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<♪ヒャッキーロボ!(『ヒャッキーロボG』オープニングテーマ)>

ガン! ガン! ガン! ガン!
若いいのちが 真っ赤に燃え〜て〜
ヒャッキースパーク〜 そ〜ら〜たか〜く〜
見〜たか〜 合体〜 ヒャッキーロ〜ボ〜だ〜
ガッツ! ガッツ! ヒャッキーガーッツ!
みーっつ〜の〜こ〜ころ〜が〜 ひとつになれ〜ば〜
ひ〜とつ〜の〜正義は〜 百万パーワーアー
あ〜く〜を許〜すな〜 ヒャッキーパ〜ン〜チ〜
ヒャッキ! ヒャッキ! て〜い〜こ〜く〜 ヒャーッキーロボ〜♪



ヒャッキーロボG 第二話 百鬼帝国!将軍への道


「さて、」
改めて、鉄甲鬼は胡蝶鬼に向き直った。
「…」
「もう一人、あのヒャッキーロボGを動かすためのパイロットが必要だ」
生真面目な表情を崩さぬまま、鉄甲鬼は告げる。
これからこのヒャッキーロボGで戦うにあたり、絶対に欠かせないもの…
それは、三人目のパイロット。
鉄甲鬼と胡蝶鬼二人だけでは、ヒャッキーロボGのパワーは半減してしまう(ご本家ゲッターロボGと同じく)。
そのため、ともにヒャッキーロボGを駆る勇敢で有能なパイロットが必要なのだ…
…が。
そんな真剣な内容にもかかわらず、それを聞く胡蝶鬼は何か妙だ。
半ばうつむいたまま…何かをこらえているようだ。
少なくとも、鉄甲鬼の話を聞いているようには見てとれない。
「俺と、お前と、あと一人…そいつもやはり、百鬼百人衆から選ぼうと思う」
「…」
「そこでだ…俺が目をつけているのはだな、」
「…」
「…胡蝶鬼。お前、俺の話を聞いているのか?」
「ああそうだ、と言いたいところだがな、気に喰わないことがあってな」
と、とうとう耐えかねた鉄甲鬼が、いらつきを抑えながら問うたところ…胡蝶鬼から、思わぬ答えが返ってきた。
「気に喰わないこと?」
お前の造ったロボットのダッサイ『名前』はもういいとしよう。我慢する。我慢して操縦しようじゃないか」
「…(そんなにダサイのだろうか)」
お前がいつもラジカセで音楽を流しているのももういいとしよう。我慢する。我慢しておいてやろうじゃないか」
「…」
「…だが、」
内心ちょっとショックの鉄甲鬼を解することなく、矢継ぎ早に苦情を申し立てる胡蝶鬼。
押さえつけられたその声は、まだ平静と呼べる類のものであったのだが…
しかし。
次の瞬間、声色はおろか表情までがらッと変わった。
「真剣な話をしているときにその歌は止めろその歌はあッ!」
「…えー?」
「『えー?』じゃない『えー?』じゃ!
何でよりにもよって♪とっとこハム太郎(『とっとこハム太郎』より)なんだッ!!
胡蝶鬼が怒るのも無理はない。
そう、ただいま鉄甲鬼のラジカセが高らかに歌い上げているのは、あの小動物が主人公のオープニングテーマなのだ。
100%、いや1000%ふざけていると思われても仕方があるまい。
♪だ〜いすきなのは〜 ひ〜まわりのタげぶぁッ!
「…止めろ、と私は言っている」
「く…天才は常に理解されない」
「ハム太郎でなど理解せんでもいい」



<♪めぐる季節(『魔女の宅急便』より)>


…鉄甲鬼をレバーに効く強烈右アッパーブロウで説得した胡蝶鬼。
何とか次のBGMは許容範囲内らしい、どうやら落ち着いてくれた模様だ。
「…」
「…」
「で、話の続きだが…」
「目をつけている奴がいるのか?」
「ああ。こいつだ」
腹をさすりながら、鉄甲鬼は一枚の写真をポケットから取り出した。
その写真を手渡された胡蝶鬼が、視線を走らすと…
「…!」
そこには、見覚えのある男が写っていた。


