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◆ INTERMISSION <Neither guilty Nor innocent>(3)
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動揺している。
私は、動揺している。
そんなことはありえない、そんなことはないはずだ。
大気改造計画にともなう実験のため、地上に出たバット将軍が、奴らと
遭遇したという。
ゲッターロボ、そしてゲッターチーム。
その他にも、あの時代に存在した人間どもの超兵器が群れを成していた
と!
ありえない、物理的にも。
それはすでに過去ではないか!
あの時代より何千年もの時が過ぎたこの時代に、何故奴らが存在する?!
しかし、それだけではない。
バット将軍は、ゲッターチームの流竜馬…奇妙なことに、その年齢もほ
とんど変わっていないようだったとのこと…奴が、突如変貌したという。
性格の転換というよりは、人格そのものが入れ替わってしまった、と。
そして、その新人格は、我々の大気改造計画も、メカザウルスの仕様や
弱点も、さらに恐竜剣法すら知っており、バット将軍の部下を皆殺しに
した。
バット将軍ははっきりと言った。
あれは、No.39だと。
何ということだ、吐き気がする。
あの死んだはずのクローン体が、再び現れた、と。
しかも、流竜馬の身体に寄生して。
そんなことがありえるのだろうか。
身体が消滅したにもかかわらず、その精神のみが他の生命体の身体に宿
るなど。
それではまるで下手なオカルティズムではないか。
信じ難い。信じたくもない。
あのひょうろくだまが起きながらにして幻覚を見たと、そういうことに
しておきたい。

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悪夢だ。
奴は、実在したのだ。
そして、私の目の前で、奴は多数の若者を殺した。
笑いながら。
私の対ゲッターロボ用会心の兵器であるウランスパークすら、無力化さ
れてしまっていた。
ああ。
私は、何ということをしてしまったのだろう。
あの時代、あの時、ゲッターを倒すために造ったはずの兵器が、今にな
って私に剣を向ける!
奴は、危険だ。やはり、人間は危険なのだ。
今回の戦闘で、我が軍は数十機の恐竜ジェット機を失い、その搭乗者を
失った。
私が、殺したのだ。
あの兵器を造った、私が。
未来ある彼らを無益に死へ追いやって、何が科学だ?!
あのような、けらけらと笑いながら楽しそうに剣を振るい殺すバケモノ
を造ることの、何が科学だ?!
私は、自分が許せない。
自分の考えの甘さから、自分の能力に対する自惚れから、あのようなモ
ノを造ってしまった、自分が。
私は、彼らに誓おう。罪なくして殺された彼らに誓おう。
私は、どんなことをしてでも、あのクローン体を殺す。
ただ殺すだけでは飽き足らぬ。
苦しんで、苦しんで、苦しみぬき血反吐を吐いて死んでいくがいい。
それが貴様には似合いだ、No.39!

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人間No.39に対するほどの力を持ちうるのは、やはり人間だろう。
私は再びNo.0の作成に着手した。
以前発見されたまま、だがその性質ゆえ誰も手が触れられなかったあの
悪魔の巨人、真・ゲッターを、No.0に操縦させる。
そうすれば、ゲッターチームの現在の搭乗機であるゲッターロボGを上回
るその性能と、No.0の戦闘能力で、易々と奴らを倒せるだろうからだ。
もちろん議会では大多数が反対した。だが、誰も私の案を上回るアイデ
アを出し得なかった。
無能な馬鹿どもめ。吼える子としかできんなら、最初から黙っていろ。
さて、No.0の再生に関してだが、また以前のような培養教育期間を設け
る必要はどうやらなさそうだ。
ミケーネの将たちに伝わるという秘術、ここで使ってもらうこととしよ
う。

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No.0の再生に成功。
専用機であるメカザウルス・ロウの再生も急いでいるが、それより先に
真・ゲッターで人間どもにぶつけることとする。

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No.0、ゲッターチームと交戦。
奇妙なことに、流竜馬はNo.0を懐柔しようと試みた。
無駄なことを。あのバケモノを誰が止められようか。
製作者の私ですら制御の効かなかった殺戮兵器を説得しようとは、片腹
痛い。
しかし、やはりオリジナルとの接触が非常にストレスだったのか、No.0
は戦闘中に混乱をきたした。
だが、それよりも恐ろしかったのは…その途端、奴が現れたことだ。
突如流竜馬の身体を乗っ取り表にあらわれた、あのNo.39。
人格転換を起こした奴は、ゲッタードラゴンにのりながら、メカザウル
ス・ロウを音声認識操縦モードに切り替え、真・ゲッターを破壊しよう
とした。
迂闊だった。私としたことが、あのモードをそのままにしておくとは。
よく考えれば、同様のシステムで動くメカザウルス・ラルの操縦者であ
ったあのNo.39がそれを知らぬはずがないだろうに。
それでも、メカザウルス・ロウが変調を起こし、No.39の命に従わなく
なったため、何とか撃破は免れた。
しかし…それにしても、あのNo.39は危険すぎる。
あのNo.0が怯える様子すら見せていた。
モデュレイト済みのバージョンが、何故プロトタイプを凌駕する?
理解できない。やはり、あのNo.39は、素体たる流竜馬と同化するにいた
り、何らかの変化を遂げたのだろうか?

