対決が―!
「それじゃあいくぜ!ゲッPチーム!」
「へっ、甘く見んなよゲッターチーム!」
その決戦の火蓋は、両チームのリーダーの雄たけびと同時に切られる!
「チェーンジ・ゲッター1!スイッチ・オォォンッ!」
「チェーンジ・X−1!レッツゴー!」
リョウの、ケイの叫びが響き渡った瞬間、彼らは同時に合体に移った。
なめらかに空を滑る6機の戦闘機。
マシンを貫くマシン、マシンをつなぐマシン。
その一連の手順全ては、熟練のパイロットたるゲッターチーム、そしてゲッPチームのお得意とするものだ…


…だが。
ゲッターロボと、ゲッPロボ。
何というか、その、あまりに…
あまりにこの二者、製作コンセプトも分離形態もそして合体変形方法も(偶然にも)似通ってしまっていたので。
ストレートに言えば、おんなじだったので。
そのため…偶然にも、その飛行経路が合致すれば。


「あ、あああああー?!」
「えっ、ん?…何だ、こりゃ?!」
「うっひょおおおー!」
「あっちゃー、やっちゃったみたぁい」
「…ふっ!」
「ななな、何なんだよぉこれぇ?!オイラ、どうなっちゃったの〜?!」
それはそれはもうとんでもない想定外の事態にもなりえ…ないことも、なかったようだ。
空前絶後のショッキングシーンが、今まさに観衆の眼前において展開されていた。
「な、な、な…」
「ふうむ、こりゃあ不思議なこともあるもんじゃのお」
彼らの合体シーンを見守っていた早乙女研究所・司令室でも、あまりの出来事に皆軽く意識を飛ばしていた。
早乙女博士などは、大口を開けたまま妙な姿勢と顔で凍り付いている。
…が、それに対し呉石博士は、さすが年の功か…それともこれも予測の範囲内だったのか、ともかく彼は軽く眉を動かし、己のひげをなでさすっているだけだった。
あえて無理やり表現するなら、それは…ムカデ、だった。
シャーク号の上にジャガー号が乗っかってその上にパンサー号が居座ってそのまた上にイーグル号がくっついてそのまたまた上にベアー号がついていてそのまたまたまた上にファルコン号が鎮座していた。
足は二本。そして、腕は全部で8本である(内2本がドリルである)。
背中のウイングも出てるんだか出てないんだか、ジェットも出てたりミサイル発射口も出てたりでもうてんこもり。
当然二本きりの足では、その上からのしかかってくる五機分の重量を支えきれず、そのムカデはあっちにふらふらこっちにふらふらしている…
しかし、ゲッターロボとゲッP-X、似てはいても…別のロボット、別のマシンなのである。
「し、しかし、呉石博士…こ、こんな、トラブルが起きないはずはッ」
「あーそうじゃのお早乙女博士。ほれ」
慌てる早乙女博士、泰然とした呉石博士の指の指したほうを見てみると…
果たせるかな。トラブルは、既に起きていた。
「あ、ああーッ!た、大変!」
コマンドマシンのミチルは、思わず絶叫してしまっていた。
眼下の珍妙なムカデ…よろよろよろめくその奇妙なトーテムポール、そのゲットマシン同士の継ぎ目の部分から黒煙が噴出していた。
無茶な結合に、とうとうパーツが耐え切れなくなったのだ。
「リョウ君、ハヤト君、ムサシ君ッ、大変よッ!継ぎ目から煙が…」
「わ、わかってるよっ、そんなことッ!」
「おーいリキー!そっちはどんな感じだー?」
「うーん、ちょっと風景違う感じやわぁ。しーんせぇん」
「おいおい天王寺!そうじゃなくって!」
「ジンさんよぉ、そっちの機体は異常ないか?」
「いや…結構、ヤバい…かな?」
「いっよぉぉし、それっじゃああ流君!このままじゃヤバいっぽいから、もう一回合体しなおそうぜ〜!」
「あ、ああ…」
全機わやくちゃの通信が飛び交う中、やはりひときわでっかいケイの通信が(思わずリョウは通信機のボリュームを最小にした)リョウの鼓膜をつんざいた。
ともかく、この合体を解除して、正しい形に合体しなおさなければ…
思いは同じ、だ。
リョウは、改めて操縦桿を握りなおした。
「同時に行くぜ!せーの…」
「ま、まってくれ、ケイ君!」
「何だよ?」
「タイミングが大事なんだこういうのは!…いいか、いち、にの、さん!でいくぞ!」
「…はいはい了解!」
「いくぜいち、にの、さんッ!」
そして、リョウの掛け声とともに彼らは再合体に挑む!
