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◆ かなわぬゆえに、美しい「夢」〜最後の戦いの場へ
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大きなロッキングチェアーに、私は横たわっている。
ゆらゆらと心地よく揺れるその揺り椅子。その揺れにあわせながら、私はうたを口ずさむ…
今自分の腕の中にある、いとおしいモノを見つめて。
それは、私の「たまご」。
自分の顔より、一回り程度大きいくらいの…それは、私の「たまご」。
私が生んだ、私だけの「たまご」。
おくるみでしっかり包み込み、胸にぴったりとくっつけて、絶対に冷えないようにする。
私は、それをぎゅうっと抱きしめる。
私の吐息、私の体温、私のいのちを分け与える。
そうして、孵してやるのだ。
そうしたら、そこから生まれてくる…私の、いとおしい「子ども」が。
その子のために、私は歌う。うたを歌う。
卵の殻をとおして、それはきっとその子に伝わるだろう。
こころ安らかに過ごせるように、と。私の「子ども」が静かに眠れるように、と。
…私の作ったその小さな世界の中で、その子はどんな夢を見ているのだろう…?
その夢は、とても素敵でこころよいだろうけど…けれど、そろそろお目覚めの時間だよ。
おいで、早くこの世界へと。
…そうすれば、私はお前のために何でもしてあげる。
うたを歌ってあげる、お前のために。
ずっと抱きしめてあげる、お前のために。
「名前」をあげる、お前のために…!
ぎぃ、ぎぃ…かすかにきしむ、ロッキングチェアー。
そして、とうとうその時が来た。
「…!」ぴしっ、という音で、私は慌ててその「たまご」に目をやる。
真っ白な「たまご」の外壁に…ついに、ひびが入ったのだ。
今まで、私の「たまご」の中で眠り続けていた「眠り姫」が…とうとう、目覚めるのだ。
私の胸に期待と興奮が満ちていく。
私は瞬きもせず、彼女が殻を打ち破ろうとしている様を見つめる。
私の「子ども」がこの世に生まれ出る、その何よりも尊い瞬間を見逃すまいと…
が、内側から渾身の力を込め、ひびを押し広げ、殻のかけらを押し出した…その手。
その小さな両腕は、…白かった。
「…?!」私がその見慣れぬモノに驚いているうちにも、「たまご」はばらばらに砕かれていく。
白き腕の持ち主は休むことなく、自らの周りを囲っている薄い外壁を打ち壊していく…
そして、ぱきん…という乾いた音とともに、ひびだらけの殻は…静かに散らばっていった。
私の「たまご」だったモノ…そこには、思いもかけないモノがかわりに在った。
黒い髪。うろこのない皮膚。尾もなく、牙もなく。
そこに息づいているのは、私の…明らかに、「ハ虫人」の「子ども」ではなかった。
目を閉じたまま、私の胸に持たれこんでいるのは…異種族、奇妙な姿かたちをした「イキモノ」、…「人間」。
「人間」の赤ん坊のようだった。
生まれ出でた赤子の異常さに私は声を失う。
だが、私の心を衝撃と恐怖、混乱が支配していくその前に、さらなる異変がはじまった。
軽く身を丸めた、その「人間」の赤ん坊…その身体中が、まるで蛍のように光を放ち始めたのだ。
全身に柔らかな光をまとった赤ん坊…その光は、だんだんと広がりを増していく。
それと同時に、赤ん坊の身体に変異が起きる。
私の腕の中、その赤ん坊は…何と、どんどんと大きくなっていく。
短く弱々しい二本の腕は、まっすぐに伸び…誰かを抱きしめられるほどに、長く。
頼りなげについていた二本の脚は、やはりすうっと伸びていき…大地を踏みしめられるほどに、強く。
丸っこく何だかぽちゃぽちゃしていた胴体は、引き締まり、たおやかになり…困難を受け止められるほどに、たくましく。
大きめのパーツが乗っかっていた丸い顔も、だんだんと頬がそげていき、余計な肉が消えていき…見る者を惑わすことが出来るほどに、美しく。
乳児から、幼女へ。幼女から、少女へ。