「…何?」
「だから、俺たちと一緒にゲッターチームを倒そう、と言っているんだ」
「ふん、何故…この俺が、お前らなどと組んで戦わねばならん?」
鉄甲鬼と胡蝶鬼を前にしたその男は、精悍な表情を歪めて冷たくそう言い捨てた。
「この、名門…自雷一族の末(すえ)、自雷鬼様が!」
男の「名前」は、自雷鬼。
百鬼帝国でも指折りの名門、自雷一族の跡取りである。
もちろん、彼は血筋だけでのうのうと百鬼百人衆に選ばれたただのボンボンではない。
大斧を振りかざす強力、幼い頃より育まれた知力、そして人をひきつけるカリスマ性を備えた、まさにエリートなのだ。
それ故、鉄甲鬼も彼をヒャッキーロボGのパイロットとして見出したのだが…
それを打診した彼から返ってきたのは、先ほどのようなすげない返答だった。
「…」
「…」
「俺は、そのうち自分ひとりの力でゲッターを倒してみせる。助力など不要だ」
「助力じゃない。俺たち三人の力をあわせて戦おう、と言っているだろう?」
「お前一人だけで何ができるってんだ!今までゲッターチームに何人の百人衆がやられた?!
それを考えろ!…一人でいったって、それこそ無駄死にだ!」
「あんな奴らと一緒にするな」
説得しようと試みる鉄甲鬼に彼がたたきつけるのは、やはり拒絶。
彼にそうさせるもの…それは。彼の夢だった。
「俺は、ゲッターチームを倒し、将軍になる。死んだ父のような、立派な将軍に…
そのために、俺は絶対に負けられない!」
自雷鬼の家系である自雷一族が、何故に名門か。
それは、その家系より多数の有能な軍人を輩出している故である。
そして、自雷鬼の父…自雷将軍も、また有能な将軍だった。
しかし、その父親である自雷将軍は…数年前、ある謀反の罪によって処刑された。
おおっぴらに語る者こそいないものの、それは明らかに陰謀でしかなかった。
自雷将軍に無実の罪をかぶせ、殺し、排除するという、薄汚い陰謀…
そして、その陰謀の糸を引いたのは、ブライ大帝の参謀として今実権を握っている、あのヒドラー元帥であると言われているが…
父の名誉を回復し、父のように立派な将軍になる。
それこそが、自雷鬼の戦う理由だった。
「絶対に負けられないのなら!なおさら、俺たちといっしょに戦ったほうがいいだろうが!」
「嫌だね…そうすれば、手柄も三等分ということだからな」
「し、しかし!無駄死にするよりずっとマシだろうが!」
「はっ…鉄甲鬼よ、ヤキがまわったか」
だが。
懸命に説得しようとしていた鉄甲鬼、彼の我慢も…自雷鬼の侮蔑的な言葉によって、限界が来てしまう。
吐き捨てられたそのセリフに、かすかに鉄甲鬼の顔色が変わった。
「何…?」
「それとも、自分の力の無さがようやく理解できたというわけか?それで、胡蝶鬼に泣きすがったというわけか」
「…!」
端正な表情に、ぱあっ、と怒りの色が走る。
瞳の黒が、かすかに邪悪さを映し込んだ。
隣に立つ胡蝶鬼が、まずい、と思い間に入ろうとするも…その鋭い目つきで、制された。
「図星か?鉄甲鬼。ひとりじゃ怖くなって、道連れでもほしくなったのかよ」
「…貴様、」
「やるか、鉄甲鬼…?!」
なおも挑発的な言葉を放つ自雷鬼。
鉄甲鬼との間の距離を、用心深くじりじりと詰めていく。
鉄甲鬼の表情が、なおも険しくなっていく…
が、その時。
その表情が、ぱっ、ともとに戻った。
あまりに突然に。
そして鉄甲鬼の言うことには、
「…あ、ちょっと待ってくれ」
「…?」
腰のポーチから何かをがさごそ探し出して、
「…」
律儀にタイトルと録音した日付までレタリングシールで入れたカセットテープケースから取り出して、
「…」
その挙動を無言で見つめる二人の前で、それをラジカセのデッキに入れ替えて、
「お、おい…」
ばしゃんとデッキのふたを閉め、準備万端とばかりに右手の人差し指を伸ばす。
「よし、オッケー!」
…かしゃっ。


<♪立て!闘将ダイモス(『闘将ダイモス』より)>


「よっしゃ来いーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!」
「お、お前はアホかあああああああああああああああああああああああ!」

