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TOP俺たちゲッターロボマニア>これがホントの、「チェェェンジ・ゲッタァァ!」


これがホントの、「チェェェンジ・ゲッタァァ!」


「…と、いうわけで、俺ははっきり言って嘘だと思う」
と、言うふうに、真顔でリョウはそう話を締めくくった。
「…確かにな。言われてみれば、そうだったぜ」
「そーだなー。今じゃ慣れちまったけど、別に…オイラがイーグルでもジャガーでも、ほんとは何の問題もないんだよなぁ」
リョウの説明に、納得した様子なのは…それを聞いていた、ハヤトとムサシ。
今まで深く考えていなかった事実を指摘され、軽い驚きと感嘆の表情を浮かべている。
浅間学園学園寮。浅間学園生徒である流竜馬・神隼人・巴武蔵の三人部屋で、男三人は車座になって何事かを話し合っていた。
議題は…「ゲットマシンの割り当てについて」。
リョウ青年の疑問…それは、何故自分がイーグル号のパイロットであり、ジャガー号やベアー号のそれではないのか、というものだった。
そして、何故自分がゲッター1の担当であり、ゲッター2やゲッター3のそれではないのか、と。
かつて早乙女博士は、「ゲッター1、ゲッター2、ゲッター3それぞれお前たち3人の体格・性格・能力にあわせて設計してある!」と言っていたらしいのだが、それは明らかに矛盾を含んでいる。
何故なら、リョウ、ハヤト、ムサシの三人ともが、もともとゲッターのパイロットとして訓練を受けていたわけではないからだ。
特にハヤト、ムサシはリョウ自身が連れてきた人材であり、博士の予測の範疇には絶対なかったはずだ。
早乙女達人以下、プロトゲッターに搭乗していた初代ゲッターチームならいざ知らず…
リョウ青年の主張は続く。
「…で、それで?」
「うん。俺、思うんだ…俺たちは、それぞれ、ゲッター1、ゲッター2、ゲッター3の専属として、空・陸・海って担当してるよな。…けど」
リョウは、一旦そこで言葉を切った。
「俺たち、いつの間にかそうなったってだけでさあ、もしかしたら逆に、別の機体を担当したほうがもっと成果が上がるかもしれないだろ?」
「ああ、そういうことかよ!」
「そうかもな。…そういや、リョウだって、本当は高所恐怖症のケがあったんだよな。今じゃ平気だけど」
「…ああ。だからさ、試してみる価値はあると思うんだ」
ムサシの本当にデリカシーのない、だが一応自分の意見に賛同しているらしき発言に、多少眉をひそませながらも、うなずくリョウ。
仲間二人に、暗に「ある提案」を示唆する…
「そうだな…それじゃ、いっちょやってみるか?」
そして、その「ある提案」は、ハヤトの口から放たれた(何と気のあうこと!)。
「…ゲットマシンの交換を、よ」
「へへへ、さんせーさんせー!…実はさあ、オイラもちょっとだけ、ジャガーとかイーグル乗ってみたかったんだあ!」
「はは…実は、俺も!」
諸手をあげて、無邪気に喜ぶのはムサシだ。
その素直な反応に、リョウも…ちょっぴりだけ恥ずかしそうに和しながら、軽く鼻の下をかいた。
どうやらそれはハヤトも同じらしく、めずらしく自分からやる気を見せている。
結局、みんな乗ってみたかったのだ。自分の機体以外の「ゲッターロボ」に。
…これで、話は決まった。
「…よし、んじゃあ決まりだ!…それじゃあ、早速試してみようぜ!」
「おっけーおっけー!」
若者らしい、後先考えない即断即決で…ゲッターチームの野郎三人は、早速その計画に取り組むことを決めた。

「…ん?…リョウ君たちはどうしたのかね?もう訓練の時間のはずなのだが…」
早乙女研究所、司令室。
早乙女博士の口から、不思議そうな声がもれる。
訓練時間になっても姿を見せないゲッターチームの三人…
ハヤトやムサシならともかく、あの几帳面でクソ真面目なリョウまでもがいないというのは、一体どういうことなのだろうか。
「あら、お父様。リョウ君たちなら、もうとっくにゲットマシンのほうに行ってますわよ」
その父親の疑問に答えたのは、愛娘ミチルだ。今日はコマンドマシンの訓練はないので、ここ司令室にとどまっている。