まるで、おとなになる過程たる長い年月を、たったの数十秒で経験してしまうような…
みるみるうちに、私の「たまご」だったモノは…「人間」の、年若き少女へと変身(メタモルフォース)を遂げていた。
ほんのつい先ほどまでは私の腕の中だけで収まっていた身体が、今は…私とさほど変わらないのではないだろうか。
手に触れる、そのすべすべとした「人間」の皮膚の感覚に…私は、戸惑わざるを得ない。
私の目の前であっという間に成体まで成長してしまった、その「人間」…戸惑いながらも、私はなぜか彼女の姿から目が放せない。
…と、今までぐったりと閉じられたままだった彼女のまぶたが…ぴくり、と動いた。
そして、ゆっくりと開かれていく、二つの瞳…その瞳は、透明なきらめきを持った、黒い瞳。
その黒い瞳はしばしの間、呆けたようにぼんやりと自分の視界にあるものをただ映しているだけだったが…やがて、その視線が…すっ、と上向いていく。
その視線の上昇は、私の喉を通り、口元を通り、そして…私の目を見たところで、止まった。
その時だった。
一瞬不思議そうな表情をして、私を見つめていた彼女…その黒髪の少女は、私に微笑いかけてきたのだ。
にぱっ、と音のしそうなほど、あどけない笑み…
異種族とはいえ、その邪気のない愛らしさに、思わず私ははっとなる。
…そして、彼女は懸命に開いた口から、最初の言葉を発した。
「…るーがぁ…!」
「…!」
その、鼻にかかったような、甘い声。
私を見つめる、透明な瞳。
それが、私の中の惑いを一挙に吹き飛ばした。
かわりに胸に満ち溢れてくる、洪水のような感情の波…
どちらかといえば感情的に平板な自分のどこに、ここまで強い感情が隠れていたのだろう…と驚いてしまうくらいに、すさまじい感情の波。
その「人間」の少女をいとおしいと思う気持ち、抱きしめたいと思う衝動。
私は、その衝動に耐え切れず…その子を再び、抱きしめた。
やさしくその背をなぜてやる。なめらかな感触。うろこのない肌。
だが、とても心地いい。
その子もそうやってなぜられているのが気持ちいいらしく、くすぐったそうな笑みを浮かべている…
その子はどうやら、私のことをわかってくれているようだ。
私の胸に顔を埋め、何かを求めるようにすりよせてくる。
そして、何度も何度も私の「名前」を呼んでくる。
…だが。
「るーがぁ…」
「ふふ、『るーがぁ』じゃないだろう?…ねえ、私のことは、…何て言うんだった?」
私の「名前」を呼んでくるそのかわいらしい唇に、そっと指を当てて閉じさせる。
そして、軽くたしなめながら…そうではない、別の呼び方で私を呼ぶように言ってやる。
違う、そうではない…と。
私が、その子に呼ばれたい呼び名は…
「…」その子は、一旦きょとんとして…不思議そうな顔をして、唇をふさいだ私の手を、その両手でぎゅっと握りしめる。
大きな瞳をぱちぱちさせながら、私を見つめてくる…
そのしぐさすら、どうしようもなくいとおしく感じられてしまう。
「…!」
そうして、数秒の後…ようやく、その子は言ってくれた。
その花のような唇を、一生懸命に大きく…二回、開いて。
「…『まま』…!」
そして、顔中で笑う。その笑顔のまま、彼女は私の胸に顔をうずめてきた。
その言葉が、私の鼓膜を振るわせていく。私の胸を、思考を、じいんと痺れさせていく。
その快なる麻痺感覚の内側から、とてつもない感情の波がどっと湧き出てくる。
その激しさのあまり、涙が勝手に浮かんできた…
涙でにじむ視界の中に、黒髪の少女、「人間」の少女の姿。
「…!」
「ままぁ…!うふふ…!」
私は思わず、その子を全力かけて抱きしめていた。
すると、きゃっきゃ笑いながら、その子も私にぴたりと抱きついてきた。私とその子、触れている部分から伝わる…彼女のあたたかさ、いのちの熱を。
その熱が、私の中で確信を呼び覚ます。
ああ。
そうだ。
この子は、私の「子ども」なんだ。
私のいのちよりも大切な、私の「子ども」。
異形だろうが何だろうが、この子は、私の誰よりも大切な「子ども」なんだ…!
