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青春Fire!〜知力・体力・チームワーク!〜(13)


「えーっと、あ、アレはですね…と、友達と一緒にいた時で、」
東京から長野に帰ってきたのは、もうすっかり日も落ちたころだった。
浅間山・早乙女研究所も、長旅(?)の後にこうしてみれば少し懐かしい。
俺たちは、無事と健闘を喜ぶ早乙女博士やミチルさんの歓迎を受けた。
しかし、それもそこそこに我らのリーダーが真っ先に取り掛かったのは、実家への言い訳の電話だった。
第二回戦で親父さんに電話をかけてクイズをやらねばならなかった、そのフォローの電話なのだが…
「それで、ちょっと賭けをやってて…
じ、実家に電話してクイズ出して、答えられなかったほうが負けっていう…」

どうやら、リョウは嘘をつく方針で行くようだ。
ちゃらちゃらとクイズ番組なんぞに出たということを知られるとまずいとでも思ったのか、作り話を必死に展開する。
「…リョウの奴、アッホだな〜」
…と。
決死の覚悟で(準決勝並みに真剣だ)父親との電話に挑んでいる我らがリーダーをちらっ、と見やり、ベンケイはそうあっさり言ってのけた。
ソファにどっかりと座り込み、スナック菓子をぼりぼり喰うその様は、すっかり日常どおりのものだ。
「どうせTVを親父さんが見ちまえばよ、一発でわかるのに〜」
「まあ、あのシーンがカットされてるかもしれんし、あの親父さんなら高校生クイズなんて見ないかもしれないぜ?」
「え〜、そいつぁちょっと面白くねぇなあ…俺、放送日とか電話で教えちゃろうかな?」
「…やめとけよ、リョウさんがマジで卒倒するぜ」
よからぬことを言うベンケイを、俺は軽くたしなめる。
もしそんなことでもした日には、ゲッターチームのなかで殺し合いでもおきかねない。
「あっ、お前も喰う?」
「…美味いか?それ」
「うん、まあまあ」
だが、俺の言うことを真剣に聞いているのかいないのか…ベンケイは、能天気に喰っているスナック菓子の袋を押しやってくる。
こういうジャンクフードがこいつは好きだ。
俺は、そんなに好きでもないが…まあ、多少もらっておいた。
ざくざくしたかけらを口に放り込む。
塩辛い、合成調味料の味がする。
まあ悪くはない味だ。そんなにたくさんは喰えないけれど。
手づかみでもらった分を喰い終え、小さな粉がついた手をぱん、ぱん、と払う。
けれども油で揚げたスナック菓子だ、手がべとつく。
ハンカチでちょっとぬぐおうか、と思い、俺は何の気なしに手をポケットにやった―


「…!」


その時。
俺の手に、硬くて冷たい感触が走った。
金属の硬さ。金属の冷たさ。
それは、ゲッター光線銃…
あの時、結局使うことのなかった、結局使う必要のなかった、ゲッター光線銃だ。
「…」
俺は、あの時、この光線銃を隠し持ち、あいつらの様子をうかがっていた。
もしあいつらが何か怪しい動きをすれば、いつでも撃ち抜けるように…
嗚呼。
けれども。
俺たちは、間違っていたんだ。
あいつらは、最初から言っていた。
…「お前らは勘違いしている」「お前らなんて相手にしていない」。
つまりは、俺たちが思い込んでいたように「何かをしでかす」つもりもなく、「何かをたくらむ」こともなく、
あいつらは高校生クイズで優勝することを…それは、他の48チームとまったく同じ目的…胸に、東京にやってきたのだ。
あいつらは、最初からそう言っていた。
信じなかったのは、俺たちのほうだ。
俺たちはあいつらを信じず、はじめから疑ってかかった。
答えは、簡単だ。
―あいつらが、「鬼」だから。
あいつらが、百鬼帝国百人衆だから。
信じられない。信じられるはずがない。信用することなんか、出来なかった。
嗚呼。
それでも、あいつらは―


「…同じ、『高校生』…か」
「ん?ハヤト、なんか言った?」
「…何も」


俺の独り言を耳さとく聞いたのか、ベンケイが聞き返す。
俺は首を振り、ソファから立ち上がる。
―窓の外に目をやれば、そこには満天の星空。
(そう言えば、東京では夜空なんて見上げなかったな)
そんなことを思い起こした。
あいつらの見張りだのなんだので、そんな気すら回らなかった。
それほどに、俺たちゲッターチームは百鬼の連中の存在に捕らわれていた…


そして、こんな答えの出ない、出るはずのない問いが俺の頭に浮かぶ。


もし。
もし、あの時、
あいつらの動きが、俺たちの目に
「何か怪しげなもの」に見えていたら。

俺は撃ったんだろうか、このゲッター光線銃を?
以前はどうあれ、その時は何の悪事すらもくろみもせず、
「思い出」をつくるために、「高校生」としての「思い出」をつくるために
あの場所に来た、三人の「高校生」を―


考えても、無駄な問いだ。
クイズとは違う、答えの出せるはずのない、蓋然性の無い問い。


けれども、俺は知っている。
結局は、この考えても無駄な問いが―俺たちの戦いには、いつも付きまとっているのだ、ということも。


(―まあ、ともかく)


俺は、窓の外の星空を見つめ、
この数日の疲れを一挙に吐き出すように、ゆっくりとため息をついた。


ともかく。
少なくとも。


少なくとも、俺の、
俺たちの心の中には、「思い出」が残った。
皮肉にも、敵味方として分かれて戦う、
あの極悪非道な百鬼帝国の手先どもと、同じ「思い出」が。
「高校生」としての「思い出」が。


真夏の太陽、あの熱気、
燃え滾るような光に染め上げられた、真っ白な「思い出」が―




ALL JAPAN HIGH SCHOOL QUIZ CHAMPIONSHIP
マイオンスペシャル・第16回全国高等学校クイズ選手権

優勝校・愛媛県立東条高校
準優勝校・鹿児島県私立マ・メール高校
第三位・滋賀県立石達山高校

参加チーム・参加人数
北海道大会 688チーム 2064名
東北大会 1084チーム 3252名
北陸大会 705チーム 2115名
関東大会 8321チーム 24963名
中部大会 2289チーム 6867名
近畿大会 2099チーム 6297名
中国大会 1079チーム 3237名
四国・岡山大会 721チーム 2163名
九州大会 1265チーム 3795名
沖縄大会 265チーム 795名
計 55548人




A friend is, one might say, a secondself.
Cicero

友人とは第二の自分だ、と言えるかもしれない。
キケロ