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青春Fire!〜知力・体力・チームワーク!〜(5)


『…何だと?!それは確かなのか、リョウ君!』
早乙女博士の大声は、受話器を持つリョウは愚か、その傍らに立っている俺たちにもはっきりと響き渡った。
その声に、一拍おいてリョウが答える。
「はい、間違いありません。奴らも俺たちを見て、こっちに気づいていましたから」
『ふむ…』
ホテルのロビー。公衆電話。
俺たちは、真っ先に早乙女研究所に連絡を取った。
予想もしない場所で恐るべき敵に遭遇した、そのことを早乙女博士に伝えるために。
「俺たちのことなどはじめッから相手にしていない、とか言ってましたが…」
『…そのまま鵜呑みにするわけにもいかんな』
「はい…」
電話の向こうで、早乙女博士が大きく息をつく音。
受話器のスピーカーを通り、こもった音となってこぼれてた。
『彼らは人間のふりをして、その大会にもぐりこんでいるのか?』
「ええ、神奈川県代表として…ツノまでごていねいに隠していましたが」
『何か騒ぎを起こすつもりなのかも知れんな』
「…」
早乙女博士の予想は、俺たちの懸念と同じ。
奴ら、百鬼帝国―
早乙女研究所の開発したゲッター線増幅装置を狙う、「鬼」の集団。
奴らは今までに強盗事件、殺人事件、街の爆撃など、ありとあらゆる悪辣な手段をそのためにとってきた。
こんな、こんな平和なイベントにも現れ、何かを為すつもりなのか…
『ともかく、三人とも用心したまえ』
博士の命に、俺たちは思わずうなずいていた。
『君たちゲッターチームのいのちを狙うともわからんし、何らかの攻撃を仕掛けてくることだって十分に考えられる』
「…」
『TV局に潜入することが目的なら…隙を見て放送局設備を奪取して、洗脳電波なんかを流す作戦かもしれん』
ごくり、と息をのむ音。多分緊張しいのリョウだろう。
『相手の考えが読めない以上、最大限の注意が必要だ』
「博士!それで、あの…俺たちはどうしたら?」
「あいつらぶっちめちゃってもいいんじゃないっスか?」
『…』
リョウ、ベンケイが、博士の指示を促す。
だが…予想に反して、帰ってくるのは無音だけ。
博士は、何かを考えているようだ…
そして、しばしの間の後。
『…いや、君たちはそのまま大会に参加するんだ』
「!」
軽く目を見開くリョウ。
思わぬ指令に、首を傾げるベンケイ。
しかし、博士の狙いは明確だ。
―相手の作戦が予測できない以上は、俺たちに取れる行動は今のところひとつ…
「監視」に他ならない。
『そして、出来うる限り彼らのそばを離れるな。いずれシッポを出すに違いない』
「…はい」
『わかったね、三人とも。…くれぐれも気をつけてくれ』
「ええ」
『研究所のほうでも、いつ何が起きても対応できるように態勢をとっておく。何かあったらすぐに知らせてくれたまえ』
「わかりました」
がちゃん、と音を立て、リョウは受話器をおく。
通話が終わった後。
俺たちは、お互いの顔を見合わせる。
「…」
「…」
「…まさか、こんなことになるなんてな」
「まったく…あいつら、生きていやがったのかよ!」
ベンケイが、半ば呆れたように吐き出す。
事実、彼らがあの状況で生き延びたとは…つくづく悪運が強い奴らなんだろう。
「どうする、リョウ?」
「どうするも何も…やるしかないだろう」
「そうだな。あいつらの出方を見るしかない」
そう言いながら、我らがリーダーは軽く肩をすくめた。
…まったく関係ないが、リョウが時々このアメリカ人みたいなジェスチャーをするのは何故だろう。
生まれは九州育ちも九州で、しかも親父さんが超絶頑固な古風石頭なのに。
何か、変なところがはっちゃけてるって言うか、変わってるんだよなこいつ…
「ハヤト…お前はどう思う?」
「何だ?」
と、そんな関係ないことをボーッと考えていたら、その当のリーダーに問いかけられた。
「あいつらが、何をたくらんでるのか」
「…さあな」
「…」
だが、そんなことを聞かれても、俺にもそいつはわからない。
さっき早乙女博士が話していたようなことも考えたが、この大会に「参加者として」入り込むことの意味がどうしてもわからない。
俺たちを狙うなら、研究所を狙い撃ちしたほうが早いだろうし。
第一、わざわざ正体を…俺たちにあんなあからさまにわかる状態でさらすはずがない。
TV局の放送設備を狙うにしても、別に警備員を殺して入り込めばそれですむ話で。
いや、ひょっとしたら、だが、もしや―
「…案外、マジに『高校生クイズ』がやりたくって来た、とかかも知れねえぜ?」
「馬ッ鹿な〜!あいつらがそんなタマかよ!」
割と本気でそう言ってみたのだが、ベンケイに鼻で笑われた…畜生。


