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青春Fire!〜知力・体力・チームワーク!〜(9)


翌朝。
殺人的にまぶしい太陽の光が、俺たちの網膜を焼く。
全国から集った49チームは、あっという間に1/3程度にまで減った。
負けてしまった代表チームは、もうすでに帰途に着いたらしい。
そして、ここにいるのは準々決勝に残ったチームだけ―
俺たち長野県代表・私立浅間学園チームも、その中に残っていた。
そして、俺は―
力強くそびえ立つ鋼鉄の塔、鈍い赤に塗り込められた日本一有名な塔を見上げていた。
ここは、東京タワー前に造られた特設クイズ会場。
第16回全国高等学校クイズ選手権・準々決勝会場。
「…」
「な〜リョウ〜、せっかく準々決勝までいったんだからさぁ〜」
そんな俺の横で、ベンケイがリョウに無責任な慰めをかけている声が聞こえる。
「もっと明るくいこうぜ?な?」
「…ほっといてくれ」
が、リョウは薄暗くそう言うのみ。
…どうやら、昨日「やっちゃった」ことがまだ後を引いているようだ。
しかし、それだけではない…
俺たち三人は、多かれ少なかれ疲労の色が隠しきれないほどに残っていた。
もちろん旅疲れ、見知らぬ土地に来た緊張もあるが…それ以上に、昨晩の見張りがきいていた。
俺たちは、昨日の夜中、三人交代でホテルのある部屋をずっと見張っていたのだ。廊下の影から。
しかしその部屋のドアは硬く閉ざされたままで、誰も出入りした様子はなかった。
つまりは、奴らはやはり、何もコトを起こそうとはしなかった、ってことになる。
無用に終わった見張りに、俺たちは疲れきっていた。
俺たちが目を光らせていることに気づいて行動を自重した、とも考えられなくはない。
だが…
俺の疑問は、晴れない。
何処を、って、そりゃもちろん―
「!」
俺の視界の端に、映りこんだ。
俺は、
疲労で頭がおかしくなっていたのだろうか、
それとも、馬鹿らしくも焦れていたのだろうか、
だが、
ともかく、
俺は、動いていた。
「…!」
「お、おい!ハヤト!」
そいつらに向かって歩き出した俺。
気づいたリョウとベンケイがかけてくる、にわかに緊張した声。
だが、俺は止まらない。
俺のにらみつける先には、奴らの姿。
奴らも、鬼気迫った顔をして近づいてくる俺に気づく。
もう、止められない。
「…何だよ」
「…」
そして、奴らの眼前で―立ち止まる。
神奈川県代表の、百鬼帝国の鬼ども。
鉄甲鬼。胡蝶鬼。自雷鬼。
ガンを飛ばす俺に対抗して、三人は俺をねめつけてくる。
「普通の」高校生を気取って、こんな場所まで着やがって。
ツノまでご丁寧に隠しやがって。
相変わらず、ダサい揃いの手作りTシャツ着やがって。
わけのわからないことしやがって。
―俺は、
思わず、口に出していた。
ずっと以前から、胸のどこかに引っかかりっぱなしだった疑問を。
「…何だ」
「?」
「お前らの目的は何だ」
一瞬、奴らの表情に戸惑いが浮かぶ。
知ったことか。
俺は、繰り返して問う。
「お前ら、一体…何を企んでやがる?」
「!」
「…」
背後に、息をのむリョウとベンケイの気配。
俺は、目線をほんの少しずらすことすらせずに、奴らから目を離さなかった。
胡蝶鬼が、軽く眉をひそめ、
自雷鬼が、嘲るように鼻を鳴らし、
鉄甲鬼が…きょとん、としたような、不思議そうな顔をした後で、
その後で―
不敵な顔をとりつくろってみせた。
「…その質問には、もう答えたと思ったがな」
「…」
「お前ら、一体何を勘違いしてやがるんだか―」
自雷鬼の野郎が、呆れたように言ってみせる。
「それに、お前らなんて眼中にねえんだよ、俺たちはな」
「…」
「…」
俺は、それを注意深く聴く…
その裏に潜むものがないか、探ろうとして。
リョウも、ベンケイも。
同じように、奴らに視線を注いでいるのだろう。
―しばしの、空白。
俺も、奴らも、無言のままでにらみ合う。
…そして。
「ふん…!」
「…」
奴らが、俺たちをちら、と最後に見てから、行ってしまう。
馬鹿にするような目で。
残されたのは、俺たち三人。
短い睡眠時間のせいでかすかにぼやけた頭では、気のきいた罵声も返せないまま。
「…」
「…畜生、わけわかんねぇぜ」
「…ハヤト?」
だが、そんな薄くもやのかかった思考能力の中で、俺はまだ考え続けていた。
リョウに声をかけられても、気づかないくらいに。
「…」
あいつらの目的は何だ?