「…」

ひときわ長く響くトランペットの音、それに続くイントロメロディの後。
鉄甲鬼の雄たけびと胡蝶鬼のツッコミが、ハーモニーを為して響きまくった。
対する自雷鬼は、ぽかん、と立ち尽くしている…
曲を変えたことでやたらテンションが高くなった鉄甲鬼、軽やかにステップを踏みながらファイティングポーズなどとったりしている。
が、自雷鬼は動かない…何故か動かないまま、鉄甲鬼を見つめている。
「ほら、どうした!かかってこい!言ってわからんなら、殴ってでもわからせてやるッ!」
「…」
「どうした自雷鬼!何を…」
「…い」
…と。
その時、それは唐突に起こった。
自雷鬼の表情が、途端に笑顔になった―
「いい…!」
「…?!」
…ああ。
嗚呼。嗚呼。
聞き違いであってほしかった。
だが、そんな胡蝶鬼の目の前で、感嘆したような笑顔を浮かべ、自雷鬼は力いっぱい言うのだ。
「いいな、それ!」
「は、はあぁ?!」

思わず叫び声をあげてしまう胡蝶鬼。
しかし、自雷鬼は本当に感服しているようで…何かうらやましそうな視線で、鉄甲鬼のぶら下げているラジカセを見ている。
「…!」
「いいなそれ、何だか随分雰囲気出してるじゃないか!」
「だ…だろ、そうだろ?!」
一方、鉄甲鬼はこれまたそんな自雷鬼の反応に感動した模様で、あっという間に態度が変わった。
ストラップでさげたポータブルラジカセをうれしそうに見せびらかしながら、にこにこにこにこしまくっている。
「なかなかいいじゃないか、何か燃えてくるよな」
「だよなだよな!…く〜ッ、やっぱりわかる人にはわかるんだなあぁ!」
「…」
もはや驚愕でハニワ状態になってしまった胡蝶鬼。
彼女の前で暑苦しい男の友情が燃え上がる。
「ふっ…鉄甲鬼、さっきの話、呑もうじゃないか」
「!…本当か、自雷鬼!」
「確かに、お前の言うとおりかもしれん。
お前の造ったロボットが、ゲッターに劣らないなら…賭ける価値はあるかもしれん」
「じゃあ…!」
「ああ!…ただし、条件がある
「…条件?」
問い返す鉄甲鬼に、自雷鬼はにやり、と笑い―
「…俺が操縦する時には、俺のテーマソングをかけてくれ!」
照れも恥ずかしげもなく、彼は満面の笑顔でそう言いきった。
「…」
「何だ、そんなことか!安心しろ、すでに想定済みだ!」
石化した胡蝶鬼を隣に、鉄甲鬼はこれまた晴れやかな笑顔でうなずきまくる。
ああ、何たる輝かしい笑顔。
きらりと白い牙をきらめかせ、さわやかオーラを発しながら…
「そ、それじゃあ!」
「ああ!俺の造ったヒャッキーロボGは、どの形態でも特大スピーカーを備え付けてある!
河内音頭だろうがJAM Projectだろうがモーニング娘。だろうがオレンジレンジだろうがなんでもいけるぞッ(ただし音源はカセットテープのみ)!」

「…ぬう!やるな、鉄甲鬼…あなどれん男よ」
「ふっ…そう褒めるな、何も出んぞ自雷鬼」
「…」
そうして、お互いを認め合った男と男。
二人の間に、新たなる友情が誕生した―
…こうして、ここに三人の戦士が集った。
後はヒャッキーロボGに乗り、あの忌々しき「人間」、ゲッターチームを倒すだけ―
だが、胡蝶鬼の心は今そのような闘志を燃え立たせられる状態ではなかった。
石化を通り越しもはや風化の域に入りかけた彼女の脳裏では、
いのちをかけてともに戦う一蓮托生のチームメイトがこの天才バカとお調子者で本当に大丈夫なのか、とか、
しかもこいつらと合体ロボットに乗るって少しっていうか結構っていうかかなり嫌になってきた、とか、
天然のボケ、しかもダブルボケに常識人の自分ひとりではとても突っ込みきれない、とか、
『どの形態でも特大スピーカーを備え付けてある』ということは私の時でもこいつはテーマソングとやらを流すつもりなのだろうか、とか、
そういうことがもうぐるぐるぐるぐる回り続けて、それはそれはもう大変なのだった。




<To be continued...!!>




<♪不滅のマシーンヒャッキーロボ(『ヒャッキーロボG』エンディングテーマ)>

あ〜おく輝く 地球を狙い
百鬼帝国 躍進だ〜
い〜そげ〜 三人の〜 わーかものたちよ〜
せーぎのこころで合体だ〜
おーおぞら高く〜 ひ〜ばなをちらし〜
へ〜いわのーたーめーにー あーくーをーうつ〜
お〜おヒャッキー ヒャッキー ヒャッキー
ふ〜めつ〜の〜マッシ〜ン ヒャーッキーロッボ〜!