「?…今日は、やたら手際がいいんだな?どうした風の吹き回しだ」
「さーあ、何でしょうねえ。…なんか、妙にみんなそわそわしてましたけど」
と、その時、ミチルの声にかぶさるように、リョウからの通信が入ってきた。
「…かせ!博士!」
「ん?…リョウ君か!もうゲットマシンの発進準備も整ったのか?」
「ええ!バッチリです!」
「俺も大丈夫です」
「オイラもー!」
通信機に向かって話しかけると、リョウ、ハヤト、ムサシの三人から、威勢のいい返事が帰ってきた。
…だが、妙なことに…開いているのは音声回線だけで、画像回線は出てこなかった。
不審におもった博士が、なにやら手元のスイッチを操作してみたが…それでも、各ゲットマシンから送られてくるコックピット画像はモニターには出ず、そこにはただ暗い闇があるだけだ。
しかも、イーグル・ジャガー・ベアー…その全てが。
「…ん?…どうしたのかな?」
「…な、何ですか、博士?!」
何故か少し上ずっているリョウの声。しかし、早乙女博士はそれには気づかず、困ったように言うだけ。
「いや…モニターの配線か回路が狂ったらしい。ちょっとモニター画像が出なくてな」
「あ、そ、そうですか」
しらばっくれるムサシ。だが、その声がやはり少し上ずっている。
…画像が出ないのは当たり前だ、こっちのカメラを全部黒布で覆って、ふさいでしまっているのだから。
「…?」
「ま、まあ…音声通信はできるみたいだし、訓練程度なら大丈夫ですよね?!」
「まあ、それはそうだが…」
「そ、それじゃいいですね。…じゃあ、発進しますよッ!」
いつになく強引なリョウの要請に、押されぎみの早乙女博士。
一旦惑ったのだが、「まあ、今日は訓練だし、故障箇所がモニターだけならたいした問題はあるまい」と考え直した。
「あ、ああ。…よし、では、ゲットマシン・発進ッ!!」
『了解ッ!』
早乙女博士の声に応え、三人が同時にゲットマシン・発進のスイッチを入れる。
イーグル・ジャガー・ベアー…三機のゲットマシンがカタパルトからいっせいに吐き出され、ジェットの炎を吹き上げながら青空の下に飛び出していった。

研究所から少し離れた場所…編隊を組んで飛ぶ三機のゲットマシンが空を斬る。
「うーん…なんか、やっぱりしっくりこないなあ」
「何言ってるんだいリョウさんよ…ゲットマシンの操縦には、イーグルだろうとジャガーだろうとベアーだろうとあんまり変わりがねえだろうがよ」
リョウが思わずもらした不平に、すぐさま突っ込むハヤト。
言われてみればそりゃそうだ、と納得したリョウ…ふっ、と、自分でもおかしそうに少し微笑っている。
「…へへへ、でもさあ…うまくいったよなあ」
「ああ、そうだな…さぁて、この辺でいいかな?早速、やってみようぜッ!」
「よぉーし!…じゃあ、まずはオイラからなッ!…チェーンジ・ゲッター…」
計画がうまくいったことに浮かれ気味の三人。
さっそく実験を開始しようとした…まさに、その時!
「…リョウ君、ハヤト君、ムサシ君ッ!」
ゲットマシン三機の通信機が、同時に早乙女博士の緊張した声を奏で出した!
「?!」
「ひゃ、ひゃいっ?!」
「ま、まさか、バレたのか?!」
自分たちの計画がばれてしまったのかとビクつくあまり、飛び上がる三人。
ムサシなどは100%声が裏返ってしまっている…
が、それに続く早乙女博士のセリフが、実はそうではないことを彼らに知らしめた。
「…メカザウルスが現れた!研究所にまっすぐ向かっているようだッ!至急帰還し、迎え撃ってくれッ!」
「!…は、はいッ!」
「…」
彼が伝えているのは、メカザウルスの来襲…決して自分たちの(悪)巧みが露見したのではない。
それを聞くや否や、三人の表情に安堵の色が浮かぶ…ほっとため息をつく彼ら。
…だが、ムサシは…その安堵のあまり、つい余計なことを口走ってしまっていた。
「…ふー…なぁんだ、よかった…オイラ、てっきりバレちゃったのかと」
「?!」
「ば、馬鹿!」
「え?!…あ、ああー!」
ムサシもようやく自分がとんまなことをしてしまったことに気づいたが、もう遅い。
早乙女博士が厳しい口調で問い詰める!