ざわめきの中に、俺たちはいる。
様々な言葉、様々な方言、様々なアクセント、日本中から集ってきた高校生の中に。
「あ〜…めっさ緊張してるってー」
「うまく答えられんかったら許してや?」
「大丈夫大丈夫、いけるいける!」
「お前、それシャツちゃんとズボンに入れとけま!」
翌朝。10時、目本テレビ(めほんてれび)第四スタジオ。
とうとう、その時がやってきた。
段が作られ、それぞれに十数のブースが立ち並んでいる。
ブースにはそれぞれ出身都道府県・高校名が記され、参加チームを待っている。
もちろん、俺たちのブースも―
リョウ、ベンケイ、そして俺は、「長野県代表・私立浅間学園」のブースに座った。
―ちょうど、その時。
どこからともなく、音楽が聞こえてきた…


<♪ライバル(『ポケットモンスター』より)>


スタジオのスピーカーからではない、明らかに小出力な音量。
その曲の出所に、周りがきょろきょろしだす…
そして。
俺たちの前に、その主が現れた―!
「!」
「…よお」
気配を、感じた。
振り返ると、そこには奴らの姿―
鉄甲鬼。胡蝶鬼。自雷鬼。
俺たちゲッターチームを狙う、悪辣非情なる百鬼帝国の刺客…!
「…」
「…」
「…」
―だが。
俺たちは、その刺客を前にして…言葉を失ってしまっていた。
いや、二の句どころか一の句も継げない。
ぽかん、と口が開きっぱなしになってしまっているのを感じる。
「お、お前ら…」
「…」
リョウのかすれ声が、ようやく空白の時間を破った。
が、そのセリフの続きは発されることなく、再び奇妙な沈黙が隙間を埋める。
俺も、ベンケイも、何も言えないまま…ただただ、奴らをまじまじと見つめるほかなかった。
「何だ〜?何ジロジロ見てんだよ?」
一番ガタイがいい男、自雷鬼が…そんな俺たちを見下ろし、少しばかり眉根をひそめた。
いや、だって、これは―絶句するしかないだろう。
お前ら、ああお前ら、お前ら、何で―



何で、お揃いのTシャツで決めていやがるんですか?



ド派手な赤い布地に、黒のインクで昇竜のイラストがどどーん、と印刷され。
その上に、ぶっとい筆文字フォントで「青 龍 学 園」とななめに叩きつける勢いで銀文字が乗る。
そんなTシャツ、売っていない。というより、見たこともない。
もう、どう考えてもハンドメイドの香りがプンプンしている…
…まあ、いや、そりゃあ確かにこの「高校生クイズ」、三人揃った衣装で出てくるチームもたくさんいるけどな。
いるけど、確かにいるけど…
何で、よりにもよってそれがお前らなんだ?!
第一お前ら百鬼帝国の鬼どものくせに、何で「高校生クイズ」のお約束まで知っていやがるんですか?!