百鬼帝国の奴らが、何故こんな大会に出ている?
あいつらの目的は、何だ―?
考え続けても、わからない。
いや、うすぼんやりと思うことはある。
いや、だが、ああ、けれど…そうなのか?
俺には、わからなかった。もう、何も。


「―おはよう、諸君!」
そして、開始時刻。
ぼんやりした俺たちの脳みそにはちょっときつい、河豚澤アナの気合いっぱいのご挨拶。
準々決勝が、いよいよ始まるのだ。
「準々決勝に勝ち進んだ勇者たちよ!一夜明けて、気分はどうかな?」
じりじり照りつける日光は黒いアスファルトに跳ね返り、地面からも俺たちを襲う。
東京は、長野より暑いな―確実に。
耐え難い暑さに、俺たちは思わずため息をつく。
「あれほどいた参加チームが、今はたったの16チーム、16チームだ。
嗚呼、諸行無常とはこのことか!」
その暑さにさらに熱を注ぐような、河豚澤の演技がかったセリフ。
俺たちは、もはや黙り込んで彼の言葉を聞く。
まわりから、そんな俺たちを撮影しているクルーたちの熱気。
「さあ、周りを見回してみたまえ。君たちの行く手を阻む、強力なライバルたちだ―」
そうだ。
目を上げ、周りを見れば…そこには、最初より遥かに数が減った参加者たち。
俺たちを含め、48人。
そして、その中に、あいつらもいる―
「だがッ!」
途端。
河豚澤のテンションが、跳ね上がる。
額に巻かれたハチマキの尾も、跳ね上がる。
「今日だけは、違う!今日だけは…その敵と、手を組んでもらうことになる!
―題して!」
にやり、と笑む。
「…『昨日の敵は今日の友!一蓮托生クイズ』ーッ!」
『―?!』
「では、ルールを説明しようッ!」
予想もしなかった河豚澤の言葉に、動揺する参加者。
そんな俺たちに、ルールの説明がされた…
要するに、参加チームを「ペア」にして戦うのが、この準々決勝のようだ。
もともと三人一組である俺たち参加チーム。
その参加チームを組み合わせる。
その時点で、早押しクイズが行われる。
一問につき1点で、誤答によるお手つきあり…お手つきは、マイナス1ポイント。
そして、そのペアとなった参加チームの合計ポイントが5点になったチームから、準決勝に進むということらしい。
つまり、ペアになった2チームの運命は同じ…
準決勝に進むか、それとも敗退か。
「では、各チームのリーダーに、それぞれこの箱からボールを引いてもらおう…それが2つのチームをつなぐ、運命の大きな分かれ道だ」
そう言って持ち出されたのは、上に手を突っ込む穴がついた派手な星柄の大箱。
河豚澤の呼びかけに、緊張が走る。
無理もない…正直、どのチームと組むか、というのは大きな問題だ。
ここに16チーム残ってはいるが、早押しの得意なチームもいれば、苦手なチームもあるだろう。
得意なチームと組むことになれば有利そのものだし、苦手なチームと組めば足を引っ張られる。
「まずは、秋田県代表、明田高校からだ」
「…」
最初に、秋田県代表が歩み出た。
緊張の面持ちで、箱に手を突っ込み…ボールを一個抜き出す。
そのボールには、「3」の文字。
続いて、岩手県代表…
各チームのリーダーが、順番にボールを引いていく。
そして。
「…3!決まりだ、三重県代表・伊勢島高校チーム、岩手県代表・森岡第一高校チームがペアになる!」
まずは、1チームの組み合わせが決まった。
決定を知らされた2チームの連中が、照れながら、緊張気味の顔で挨拶を交わす。
ペア決めが、連綿と続いていき…
「…次は、神奈川県代表、百鬼帝国青龍学園!」
「はい!」
奴らの番が、やってきた。
ダサいTシャツのリーダー・鉄甲鬼が、意気揚々と大箱に近づく。
手を突っ込み、取り出したボール。
「!」
「…5」
自雷鬼と胡蝶鬼の見守る前で、奴が引いたボールには「5」と記されていた。
…まだ、「5」は出ていない。
ふっ、と、そんなことを思った…その時。
「次は長野県代表!浅間学園チーム」
俺たちの番が、やってきた。
「リョウ!」
「…オッケー」
俺たちのリーダー、リョウが前に出た。
そして、おもむろに抽選箱に手を入れ―その中を探り、ひとつのボールを引っこ抜く。
が―
「…!」
「?!」
自分の手で抜き出したボール、そこに記されていた番号を見た途端。
リョウの顔から、血の気が引いていった。
はたから見ている俺たちにも、はっきりわかるほどに!
