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所詮、抱きつくための毛布にしか過ぎない(1)




<ハーロウの赤毛猿の実験>
生後間もないアカゲザルを母猿から引き離す。
「母親」として、金網製の人形と、毛布でできた人形の二つを置く。
そしてそれに哺乳瓶を付ける。
だが、どちらの人形に哺乳瓶をつけていたとしても、赤ちゃん猿はミルクを飲む時以外は毛布人形に抱きついて過ごした。
恐怖感を与えるような体験をさせた場合も、毛布の人形に抱きつく…という行動を見せた。


以上の実験により、ハーロウは…接触による安心感こそが、母子関係の成立に重要だ、と結論付けた。





ぐらん、ぐらんと、前後に揺れる。
がん、がんっ、と、連なる堅い音。
少女らしい愛らしさいっぱいのピンク基調に彩られた部屋は、もう夕方近くなり暗くなってきたにもかかわらず、電気も付けられず。
ベッドの上にへたりこんだそれは、何度も何度も壁に打ち付ける。頭を壁に打ち付ける。
うめき声すら出さず、無表情に。
かちつけられた額はひどく傷み、痛々しい跡を何度も刻まれているというのに。
「…。」
と。
ぴたり、と、気味の悪い前後運動を続けていたそれが、動きを止める。
「ああ…だめ、だめ、だ」
かすれ声が、ぽっかりと開かれた唇から漏れ出でる。
「いやだよぉ、ああ…くるしいよぉ、つらいよぉ…」
ずるり、と、蛇のように這う。
ベッドの上から伸びた細い脚が…両方の脚には、血の滲んだ包帯が巻かれている…ぐらり、と、弱々しげに床を踏む。
「だきしめて…だきしめて、なぐさめてよお願い」
誰に言うでもなく、少女はぶつぶつと呟きながら。
幽鬼のごとく、ふらふら歩き出す。自分の部屋からこぼれ出す。
すれ違う寮生の驚く顔も、呼びかける声も、少女は何も見ないまま…何処かへと、去っていく。




もう、外はどんどん暗くなっていくというのに。
まだ、負ったばかりの傷は癒えていないというのに。