リーダーの鉄甲鬼はそれにも飽き足らないのか、それともそれが彼のファッションにおける主張なのかわからないが、その上にさらにストラップをつけたラジカセを肩から提げている。
さっきから流れ続けている(ショボい)BGMは、どうやらこいつから出ているようだが…
―もう、ため息もろくに出てこなかった。
あまりに、すごすぎて。
「!…はっは〜ん、そうか!お前ら、これがうらやましいのか!」
まさしく、「ふっふ〜ん」、という音がしそうなほど荒い鼻息を吹く自雷鬼。
その表情が自慢げに紅潮していたので、ジョークでもお遊びでもない…非常に驚くべきことだが、むしろ奴が本気で本音でそう思っているらしいことが見て取れた。
「俺たちの決断力、チームワークの証よ!テッちゃんが徹夜でアイロンあてて作ってくれたんだぜ〜!」
「おいおいそんなこと他人様に言うなよライちゃん、恥ずかしいじゃないかはっはっは!」

Tシャツを軽く両肩のところで引っ張って、うきうきと俺たちに見せびらかす自雷鬼。
そのお手製(!)のTシャツを褒め称えられ、照れながら、それでも胸をはり明らかに俺たちにそれを見せ付ける鉄甲鬼。
二人とも、マジだった。それぐらいは、簡単に見て取れてしまったから。
「…」
「…」
「…」
もう、何と言っていいかわからなかった。
…なんか、頭の中にメロディーが浮かんできたな。



♪テッちゃんが〜 夜なべ〜をして〜 アイロ〜ン か〜けてく〜れ〜た〜
こうこうせ〜いクイズ ひつよ〜うだろ〜うと せっせ〜と かけただよ〜♪




…ちょっと、字余りだな。
まあそんなどうでもいいことが頭に浮かんでいたわけだが、それもこれもやはりあのすさまじいTシャツを見てしまったショックだろう。
そして、そのショックも覚めやらぬまま、視線を横に滑らせると。
「…み、見るな!じろじろ見るなッ!」
「胡蝶鬼さんよ…あんたまで」
こともあろうか…この三人の中では一番冷静そうだった(そして一番冗談が通じなさそうだった)二号機の女、胡蝶鬼も。
そのボイン、ナイスバディを鉄甲鬼・自雷鬼とおそろいの手製のTシャツで包んでいた。
が、それは胡蝶鬼にとって愉快なことではないらしい。
「て、て、鉄甲鬼が!『絶対着ろ』って言うから…ッ!」
「…」
…と、彼女の真っ白な肌が真っ赤になるほど、恥ずかしがっていた。
「見るな」とばかりに俺をにらみつけているその表情は、むしろ「半泣き」にしか見えなかった。
「…まったく、あいつらの考えてることがなおさらにわからねえぜ」
ため息とともに、そう吐き出し…
「なあ、リョ…?!」
リョウのほうを振り向いた、その瞬間だった。
―俺は、引き続いて己の目を疑う光景を見た。
「…ぐう、ッ…すまない、ベンケイ、ハヤトッ」
「き、気にすんなよリョウ…」
ぴしゃり、と、床を打った水音。
頬をつたい、こぼれおち、流れ落ちていく―
…リョウが、泣いていた。
直立不動で両手を硬く硬く握り締め、下を向き…そのまま、大粒の涙をぼたぼたとこぼすリョウ。
そして、それを慰めるベンケイ…
それは、木っ端のような悲しみや苦しみが流させるものではなくて。
悔恨が、己の魂すらひねり潰すような重い重い悔恨が流させるもの。
リョウが、泣いていた。
およそ彼には似つかわしくない、それはどうしようもなく重い涙だった…
「ど、どうしたんだ、リョウの奴?」
面喰らう俺。
しかし、リョウは、やはりぼたぼたとそのでかい目から水をこぼしながら、荒い呼吸を割るように、必死に俺たちにわびようとする。
「ほ、本当にすまない…!何か忘れていると思ったら、『アレ』か…ッ!」
「そそ、そんな!」
「俺としたことが!『高校生クイズ』に出るのに、そろいのTシャツを作るのを忘れるなんてッ!
くそっ、
俺のアホ!俺の間抜け!俺の馬鹿野郎!
こんな初歩的なことを忘れてしまうなんて、俺はゲッターチームのリーダー失格だッ!」
「いやいや!も、元はといえば俺が誘ったのに、気づかなかった俺も悪いんだよッ!」
「いや、俺のせいだ!すまん、ハヤト、ベンケイ…!」