「オープン・ゲーット!」
連なった6機のマシンが、分離してゆき…再び戦闘機形態に姿を変える。
その全ての機隊が美しい放物線を描き、縦横無尽に空を切る!
「チェーンジ・X−1!レッツゴゥ!」
「チェーンジ・ゲッター1!スイッチ・オォォンッ!」
パンサー・シャーク・ファルコン!
ベアー・ジャガー・イーグル!
3機の戦闘機が正しい順で重なっていく。
腕が伸び、脚が伸び、ウィングが伸び…合身した巨人が、大地に立つ。
「…っ、と!」
「…!」
連続して地面に響く、重々しい振動。
―そこには、二体の巨神が在った。
紅い装甲。紅き機神。
流竜馬が駆るその鬼神の名こそ、ゲッターロボ空戦用モード・ゲッター1!
蒼い装甲。蒼い機神。
百舌鳥恵一が駆るその機神の名こそ、ゲッP-X空戦用モード・X-1!
「オッケー!これで…お互い、準備はバッチリ、と言うわけだッ!」
「ああ…そのようだな!」
どちらからともなく―リョウとケイは、にやり、と笑んだ。
全長38mのゲッター1と、全長20mのX-1では、倍ほども高さの違いがある。
だが…歴戦の勇者たる彼らにとって、それはさほど問題にはならない。
何よりも勝負を決めるのは、機体の性能―
そして、それを操るパイロットの技量そのものなのだから!
「それじゃあ、遠慮はなしだ…俺たちのゲッPの力、見て驚くなよ!」
「ふっ、そいつはこっちのセリフだぜ!君たちにも味合わせてやるぜ、ゲッターの恐ろしさをな!」
高らかに放つ、宣戦布告。
三身合体ロボット同士の決戦という異色の対決が、今、幕を開ける…
『行くぞ!』
リョウとケイの雄たけびが、奇妙な調和(ユニゾン)を為して空気を震わせる!
刹那、巨人たちはお互い目がけて全力でダッシュ!
大地が悲鳴をあげてわななく―そして!
「ゲッター・ビィイイィイムゥッ!」
いきなり必殺技・ゲッタービームを放つリョウ。
ゲッター1の腹部から、凝縮されたゲッター線エネルギーが…それはまさに「破壊光線」…X-1に向かってほとばしる。
「くっ!」
辛うじてケイはそれに反応…空高くジャンプし、空中に逃れた。
「やったな、お返しだッ!」
が、X-1とて負けちゃいない。
空高くより、弾丸のような速さで降下する!
それを見てとったリョウも素早く上昇、X-1の蹴りを同じく蹴りで相殺する…
「エックス・キィィック!」
「ゲッター・キィィック!」
がきゃあああんっ、という金属のきしる激しい衝突音!
数十トンもの質量を持つ巨大ロボット同士の放つキックはその威力も凄まじく、両者に強烈な衝撃が走る。
『うわああああああああッッ!』
お互いのキックの威力に吹っ飛ばされ、弾き飛ばされるかのように吹っ飛ぶゲッター1とX-1。
吹き飛ばされ、絶叫するリョウの額に―冷や汗が流れる。
どうやら、こいつは…姿ばかりがゲッターに似ているわけじゃない、その実力も俺たちのゲッターと同等なんだ!
甘い考え、一瞬の油断すら禁物なんだ…
彼らは、ゲッP-Xは…俺たちと同等に、いやもしかしたら俺たち以上に強いのだから!
形勢の立て直しを図らんと、リョウは大声でハヤトを呼ばわった。
「ハヤト!…ゲッター2で行くぞッ!」
「了解!行くぜ…チェーンジ・ゲッター2!スイッチ・オンッ!」
ハヤトの操作に従い、ゲッター1が再びゲットマシン形態に分離し…そして、新たな合体モードに移行する!
「おいジン!お前の出番だぜ!」
「わかってる!…チェーンジ・X-2!Come on!」
同様にゲッPチームも、高速での戦闘が可能な合体モードを選択。
メイン操縦者のジンはよどみなく変形合体の操作を入力した!
ファルコン・パンサー・シャーク!
イーグル・ベアー・ジャガー!
3機の戦闘機が新しい順で重なっていく。
腕が生え、脚が生え、ドリルが生え…合体した巨人が、大地に立つ。
―そこには、二体の巨神が在った。
白い装甲。白き機神。
操者・神隼人が魔神(マシン)、ゲッターロボ陸戦用モード・ゲッター2!