私の胸の中でうごめく、私の熱を、いのちのあたたかさを求めて身をすりよせてくるいとし子を…
私は腕(かいな)の中に抱きとめて、守りこんでしまう。
その子が、何処にも行かないように。
その子が時を経、おとなとなり、やがて私を捨てるだろう時が来ても、せめて…その残酷な別れが来るその時までは、この子を決して誰にも渡さない。この子は、何処へも行かせない…
だから、私は二本の腕(かいな)で抱きとめる。
やさしい呪縛、あたたかい結界。愛という牢獄。
「そうだ…ふふ、いい子だね…」
私のことを、そう呼んでくれるいとし子の頭を、私はやさしくかきなぜ…微笑いながら、ほめてやる。
私は再び揺り椅子を揺らめかせる…かわいいこの子が、心地よく眠れるように。
私の胸で。私の中で。
ぎぃ、ぎぃ…かすかにきしむ、ロッキングチェアー。
だが、私のいとし子は、そのきしむ音などまったく気にならない様子だ…
ゆらゆらと、規則正しく繰り返す、寄せては返す波のような揺らぎの中…彼女は抗えずに、すぐにとろん、とした目つきになってしまう。全身が脱力し、その身を全て私に預けてくる…
かわいらしい微笑みを浮かべたまま。
そして、うとうととまどろみだす私のかわいい子。
その寝顔を見つめながら、私はそっと…その耳元に唇を近づけ、静かな声でこう囁いた―
「私はずっと待っていたんだよ、お前を。…ねえ、keine、pleine、…」

「…!」
がばっ、と、掛け布を跳ね上げ身を起こす。
その最後の一言、最後の言葉を口にする前に…急な覚醒によって、キャプテン・ルーガの意識は現実へと引き戻された。
気がつけば、そこは薄暗い部屋。ベッドの中。
(…ゆ…夢、だったのか…?)
今まで目の前にあった風景、そしてそのそこここから触れた感覚のあまりのリアルさに、一瞬その当たり前のことすら疑ってしまう。
ゆらゆら揺れるロッキングチェアー。
そのさざなみのような感覚すらも、はっきりと思い出せるほどだ。
手のひらを広げてみると、軽く汗ばんでいる。
その手のひらは、さきほどまで触れていたはずだ。
私の「たまご」に。
私の「子ども」に。
私の、あの、異種族の…!
…だが、当然のように…広げた自分の両腕の中には、あの少女の姿はなかった。
「…っふふ…!」
キャプテン・ルーガの唇から、笑い声がこぼれ出てきた。
その鮮やかな金色の瞳から、つうっと涙がこぼれ落ちる。
「ふふ、あはは、あっははははは…!」
彼女は笑った。泣きながら、笑った。
その夢の、あまりの愚かさに。
その夢の、あまりの奇妙さに。
その夢の、あまりの甘美さに…!