「…」



…何だかよくわからんが、我らのリーダーは―
俺たちゲッターチームのリーダー・流竜馬は、自分のリーダーとしての責務を果たせなかったことに、今とてつもなく胸を引き裂かれているらしい。
文字通り頭を抱えて懊悩しているリョウを、おろおろと慰めるベンケイ。
暑苦しい嘆き方をするアホに、それにおたつくアホ…
「…」
ため息が、勝手に出た。
ああほら、周りの奴らが見てるじゃねえか恥ずかしい。
とっとと自分たちのブースに行っちまおう。
「…いいから、早く席につこうぜ?」
そう声をかけてみたが、奴らその場から動こうとしない。
悔し涙を流すリョウを、ベンケイが必死こいてなだめているわけだが…
…俺は、ため息をついた。
仕方ない…か。
「し、勝負は格好で決まるんじゃないぜ、リョウ!」
「!」
俺の言葉に、泣きべそかいてたリョウの顔が、ぱっとこっちに向いた。
「今からのクイズで決まるんだ!始まる前から、気持ちで負けててどうするんだ!」
「…そうだ、ハヤトの言うとおりだぜリョウ!」
「…!」
俺の言葉に畳み掛けるように、ベンケイも賛同する。
…リョウの表情が、変わった。
「そうだ、そうだな…!」
先ほどまで、涙でかき消されていた、リョウの瞳に…
また、暑苦しい炎が燃えはじめた。
…いつもの、リョウだ。
「よっし、あいつらに負けてたまるか!行くぞ、二人ともッ!!」
「おーーーーッ!!」
いきなりテンションがMAXに跳ね上がったリョウは、意気揚々とリーダー風を吹かす。
応じるベンケイとともに、とっとと俺たちのブースに駆けていく…
その後姿を見ながら、俺はまたため息をついていた。
「…やれやれ」
俺も、ずいぶん丸くなったもんだな…
何だか年寄りじみてるが、そんな言葉がぴったり来る感じだ。
誰のせいか?
―そりゃあ、やっぱり…あいつらのせい、なんだろうな。


「…や、やっぱ、違うなあー」
「?」
「て、テレビで見てるのとさ、実際にここに座るのって、ぜんぜん違うよな?」
「…そうだな」
ブースには、小さい椅子が三つ。
そして、目の前には解答ボタン…
いよいよ、本線の場にやってきたのだ。みなぎってくる緊張感が、予選の時とは違う。
究極のマイペース野郎・ベンケイも、さすがにこの雰囲気に少し飲まれるぐらいのナイーブさはあるらしい。
「第一回戦は、普通の早押しらしいけど…知ってる問題が出てくればいいんだけど」
「大丈夫だ、あんだけ予習したんだから!」
「…おい、お前ら」
「ん?」
その高ぶる緊迫に飲まれてか、大切なことを忘れそうになっているチームメイトに、俺は言った。
「何だ、ハヤト?」
「…あいつらのこと、忘れるなよ」
そう言って、あごでしゃくる。
「!」
斜め前。
神奈川県代表・私立百鬼帝国青龍学園。
「…」
「…」
「…」
俺たちは、奴らをねめつけた。
他のどのチームでもなく、奴らだけを。
「あいつらに注意しろ、って言われてもよ…具体的に、どうすりゃいいんだ?」
「…ともかく、相手の出方を見るしかないな」
「…」
リョウの慎重論に、俺もうなずく。
ともかく、俺たちの打つべき一手は…相手がどう行動するか、それにかかっているのだから。
…と。
ステージ前方に、一人の男が小走りで出てきた。
丸めた台本を手にした彼は、おそらくAD(アシスタント・ディレクター)。
「―!」
「はじまる…!」
誰かがそうつぶやいた声が、耳に響いた。
「えー、それじゃあ、皆さん!そろそろ収録を始めますー」
ADのせりふに、かすかにざわつく周囲。
緊張感が、じわりじわりと周りの連中の顔にあらわれていく…
我らがリーダーはもちろんのこと、マイペース野郎のベンケイですら、多少。
無理もない。
…実を言うと、俺自身も、ちょっと顔が強張っていた。
「河豚澤(ふぐさわ)アナが入ってくるところから収録します…
それでは皆さん、全力を尽くして、がんばってくださいね!」
そう言い終えると、ADはいそいそとステージから降りてしまう…
そのステージの端で、また別のADが大きく手を振っているのが見えた。
大きく手を開き、振り下ろす。「5」。
振り上げると、今度はその手が「4」を示している。振り下ろす。
そして、「3」、「2」、「1」、
―「0」。



