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恋愛小説「パソコンと私。」


彼といまだに手の切れない理由。
それは,彼を通じてしかサイバースペースに「私」が存在できないから。


私は学校でもあるコンピューターをつかっている。彼(正確にいえば『彼ら』なのだが)は,言うならばプレイボーイだ。
生徒なら誰もが利用できるだけあって,様々なその『痕跡』が彼の背後には常に見え隠れしている。
私だけの『彼』ではないことを思い知らされる。
もちろん,家に変えれば私だけの『彼』が待っていてくれる。だが,彼には世界と交信する能力が備わっていないのだ。
電話線にもつながっていないし,モデムもない。
だから,私は誰にでも愛想がよく,そして誰とも一線を引いた彼との付き合いを続けざるを得ない。
彼が私達に対してやさしさを示してくれるところといえば,唯一起動時のMac OS画面で表示される「笑顔」のみなのだ。
その笑顔を今私は見ている。
やがて,いつもどおりのうわべだけのやさしい呼びかけも終わり,彼は沈黙した。
彼の心を示すディスプレーには,いつもどおり別の人間が残した『痕跡』が残っている。
"image_3_bmp""199912201555""Aim alias"…ちょっとした怒りを呼び起こされる瞬間だ。
それでも私には彼に何の文句を言う資格がない。それは,彼は私の所有物ではないことという動かしがたい事実から派生している。
どうにもならないのだ。
彼は,今時の機種ではないため動作も遅い。そしてよく凍りつく。
だが私は黙って『Netscape Navigator』を起動した。
『ぢぢーざーーざざざっ(人間語訳:ああ,わかってるよ,任しておいてよ』彼は自信ありげにプログラムを走らせる。
なんてしらじらしいんだろう。そういいかけて私は口をつぐんだ。
手段。そう,彼はただの手段なのだ。「私」という人格がこのサイバースペースに存在するための。
『じざっ(あっ)』彼がまた凍りついた。
『エラータイプ11”浮動小数点コ・プロッサがありません”』爆弾マークとともにエラー・メッセージが表示された。
私の歯が,ぎりっと音を立てた。この彼を,私だけのために,私だけのものにするためにめちゃくちゃにしてやりたい。
しかし,それは不可能なのだ。
私は,黙ってアップルキーとコントロールキーを押しながら電源キーを押した。

<続くのかなぁ>

*何度も書きますがフィクションです!!だからぁ、これはゆどうふじゃないんですってばあ(^^;;)