それはきっと、自分の無意識の奥深く沈んでいた欲望。
この世で最も醜く、そして同時に美しい欲望。
キャプテン・ルーガは…それがただの夢に終わり、かなうことがないという現実を…こころから呪いながらも、同時にこころから感謝した。
そして、これが今生最後に見る夢であったことにも。
ベッドサイドに置かれた時計の針は、朝が来ていることを示していた。
もうすでに、今日という日は始まっているのだ。
キャプテン・ルーガの、最後の一日が。

がちゃり、という、金属が触れ合う音。
それを身につけ終えたキャプテン・ルーガは、全身鏡の前に立ち…自分の姿を、確認してみた。
「…」
鏡の中に映る自分は、すこし緊張した面持ちでこちらを見返している。
普段装備しているものとは違う、その銀色の鎧…少し重みを感じるが、不快なほどではない。
銀色に光る鋼鉄が左肩と胸部を覆い、二辺に分かれたひれのような部分が、腰の側面をそれぞれ守る。
いつも身につけている白いブレストアーマーと違って、着慣れない分違和感を感じるが…その鎧も、決して悪くはなかった。
きらめく豪奢な白銀色。左胸の部分にあしらわれた繊細な彫金。
流れるような曲線的なラインで縁取られるその鎧は、それ自体が十分に高度な芸術品とも言えそうだった。
(ふむ…悪くない、な)
彼女は鏡の中に映る自分の姿に満足げな微笑みを浮かべた。
自分でも、その武者姿が気に入った…美しさと強さが並存して感じられる。
…それは、自惚れじみた快感。
まるで、お気に入りのアクセサリーを選んで身につける時のように。
だが、彼女が今まとったのは、そのような甘やかなモノではない。
…その証拠に、彼女は微笑んでいても…その両の瞳から、悲壮な決意の色が消えることはなかった。
準備を済ませた彼女は、武器庫から早々に立ち去る。
…が、ちょうどそこから出てきたところを、彼に見つかってしまった。
「…ルーガ先生ッ!」
「!…ラグナか?…何だ、私に何か用か…?」
それは、キャプテン・ラグナ。いまや、肉体年齢は遥かに自分より上の…愛弟子の一人。
彼は師匠の姿を認めると、すぐに笑顔を浮かべて歩み寄ってきた…
「…?!」
「…どうした?」
だが、彼女の姿を見るや否や、ラグナは言葉を失った。
いや、正確に言えば…彼女のみにまとっている、白銀の鎧を視認するや否や、だ。
キャプテン・ラグナが驚くのも無理はない…
それは、呪われし防具。忌むべきジンクスをひきずる鎧…
「せ、先生…な、何を、何を身につけていらっしゃるのですか?!」
「…」
「そ、それは、『ぎ』…」
「…ああ、そうだ。…今から出向く、私の…最期の戦い。それにふさわしい衣装だと思ってな」キャプテン・ラグナの言葉をさえぎって、彼女は淡々とそう告げた。
「…!!」
その淡々と吐かれたセリフ…その口調の冷静さとは裏腹に、その意図しているものは明白…
そして、彼女がそれを冗談などで言っているのではない、ということも。
…そうでなければ、「最期の戦い」などという言葉は使うまい!
それを信じたくなどない。認めたくなどない。
だから…キャプテン・ラグナは必死に問う。焦燥感が、その言葉の端々ににじみ出る。
「せ、先生!…先生は…ま、また、こ、この、マシーンランドに帰ってきますよねッ?!」
「…」
「そうですよねッ?!そ、そして…また、私たちに、恐竜剣法を…完全なる恐竜剣法を、教えてくださいますよねッ?!」
「…」
キャプテン・ルーガの返答は、無言。
すなわち、それは質問の無視。黙殺。そして、問いへの否定…!
