ドイツ語アルファベットで30のお題
〜getter robot another story編〜


"ß"――"der Schluß"(終わり)

(…殺す)
No.18は、傷だらけの身体を何とか叱咤し、必死で構える。
よろめく右足が、何か…ごりっ、としたモノを踏みつけた。
そちらに視線は向けない。もう二度と動かないのだから、気を向ける必要がない。
そんなモノに気を向けていれば、その隙に…こっちが、殺されてしまう。
No.18は、目の前に立つそれをにらみつけた。
自分と同じように、この部屋の中で…生き残っているモノ。
それは、全身血まみれだった。自分と同じように。
それは、黒い髪と黒い瞳をしていた。自分と同じように。
それは、黒い革のバトルスーツを身にまとっていた。自分と同じように。
それは、自分と同じモノだった。
自分と同じ、ゲッターチーム・流竜馬のクローン…
同じ身体、同じ顔、同じDNA。
違うのは、割り振られたナンバーだけ。
そして、それに割り振られたナンバーは、自分のモノよりも大きい…39だった。
No.39は、無表情な目でこちらを見返してきている。
今、自分もきっと、同じような目をして、相手を見返しているのだろう。
No.39の手には、ナイフ。
銀色のブレードは、濃い赤に汚されて。
今、自分のナイフもきっと、同じような赤をもって、汚されているのだろう。
50体の中の、残り2体。まったく、同じモノどうし。
(殺す)
もう一度、こころの中でつぶやいた。激闘の疲労にくらめく自分を奮い立たせるように。
No.39も、同じなのだろう。同じように、こころの中でつぶやいたに違いない。
自分も、No.39も、まったく同じモノなのだから―!
「…!」
「…!」
だから、最後に動くのも…まったくの、同時だった。






そして、刹那。
意識を砕け散らせたのは、No.18だった。






No.39が生き残ったのには、何の必然性もなかった。
ただ、同じモノ50体の中で、最も運がよかったのが彼女だったというだけだ。






彼女は、その強運をもってして、この世に生き延びる権利を得た。






そして、同時に。
彼女の同胞(はらから)である、49体の流竜馬のクローンのいのちは、そこで終わった。
その中に、No.18も入っていた。






彼女たちが死んだのにも、やはり何の必然性もなかった。







ゲッターロボ編・プロローグ。
第一章"birth"の幕間、ということで。