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想定外の事態。
昨夜、勝手にメカザウルス・ラルで地上に出たNo.0が、何者かと交戦、
その戦闘でメカザウルス・ラルは中破した。
一体何を考えているのか見当もつかない。余計な仕事を増やされたこっ
ちはまったくいい迷惑だ。

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何ということだ。信じられない。
真・ゲッターが、暴走した。
詳細をつづるほど心の余裕はない。
ともかく、負けたのだ。
No.0は、人間どもに負け、挙句の果てに奴らに捕らわれた。
いや、奴などどうでもいい。それよりも問題なのは、真・ゲッターだ。
ただでさえ強力な部隊である人間どもに、あの真・ゲッターを渡してし
まうとは!
あのひょうろくだまのバット将軍に散々罵られた。だが、腹が立ってい
るのは私だって同じことだ。
真・ゲッター…やはり、得体の知れぬ闇を秘めた機体だったということ
か。
だが、それを奴ら人間どもが扱いきれるのか?
ゲッター線の恐ろしさを、奴ら人間はまだ知らぬ。
知らぬままに、飲み込まれてしまえばいい。あの汚らわしい野蛮人め。

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ミケーネの再生戦闘獣・ダンテが死んだ。
私の開発した魔神皇帝のコントロール装置の稼動具合が気になり、メカ
ザウルス軍団の加勢とともに戦場に赴いたのだが…
その私の眼前で、ダンテはマジンガーたちに破壊された。
しかし、それよりも私の心胆を寒からしめたのは―
その場に居合わせたゲッタードラゴンに乗っていたのが、あのNo.39だ
ったということだ!
あれは、No.0の身体を、何らかの形で乗っ取ったのだ!
正直、怖気が振るった。
一度死し、精神だけで意地汚くも生き残り、なおかつ同類の身体を奪い
取り、再び己が肉体を得る…
ああ、何処まで恐ろしいのか、あの人間という種族の生存本能は!
狂っている、あまりに度が越している。
しかし、この私に何処までもはむかうあのバケモノは、このまま放って
はおけまい。
私が、決着をつけねばなるまい。
だが、誰があ奴に対抗できる?
わからない。しかし、あきらめるわけにはいかない。
あ奴は、私の同胞を殺すのだから。

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もはや、誰の指図も受けない。
帝王に問うこともしない。帝王は拒まれるに決まっているからだ。
あのNo.39を殺しうる、たった一人の人物。
それは、あの女龍騎士のみ。
彼女なら、あのNo.39を止められる。
キャプテン・ルーガに、No.39は抗しきれない筈だ。
彼女を再生する。
今度こそ、あのNo.39を過たず倒すために!

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キャプテン・ルーガ、No.39と交戦。
やはり私の見込んだとおり、キャプテン・ルーガは真の騎士だった。
くだらない情に流されることなく、恐竜帝国の剣となり楯となって彼女
は勇敢に戦ってくれた!
あのNo.39も相当なダメージを受けたはずだ、恐らくこのまま再び戦場に
帰ってくることもあるまい。
戦場に、キャプテン・ルーガがいる限り。
これで、我が恐竜帝国軍の大きな敵がまた一つ潰えたというわけだ。
元は私のまいた種とはいえ、正直ほっとした。
またあのNo.39の犠牲となる若者たちを見るのは、もうたくさんだ…

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明日で、長かった私の苦しみもようやく終わるだろう。
明日、人間どもに攻撃をかける。
彼奴らの艦に潜入し、情報収集にあたっていたキャプテン・ルーガも、
まもなく帰還、出撃に備える手はずになっている。
やっと、終わりだ。
やがて訪れるであろう勝利の火花を、私は捧げよう。
あの兵器どもに殺された戦士たちの魂のために。
これからはじまる、輝かしい恐竜帝国の未来のために。
そして、新たなる世界の地平で生きていく、次世代の子供達のために。
…それにしても、本当に長かった。
だが、これで、私は罪を償える。そういう気がする。
明日の戦いが終われば、少しは息がつけるだろう。
久々に、エドゥーリアたちの顔を見に行くのも悪くないかもしれない。
そうだな…あの子達が、我らハ虫人の中で、地上に生きる最初の世代を
生み出すことになるのかもしれない。
あの子等の未来のためにも、私たちは退くわけには行かない。

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