「…ムサシ君。どういうことだね、今の言葉はッ?!」
「え、えーと、あのー、そのー…」
「何かを隠しているなッ?!一体どういうことなんだね、言いなさいッ!」
「あ、あちゃー…」
「こ、この馬鹿野郎…」
「え、ええっと…?!」
「…」
頭を抱えるリョウ、沈痛な面持ちのハヤト、もはやしどろもどろのムサシ…
数秒のためらいの後、通信機から渋々といった感じで伝えられた事柄…
その内容のあまりのばかばかしさと軽挙妄動ぶりに、早乙女博士は…思わず全身脱力してしまったという。

「…」
「…ど、どうしたの、お父様?!リョウ君たち、一体…」
出撃に備え、パイロットスーツに着替えて司令室に戻ってきたミチル…
彼女の目の前で、椅子にどっかりと座り込んだ父親は、何故か頭を抱えこんでしまっている。
「…まったく、あのあかんたれども…」
「…??」
そして、その口から出てくるのは…半ば呆れたようなセリフ。
早乙女博士のそんな様子に、ミチルはただ首をかしげている…
「だが、もう時間がない…ええい、これで負けたら承知せんぞ、悪ガキどもめ!」

巨大な肉食恐竜が地を歩む。地響き立てて、迫り来る。
目指すは一路、憎き敵…ゲッター線研究の牙城、早乙女研究所。
メカザウルス・バズの視界に、その姿が映った…破壊すべき目標に向けて、ゆっくりと頭を向ける。
バズの頭部には、巨大なバズソウ(円形鋸)の発射口が備え付けられているのだ。
そして、その照準は、ぴたりと研究所にあわされる…
が、まさにバズソウが発射されようとした、その時だった!
「待てッ!」
「!」
天空から降り注いできたのは、空気を震わす雄々しい叫び!
メカザウルス・バズに搭乗する恐竜帝国軍キャプテン・キャプテン・ハガチの目が、思わず上空に向けられる…
そう、それは流竜馬…ゲッターチームのリーダーにして、ゲットマシン・イーグル号、そしてゲッター1のパイロットだ!
「俺たちが相手だ!」
「来たな…ゲッターチームめッ!このキャプテン・ハガチが、貴様らなど返り討ちにしてくれるわッ!!」
「まずは…俺からだ!」
そして、きらめく陽光をはじきながら、ゲッターロボが地上に降り立つ…!
ずうん、と音を立て、メカザウルス・バズの眼前に舞い降りたその姿…
「…え?!」
が、それを見た途端、キャプテン・ハガチの目は…文字通り、点になった。
「さあ、行くぜ!」
「ちょ、ちょっとタンマ!」
「?!…な、何だ?!」
キャプテン・ハガチのセリフに、困惑するリョウ。
…が、キャプテン・ハガチは、胸に去来する疑問を口にせねばどうしても収まりがつかないらしい。
「ちょ、ちょっと待ってくれ…お、お前、…流竜馬、流竜馬だよな?!」
「ああ!」
力強く返ってきた返事は、確かに流竜馬のものだ。
「だ、だよな…な、なのに、何で?!」
流線型を描くフォルム。細身の形態。そして、右手には、全身のスマートさとは裏腹に、巨大で剣呑な…
…ドリル…?!
そう、そこに立っているのは、本来ならば流竜馬の搭乗機ではない、乗るはずではない…
「…何で、ゲッター2なんだ?!何で?!」
「…気にするな!」
が、キャプテン・ハガチの渾身の問いを、流竜馬はあっさりと一言で終わらせた。
よく見れば、その格好も明らかにいつもと違っている…
普段のパイロットスーツではなく、ハヤトのライダースーツを身にまとい、おまけにヘルメットまで交換している。
「何事もカタチから入る」というあたり、さすが最近の若者といったところだろうか。
…が、キャプテン・ハガチとしては大混乱だ。
流竜馬のゲッター1、神隼人のゲッター2、巴武蔵のゲッター3…
恐竜帝国では、このゲッターロボ三形態それぞれにあわせて分析を行い、最も適していると思われる戦略を常に練っている。
もちろん、それを駆るパイロットの性格、行動パターンもその分析の範疇内だ…
流竜馬ならこういう時にゲッタートマホークを打つだろう、神隼人がゲッターマッハを使うのはどのような状況下においてなのか、巴武蔵の大雪山おろしが出るタイミングは…
パイロットの行動傾向が読めれば、それは必然的に相手の裏を読み、先手を打つことにつながるからだ…
だが、今。
流竜馬は本来の搭乗機・ゲッター1には乗らず、陸専用モード・ゲッター2に乗ってあらわれた…?!