「…!!…ど、どうしてッ!どうして、黙っていらっしゃるんですかッ?!」
「ラグナ…いや、キャプテン・ラグナ」
「…?!」
キャプテン・ルーガは、その時初めて…「キャプテン」という肩書きをつけて、愛弟子の「名前」を呼んだ。
「…聞くがいい。このマシーンランド、恐竜帝国には、もはや…『裏切り者』が帰ってこられる場所など、ないのだよ…」
「?!」
「…それではな、キャプテン・ラグナ。達者で暮らせよ」キャプテン・ルーガのその言葉。
だが、彼がショックから立ち直るのを待たず、彼女はそういうだけ言って、その場を去っていこうとした。
「ま、待って下さい、先生!…わ、私も!私も、参りま…」
「…それは駄目だ、キャプテン・ラグナ。お前は、今回の作戦からはずれているはず」
彼の懇願も、にべもなく拒絶する。
「…」
「それに…」
ふっ、と自嘲じみた微笑みを浮かべ、まるで冗談ごとでも言うように…どこかおどけたような口調で、キャプテン・ルーガは、こう言って彼を黙らせた。
「…そんなに見たいのか、お前の師匠が同族を裏切り、あの…『人間』たちに与し、そして…『裏切り者』として処刑される様を?」
「…〜〜ッッ?!」
「はは…ではな、キャプテン・ラグナ…息災でな」
「る、ルーガ先生ッ!や、やめてください、そ、そんな…ッ?!」
己の破滅へと歩んでいこうとする師匠に、すがるように、懸命に、キャプテン・ラグナは呼びかける。
ようやく彼にも理解できた。
彼女が、今からはじまるであろう戦いで、何をもくろんでいるのかが…
だが、それは…完全なる恐竜剣法の伝承者、智勇双全、高潔なる女龍騎士としての彼女の「栄光」…その全てを犠牲にし、彼女自身すら貶めてしまう。
今まで人々が彼女に浴びせかけていた賞賛と敬意の声は、瞬時に怨嗟と憎悪の声に変わり、それを覆すことは出来やしないだろう…
そんなことは断じて許せなかった。
敬愛する師匠、有能なるキャプテン、そして…憧れの女(ひと)が、そのような運命をたどるなどとは。
「…行かねばならないのだ、私は…本来ならば、この場に存在してもいけない者なのだから。そして、どうせ滅せねばならぬ身ならば…」
しかし、その彼を…彼女は、まっすぐな瞳で見据え、とどめた。
穏やかな笑みすら浮かべて。
だが、決して何者にも侵されない、曲げられない、変えられない、強固な意志を、その金色の瞳の中に燃やしつけて。
「…私は、『戦士』として死にたい。『仲間』を守る、龍騎士(ドラゴン・ナイト)として…!」
「…!」
決然とした瞳。金色の瞳に、強い意志。
己の信念に生きる武人の、激しい闘志と沈着な精神…!
その瞳を覗き込んでしまったキャプテン・ラグナ。彼は、何も言葉を発することが出来なくなった。
その強い決意の光を消せるような、自ら望んで死地へ赴くキャプテン・ルーガを止められるような、そんな有力な言葉を、何一つ見つけられないままでいたから。
自分を見つめたまま、言葉を失ってしまった弟子に…キャプテン・ルーガは、最後に微笑いかけた。
怪訝そうな、困ったような微笑。懐かしいその表情。
いつも、自分たち弟子が無茶をしたり、無意味に猛ったりした時…それをたしなめる彼女が浮かべていた、あの微笑み。
…そして、かつん、という靴音。
その音にはっとなったキャプテン・ラグナが再び面を上げれば、そこには…きびすを返し、何処かへと去っていこうとする、師匠の姿。
おそらくは、メカザウルス格納庫へと。
戦場へと。
…そして、おそらく、…二度と帰らぬ、死出の旅…そして、彼女にとっては、二回目の…へと。
「あ…!」
「…」
「ま、待って下さい、先生ッ!」その背中に、思わず必死で叫んでいた。
「…」だが、彼女は振り返らない。ただ、ただ、彼女は前へ、前へと進んでいくだけ。
「せ、先生…ルーガ先生ぃいいいぃいぃッ!」
キャプテン・ラグナの絶叫。その叫び声には、すでに涙が入り混じっていた。
だが、それにもかかわらず、キャプテン・ルーガは振り返ることをしなかった。
キャプテン・ルーガは、もう迷わなかった。彼女の瞳に宿る、強い光…戦いへ赴く、戦士の力。
キャプテン・ルーガは歩きつづける。己が選んだ道を、最後まで往く為に。
キャプテン・ルーガは歩きつづける。たとえ、その結果が血と涙に彩られた未来だと知っていても…


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