朱い装甲。朱い機神。
操者・放出仁が魔神(マシン)、ゲッP-X陸戦用モード・X-2!
同じく高速戦闘を得意とする二者の対決は―やはり、陸戦!
「ゲッター・マッハ!」
「!」
ハヤトの叫びとともに、ゲッター2が―加速する。
マッハ3のスピードで加速するゲッター2は、残像をいくつもいくつも生み出しながら、X-2を囲い込んでしまった!
「どうだ、ゲッター・ビジョンの威力はッ!」
「くっ…!」
周囲に無数に現れたゲッター2の残像そのどれもから、ハヤトの挑発が響き渡る。
視線をさまよわすジン…だが、肉眼ではとてもどのゲッター2が実像なのか、見分けなどつかない!
こうしている合間にも、ハヤトはこちらの隙を突いて突撃してこようというのに…
だが―
「…ふっ!」
「見分けなどつかない」なら、それでも別に構わない!
ジンの冷静な頭脳は、すぐさまに次善の策をはじき出す!
そして…X-2が、躍動する!
「エックス・ショック!」
「?!…ぐううッ!」
途端、X-2を青白い光柱が包み込み―天地を貫いた!
その光はばしいっ、と同心円状に広がり、超高速移動中のゲッター2の幻影を飲み込んでいく。
そして、実体のゲッター2をも。
「?!」
「ううッ?!」
「い、いででででで!」
身体の芯を貫くショックに、ハヤトたちは悲鳴をあげる。
(畜生、電気ショックってわけか!)
それでも、何とか後方にジャンプし、難を逃れるゲッター2。
薄れゆく青白い光柱―その中央で、鋭く尖った両手を構え待っているX-2!
「やるな、ジンさんよぉ!」
「あんたこそな、神隼人!」
不敵な笑みを交わしたのは…果たして、どちらからだったのか。
しかし、それも一瞬…再び、二機は突進する!
「ゲッター・ドリルゥッ!」
「エックス・サンダーッ!」
そして、激突!
くらめく火花、炸裂する必殺技―だが、そのどちらもがどちらをも確実に傷つけていた。
「うぐ…ッ!」
「…〜〜ッッ!」
はじけ飛ぶゲッター2、X-2。
地面に激しい勢いで転がり落ちる。
当然のごとく、その衝撃はダイレクトに中のパイロットたちに伝わる…
「あで、あでででで!」
「オイてめぇジン!もうちょっと安全な運転しやがれぇ!」
「いたたたッ…」
「ちょ、ちょっと、ハヤト!お前運転乱暴だぞ〜」
『うるさい!ちょっと黙ってろッ!』
そして、両チームの「余計なこと言い」が余計なことを言って、メインパイロット(たち)に怒鳴られた。
と―コンソールの表示を見たジンの表情が、曇る。
X-2の出力ゲージが、少しずつとはいえ―下がってきている?
危険を感じたジンは、三号機のリキに交代を要請する。
「くっ、リキ、替わってくれッ!さっきの合体のせいか、いまいち出力が上がらない!」
「まかせてや、ジンッ!行くでぇ!チェーンジ・X-3や〜!」
ゲッター2の眼前で…X-2がばらばらにほぐれていく。
次はリキが登場、とくれば…!
「おい、重量級が相手だぜ!」
「おおっし、オイラが相手だぜぇ〜!チェーンジ・ゲッター3・スイッチオーンッ!」
当然、こちらもムサシの出番だ!
ムサシの元気な雄たけびとともに、ゲッター2も遅れて分散する!
シャーク・ファルコン・パンサー!
ジャガー・イーグル・ベアー!
3機の戦闘機が違った順で重なっていく。
腕が出で、脚部が出で、ミサイルキャノンが出で、…完成した巨人が、大地に立つ。
―そこには、二体の巨神が在った。
三色の装甲。強力(ごうりき)の機神。
巴武蔵の操る神機、それこそゲッターロボ海戦用モード・ゲッター3!
同じく、三色の装甲。怪力の機神。
天王寺力の操る神機、それこそゲッP-X海戦用モード・X-3!
パワーとパワーの激突、まさに掛け値なしの格闘戦(ガチンコ・バトル)だ!
「ここで全国大会の時見せられなかった、オイラの必殺技見せてやるぜ!」
「ワイの六甲山おろしで、ふっとばすで〜!」
柔道部全国大会で実現しなかった両者の戦いが、今、己の魂を乗せたロボットでのバトルという形で現実になる―!