これは一体何なのか、この裏には何か策略が潜んでいるのだろうか?!
思いも寄らぬ展開に、キャプテン・ハガチの頭が混乱状態になったのも、無理からぬことであろう。
「き、気にするなって言ったって!」
「ええいうるさい!…いくぞ、受けてみろッ!」
だが、もはや話すこともない、とばかりに、リョウはいきなり行動に出た!
「!」
「ゲッタァアアァアアァアァァアアァ・マアアアァアアアァアアッハァアアアァアッッ!!」
ゲッタービーム、と叫ぶ時とまったく同じ要領で、リョウは思いっきり声を張り上げた!
同時にゲッター2は軽い前傾姿勢をとり、赤きその脚が軽やかに動き出す…!
するとみるみるうちに、ゲッター2は神風のごとき速さで駆け巡り、その姿は無数の残像を生むほどになる…!
「う、う、うわあッ?!」
一気にゲッター2の残像群に取り囲まれ、驚嘆の声を上げるキャプテン・ハガチ。
しかし、それに面喰らっていたのは、何も彼だけではなかった。
「いやっほう気ィ持ちい〜いっ!」
「お、おい、リョウ!飛ばしすぎ飛ばしすぎ!」
「何言ってんだ、もっともっと飛ばすぜ〜ッ!!」
ムサシの静止も、何のその。
自身の操縦するゲッター1にはない、マッハ3を誇るゲッター2の走行速度。
超高速で地面をかっとんでいくその快感に酔ったリョウは、なおさらのスピード、極限を求めて思いっきり操縦桿を前へと倒す…
普段おとなしいヤツほどタガが外れると際限無いところまでいってしまう、の法則を地で行く男、流竜馬・花の17歳。
今彼はまさに、青春ロードを武津血義流(ぶッちぎる)暴走族と化した。
「よ、酔う…」リョウの乱暴な操縦に、元・ゲッター2の男が多少ご気分を悪くされているようだが、ハイテンションになってしまったリョウにはまったく見えていない。
「さあ、お次はこれだァッ!」
満面の笑顔とともに、うきうきと彼は次なるゲッター2の武器を取り出すべくそのボタンを押す。
「?!」
途端、ゲッター2の右手…それは、剣呑に尖ったドリル…が、超高速回転を始める!
「ドォォオオオォォリィル・アアァァアアァアァアァアアァアアアアァァアムゥゥゥウウゥッ!!」
「き、きゃー!」
メカザウルス・バズを襲う強烈なドリルの連撃!
その恐ろしさに思わず、まるで怪獣に襲われた少女のような悲鳴をあげるキャプテン・ハガチ。
もはや、どちらが悪役かわからない。
「おらおらおらおらおら〜!喰らえ喰らえ食らえ〜ッ!」
「う、うおぉぉおっ?!」
「…く〜っ!…これだよ、これ〜ッ!…やっぱ、漢の武器ッつったら、ドリルだよな〜ッ!!」
聞きようによってはものすごく嫌な意味に取れそうなセリフを、じいんとしびれる感動とともに言い放つリョウ…
そんな彼に、順番待ちのハヤトが交代を要求した。
「リョウ!そろそろ俺にも替わってくれや!」
「おお、了解だぜえッ!…オープン・ゲェット!」
「チェーンジ・ゲッター3!スイッチ・オン!」
ゲッター2は一瞬ふわりと空に浮き、一旦三機のゲットマシンへと分離する。
そしてすぐさま順番を変えて合体する…
上から、ベアー、イーグル、ジャガー号、と。
「…?!」
「よし!今度は俺が相手だ!」
「あ、あの!ちょっと待ってください!」
またも混乱のキャプテン・ハガチからの通信。なぜか敬語だ。
「何だ、またかよ!」
「あの…あ、あなたは、神隼人さんじゃないッすか、ジャガー号の?!」
「おう!」
力強くうなずくハヤト。
とんでもないことに、やはり彼もリョウ同様に、コスチュームまでベアー号・ゲッター3仕様にしていた。
…つまり、工事用のヘルメット、ゴーグル、マント、剣道の胴あて、背中に背負うは日本刀…
モニター画面では上半身しか映ってはいないが、おそらく下半身も忠実に再現されているのであろう
(ミチルはそれに内心ほっとしていた…あまり想像したくないような光景であるから)。
ギャグとしか思えんような格好で決戦を挑む男、神隼人。
が、この格好がムサシだったら何の違和感もなく感じられるのは何故なのだろう。
「で、でも!…それ、ゲッター3…」
「馬鹿野郎!細かいことを気にするな!」
そう言うなり、困惑のキャプテン・ハガチをほっぽらかして、すぐさま攻撃に移る神隼人!