「―FIREEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEE!!」



空気を引き裂くような、雄たけびが―スタジオに響き渡る!
造られたアーチから、スモークが吹き荒れる!
そして…そのスモークに浮かぶ黒い影。
黒影は見る見るうちにその濃さを増し、やがて―
若き名司会者・河豚澤朗(ふぐさわ・あきら)アナの姿になる!
トレードマークのハチマキ姿。赤いジャケット、黒縁眼鏡。
会場の視線を、テレビカメラの視線を独り占めにして、スポットライトを幾重にも浴びて…

「ようこそ!」

河豚澤アナの、語りがはじまる。

「激しい地方予選を勝ち抜いた、全国49チームの若き獅子たちよ!」

ライトの熱線で、じりじりと暑い。
室内にもかかわらず、まるで照りつける太陽の下のよう。
そう、まるで、あの時の…中部予選の時のようだ。

「この『高校生クイズ』全国大会を勝ち抜き!優勝旗を手にするチームは―」

一台のカメラが、その向きを変える。
参加チームのブースがずらりと並ぶステージに…俺たちのほうに。

「この中にいる!」

斜め前。
神奈川県代表・私立百鬼帝国青龍学園。

「さあ、周りを見回してみるがいい」

俺たちは、奴らをねめつけた。
他のどのチームでもなく、奴らだけを。

「そこにいる、同じ高校生の若者たちが―」

奴らが、振り返る。
俺たち、長野県代表・私立浅間学園。

「君たちとしのぎを削る、まさにライバル!」

奴らも、俺たちをねめつけた。
他のどのチームでもなく、俺たちだけを。

「それでは…正々堂々と戦ってくれ!君たちの健闘を祈って…」

河豚澤が―拳を高く高く突き上げる!

「ファイアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」
『ファイアアアアアアアアアアアアッッ!!』

絶叫。
河豚澤の絶叫に、会場中の高校生の絶叫が…絡まる(でも、俺はどうもノリきれなかったので、言わないでおいた)。

「それでは行くぞ!…全国大会、第一回戦!」

「―名づけて、『BATTLE LAND』!48問限定の早押しクイズだ」
固唾を呑んで、聞き入る俺たち。
150人近くいるはずのスタジオが、静まり返る。
が…その空気が、次の河豚澤の発言で破られた。
「早押し問題、お手つきなし。1問正解した時点で、そのチームは勝ち抜けとなる!」
48問、早押しで勝ち抜け…
何てことはない、今この場にいるのが49チームだから、第一回戦で落ちるのは1チームだけだ!
そう誰もが思い、思わず安堵のため息を漏らした…その瞬間だった。
「―ただし!」
ぎらり、とスタジオのライトを跳ね返した、黒縁眼鏡。
河豚澤は、高らかにこう宣言した―




「三分間、誰も正解できなければ!その問題はキャンセルされ…第二回戦に進む椅子も、ひとつ消えることとする!」