先に仕掛けたのは、リキ!
「ろっこおおおおざん、おおおおろおおおおおしいいいいッッ!」
「…!」
まずい、と思ったときには、遅かった。
X-3から、烈風が吹き荒れ…ゲッター3を襲う!
「え、う、うわ、うわああああああッ?!」
ムサシの悲鳴。
何とその烈風は、ゲッター3を押し流している―確実に!
ゲッターロボの変形モード中一番の重量・250トンを誇るゲッター3が、X-3の起こす強風に負けている?!
「くっ、まずいぞムサシ!」
「わ、わかって…う、うあああああああ…ッ!」
烈風の勢いは増すばかり!もはやゲッター3の視界は吹き荒れる風で完全にふさがれた。
そして―とうとう、ゲッター3ですら耐えられなくなった。
「?!」
強烈な違和感。凄まじい浮揚感が、ゲッター3を貫いた。
「…!」
ゲッター3が、宙を舞う―
そして、空高く跳ね飛ばされた鋼鉄の機神は、計り知れぬ加速度でそのまま大地に落下する!
…大地を砕くかのような、星辰の墜落!
「う…ッぐううッ!」
脚部から墜落したゲッター3…そのダメージは深刻だ。
様々なビープ音が、あっという間にコックピットを埋め尽くす。
だが、このままやられておめおめ引き下がるのは、巴武蔵のやり方ではない!
「ちっくしょーッ、お返しだーッ!」
キャタピラを勢いよく駆動させながら、その巨体にも似ず素早くX-3に近寄っていく!
「まずいッ、避けろリキッ!」
「う…!」
ケイの叱咤も、間に合わない…!
ゲッター3の両腕が、がっしりとX-3の両肩を掴む。
そのまま、ゲッター3はゆっくりと回転を始める…
はじめはゆっくりと、そして加速をつけて凄まじい勢いで!
「だーいせーつざあああああん、おーろーしいいいいいーーーーッ!!
「…!」
そのフィナーレに、思い切り上空へ獲物を投げ上げる…!
先ほどゲッターチームが見たものとまったく同じ光景が、今度はゲッPチームの眼前に繰り広げられる。
空高く吹っ飛ばされたX-3は…やはり、空から墜落する!
「ぐおおおおお…ッ!」
ムサシの大雪山おろしの攻撃力は、リキの六甲山おろしに劣ることなく、X-3に甚大な被害を残す。
何とか、それでも踏みとどまったリキ…
どうやら、両者の投げ技の威力は、互角のようだ。
「まずいぜリョウ〜!今ので結構やられちまった!」
「兄ぃ!ワイもや!頼む、替わってんか!」
しかし、これ以上続行するのは得策ではない…
どうやら、ムサシの判断もリキの判断も、同様のようだった。
「オッケー!俺に任せろ!…チェーンジ・X-1!レッツゴーゥ!」
「わかった!…チェーンジ・ゲッター1!スイッチ・オォォンッ!」
両者とも、分散、再合体。
再度、空戦用モード・ゲッター1、X-1に変化する…!
「ゲッターッ・トマホゥク!」
「!…エックス・ブレードッ!」
己の得物、ゲッタートマホークを手にしたゲッター1。
それを見たケイも、迎え撃つべくX-1を操作する。
X-1の翼が肩から分離…一対の翼が合体融合し、剣に変化。
自らの武器・エックスブレードを手にしたX-1は…その剣を構え、ゲッター1と対峙した。
「…行くぞ!」
「応ッ!」
ゲッター1が、先に仕掛けた―構えたまま、それを待ち受けるX-1!
振りかざす斧。斬りかかる剣―
がきぃんっ、という鋭い音とともに、斧と剣とが喰らい合う!
「…!」
「うぐ…!」
上方から襲い来るゲッター1の初撃を、見事剣で受け止めたX-1。
しかし、重量差があるゲッター1相手では、じりじりと押し戻されていく…!
「…くっ!」
不利を悟ったケイは、思い切りエックス・ブレードを振り払った。
その剣撃を避けるや否や、再び迫ってくるゲッタートマホーク!
ぎん、がんッ、きぃんッ!
