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五千円以内で幸せになる方法

7、よいトレペを使う

 唐突ですが、あなたのおヒップのご調子は万事快調で御座いましょうか。
普段は二つにぱっくり割れるほどの
激務に耐え忍んでおられる、文字通り「下」働き役の彼。
そんな彼をいたわり幸福を感じるというのが
本日の主眼で御座います。
 子曰く、『危険は厠上にあり。』
おヒップの二大義務のひとつ「排出」
(もうひとつは桃色(エロ)関係なので今日は特に記さない)
を執り行うこの厳粛な場において、
手酷い負傷をされる方も多いのではないでしょうか。
ダイヤモンド・ダスト級のハードな生産物排出に伴う流血、
本来とは違う挿入口としての使用を
したための裂傷など、その原因はさまざまであるが、
我々が見逃しがちなおヒップに対する伏兵をここで紹介する。
 中国語で「手紙」、
トイレットペイパー(通称トレペ)である。
 艱難辛苦の排出を終え、
ほっと一息つかんとするおヒップにじわりじわりと迫る。
何の考えもなしに力をこめておヒップ清掃に取り組んだ者は、
例外なくくぐもったうめきを
約1u四方のトイレに響かせることになる。
これは、低質のトレペを用いたためである。
 そう、トイレットペイパーにはくっきりと明確な階級が存在する。
いかにも「やさぐれてるゼ、俺」といった、
手にざらつく低級トレペ。
片や「ワタクシ、じいやのお手元で育てられましたの」風の
箱入り高級トレペ。
その中間に庶民トレペがひしめいている。
そのおヒップさわりの違いは、一見、
もとい一拭きすれば一目…いや一ケツ瞭然。
やさぐれものの低級トレペはどうやら
「自分は、誇り高きトレペである」という
自覚が無いようで、あくまで「紙」であろうとし
柔軟性を身に付けようとはしない。
したがっておヒップ清掃にあたっては、
一度手でもむというお灸を据えて、
そのガチガチな態度を軟化させておく必要がある。
この手の低級トレペは、予算削減の波を受けた公的施設に多い。
したがって私の通う大学(国立)のトイレ(個室)では、
日々彼らに体罰を加えてから清掃に取り掛からねばならないという
悲惨な状況である。
 そこへいくと高級トレペは一味も二味も違う。
まずかれらの多くはフレグランスを
体にまんべんなくふりかけて、
香りによる自分の演出を試みている。
「たかがケツ拭き紙が生意気なあ!」という向きも
おられるとおもうが、まま、ここは抑えて。
ほら、美女がシャネルの5番を愛用するのと
同じと考えていただきたい。
そして次に柄。
バラやハート、果てはマンガのキャラクターなどがみだれとぶ。
「キ○ィちゃんでケツがふけるかあ!」という向きもおられると思うが、
まま、美女が派手なプリント柄を着たがるのと
同じと思ってほしい。
そしてとどめは凸凹である。
なんと彼らはおヒップへの影響をかんがみ、
凸凹をつけることにより優しいタッチを与えようというのだ。
「それが意味無いっちゅうんじゃあ!」という向きも落ち着いていただきたい。
美女はたいてい「でっぱり」と「くびれ」がはっきりしているという
事実と同じと考えていただきたい。
 さて、賞賛はこのくらいにして、いよいよ使用に取り掛かりたい。
近所のスーパーでは4個195円。
やはりこの手のものは少量売りが基本なのであろうか、
隣に置いてある16ロール入り295円もこの手の
営業努力は見習ってほしい。
 買ったら1ロールを厠に置いておこう。
残り三つは部屋に置いておくとティッシュとして
非常に重宝である。
 「んむ」時が来たようである。
静かにトイレのドアを開け、スムーズな排出を心がけられたい。
慌てるのは何事においてもよろしくない。
どうか穏やかにことを済ませていただきたい。
 そして清掃。
指にふわりとまとわりつく、少し媚びたような肌触り。
やわやわと少し凸凹をつぶしてみる。
それさえも心地よい。
そしてファーストコンタクト。
赤子の頬に軽く口づける程度の力で。
水分だけなら、もうそれでよい。
…そしてどんなに名残惜しくとも
はかなく役目を終えたトレペを
もう一度瞳にとどめようとしてはならない。
かつての哲人曰く、
「老いた恋人は、見るに忍びない」ものだからだ。