「さあ、何番だ?!」
急かす河豚澤に、リョウは恐る恐るそのボールを手渡す…
その時、俺たちの目にも見えた。
そのボールに書かれていた、番号が。
「―!」
何かの冗談か。それとも、神様のいたずらって奴か。
ベンケイが、思わず俺のほうに顔を向けた。
驚きで見開かれた目。
俺も、同じ目をしているのだ。きっと。
「5番!また1チーム決定だ!」
ああ、
そして、河豚澤が高らかに宣言する―
「…神奈川県代表・百鬼帝国青龍学園チームと、長野県代表・浅間学園チーム!」
刹那。
「?!」
「え…」
「ウソだろ…?!」
奴らの間にも、驚愕が走ったようだった。
何も言えないまま、リョウが俺たちのところに戻ってくる…
青ざめた顔には、ショックから冷め切れない、すまなそうな表情が浮かんでいる。
畜生、リョウ…お前のクジ運は一体どうなっていやがるんだ。
普段はじゃんけんでも棒アイスでもハズレまくるくせに、こういうときに限って…!
けれど、短眠で疲れきった俺の口は、ろくにそんな言葉も音に変えられなかった。
ただ、何も言わないまま、俺たちは絶望的な表情でお互いを見つめあう。
「!」
「…」
…だが。
背に突き刺さる邪悪な視線に、否応なく俺たちは振り返る。
精一杯の気力を振り絞り、奴らの挑戦的なまなざしに対抗する―
たった今、俺たちと一蓮托生の運命を背負うことになった神奈川県代表。
神奈川県代表・百鬼帝国青龍学園チーム。
「よりにもよって、か…!」
「…ふん!」
「畜生…」
お互いから、漏れたのは―敵意交じりの、軽い同様。
交わす視線も、敵視でしかなく。
他のペアが交わしているような、友好的な挨拶など…できるはずもない。
だって、ああ、俺たちは、
お互い、殺しあっている奴ら同士なのだから―
大げさな比喩でも何でもなく、マジに!
何かの冗談か。それとも、神様のいたずらって奴か。
何にせよ、俺たちは恨むぜ…畜生、なあ神様よ!




=====準々決勝・一蓮托生ペア( )内はチームリーダー名=====
1 和歌山県私立近々大学付属河山高校(辻北)&山口県立狩日高校(森藤) 
2 石川県国立沢金大学教育学部付属高校(大田)&岡山県立岡山東城高校(松本)
3 三重県立伊勢島高校(伊豆)&岩手県立森岡第一高校(千野)
4 大阪府立小手前高校(川吉)&佐賀県立佐賀西南高校(村下)
5 神奈川県私立百鬼帝国青龍学園(霧伊)&長野県私立浅間学園(流)
6 滋賀県立石達山高校(川村)&鹿児島県私立マ・メール高校(村松)
7 栃木県立鉄橋高校(松木)&愛媛県立東条高校(田富士)
8 広島県立十五日市高校(上田)&秋田県立明田高校(佐賀)