幾度も幾度も、斧と剣とが打ち鳴らされる。
それは剣劇。達人同士の、一歩も引かぬ剣劇。
早乙女研究所内司令室で見守る早乙女博士、呉石博士、所員たち。
そしてコマンドマシンのミチルも―ただただ、目を見張り、その剣劇を見つめている。
五度。十度。二十度。切り結ぶ鋼鉄と鋼鉄。
そこでは、一瞬の油断すら―
許されない。
「…!」
まさに、瞬間。
ほんの一瞬―ケイの集中力が、ふっ、と途切れた瞬間だった。
「?!うわあっ?!」
どぉん、という鈍い衝撃が、X-1の腹部から全身を揺るがす!
ゲッター1の体当たりが、間隙をついて放たれたのだ!
そのまま後ろに吹っ飛ぶX-1。大地を擦り、砂埃が舞う。
倒れた体勢から、すぐさま反撃体勢に移ろうとX-1の上半身を起こそうとした刹那―
―ゲッタートマホークの刃が、X-1の首元に当てられた。
ぴたり、と当てられた刃に、ケイは一瞬状況が飲み込めず、ぽかん、とした表情を浮かべる。
が…すぐにその意味を悟ると、弱々しく笑んで、ため息をつきながらつぶやいた。
「…まいった」
それは、少しばかりの悔しさが混じってはいるものの…自分の実力を出し切って戦った、さわやかですっきりした笑顔だった。
「あはははは、まいったまいった!」
そして、からからと笑う。まるで、ガキ大将のように陽性の笑い顔。
その笑顔につられて…思わず、リョウも、ハヤトも、ムサシも、笑ってしまった。
斧を収めるゲッター1。同様に、エックス・ブレードを元通りX-1の翼に戻しながら、ケイは笑って言うのだった。
立ち上がるX-1。
…と、ゲッター1が、右手を伸ばしてきた。
X-1も、同じように右手を伸ばす…
そして、お互いの健闘を認め合う。称え合う。握手。
「やぁれやれ、俺が斬りあいで負けるなんてなぁ…やっぱ、もっと特訓しなきゃなあ!」
「そうやで兄ぃ!もーお、ワイのX-3なら勝てたのにぃ!」
「何ぃ?!リキてめぇ、何勝手なこと言ってやがんだ!」
「まったくだぜ。…俺のX-2、マシン異常さえなければ余裕だったんだがな」
「ジン、お前も勝手なこと抜かしてんじゃねえぞ!」
「ま、まあまあ…君たちも、よくやったじゃないか」
ぎゃあぎゃあと始まったゲッPチームの言い争いを仲裁しながら、リョウは笑顔で言い返す。
その感情は、まったく本当のものだった…
ハヤトとムサシも、思いは同じのようだ。
「俺たちも、危なかった…油断してたら、やられるところだった」
「ほんとだぜ〜。あの六甲山おろし、効いたあ〜!」
「へっ、それじゃ…次に戦った時は、俺達のほうが楽勝で勝っちまうな!」
「はは、面白い!また次にやった時も、俺たちが勝ってみせるさ!」
…どちらともなく、笑みが漏れた。
それは、戦いの果てに生まれた友情のような…不思議な感覚が為せるものだった。
ゲッターロボとゲッP-X、同じ三身合体ロボットを駆る青年たち同士の間に生まれた、不可思議な感覚。
感慨のような、感動のような―あいまいだが、だが決して気分の悪くないもの。
その感慨は、彼らを勝敗という結果などに拘泥させない。
あるのはただ―
「…?!」
その、刹那だった。
感慨に浸っていたケイの瞳に、異様なモノが映った。
こちらに向かって立っているゲッター1、その背の遥か向こうから…黒い影。
見る見るうちに大きくなるその影は、明らかに人工物の形状を為している。
迫るその影は―ロボット?!
そしてそのロボットは、背を向けたゲッター1に向けそのミサイルの発射口を―
「危ないッ、流君ッ!」
ケイの絶叫。
思わずリョウは、振り返る。
「?!」
だが―彼の視界を覆ったのは、ただ爆風。火炎。
思わず喉を突いてあがる、悲鳴。
衝撃。破壊音。
数発のミサイルが、容赦なく無防備なゲッター1の背に着弾する。
破壊。破壊。破壊。
リョウの、ハヤトの、ムサシの悲鳴―


ケイの、ジンの、リキの眼前で―その暴虐の光景が広がった。
今、お互いを認め合った好敵手を、卑怯にも後ろから奇襲した―!
ケイは奥歯を噛みしめる。
睨みつける。
ケイの殺気はらんだ視線の先にあった、醜悪な影―
それは、ゲッターチームの何よりの宿敵だったのだ…!