「行くぞゲッター・ミサーイルッ!」
「ぎゃあっ?!」
ゲッター3の両肩から一対の強力なミサイル弾が放たれる!
すんでのところでそれを命からがら回避するメカザウルス・バズ…
先刻まで彼が立ち尽くしていた地面にミサイルが着弾した途端、強烈な爆音と振動がそこらじゅう一帯に広がった。
もうもうと巻き起こる砂嵐…
が、ゲッター3の攻撃力、そのその強力無比さを見ていたハヤト、彼はどうも釈然としない表情だ。
「うー…ん…おい、ムサシさんよぉ」
「何だい、ハヤトー?」
「よく考えりゃよお、ゲッター3ってのは、基本的にはゲッターミサイルしかないんだよなぁ、武器が」
「そうだぜ?」
「なんつーか、その…地味、だよな」
…どうやら、彼はゲッター3の武器のバリエーションの少なさがお気に召さないらしい。
ごくストレートにその不満を口にする。
わがままなことをいう現・ゲッター3のパイロットに、元・ゲッター3のパイロットが、何だかムキになったような口調で、何処か居直ったような口調で怒鳴り返す。
「し、仕方ねーだろ!…それに、アレができるほどパワーがあるからいいんだよ、別に!」
「!…そうか、アレか!…ふっ、それじゃ一発、ぶちかましてみるか!」
クールに薄く笑む神隼人。きらり、とその瞳が光る。
彼の操作に従って、ゲッター3のアームがしゅるしゅると伸びていく…
「…にゅーん、って感じで腕が伸びて面白いよな、ゲッター3」
「だろだろ?」
「…?…あ、あの…」
しゅるしゅると自機にまきついていくゲッター3のアーム。
戸惑うキャプテン・ハガチをよそに、緊迫感のない会話を交わすハヤトとムサシ。
「…えーと。…よっ」
「?!」
頃合よし、とばかりに、ハヤトは操縦桿を注意深く動かした…すると、その途端!
ゲッター3はメカザウルス・バズを力の限りぶんぶんと振り回し始めた!
そして、慣性の法則が働き、遠心力が働き、十分に物理的エネルギーがたまったところで…
「はっ、…と!」
「うおおぉおぉぉおぉおおおぉぉお〜〜〜ッッ…」
ぱっ、と、メカザウルス・バズの身体を解き放つゲッター3…!
上向きの方向に投げられた彼の身体は、まっすぐに青空へ向かって飛んでいった。
キャプテン・ハガチの情けない叫び声が、どんどん遠くなっていく…
「おいおいハヤト!全然なってないぞ!」
その様を見送りながら、自身のかけた「大雪山おろし」の威力にほくそえんでいたハヤト…
が、すぐさまそんな彼に「元祖」からのダメ出しが入った。
「何?…俺としちゃ、初めてにしては結構うまい具合に出来たと思ったんだが…」
「何を言ってる!大事なのが抜けてたじゃないか!」
「そうだぞ、ダメだぞハヤト〜、ちゃんと『だぁいせぇつざぁああん・おぉおおろおぉおおしぃぃぃぃ!』って言わないと〜!」
「…おお、そうだったな。悪い悪い」
リョウとムサシの指摘に、「おお」というような表情をして見せるハヤト。
こんなアホらしい理由に、素直に納得しているようだ。
「…おぉおぉおぉおおおおおぉ…ぐえッ?!」
…と、そうこうしているうちに、キャプテン・ハガチが「地獄の空中遊覧飛行」から帰還してきた。
どぐしゃあっ、という嫌な音とともに、少し離れたところの地面に頭から突き刺さっていった。
「ま〜、オイラから見れば、まだまだツメが甘い、かなぁ?…五秒くらいで落ちてくるようじゃあ、まだまだだぞ」
「…ふっ…まあ、俺にはあまりあいそうもねえ技だな、やっぱりよ!」
そう言いながら、やはりハヤトはクールに薄く笑んだ…
その憂いを秘めた表情、工事現場用のドカヘルが似合わないことはなはだしい。
「じゃ、次オイラ!オイラにやらせてくれよッ!」
「オッケー!…オープン・ゲェット!」
そして、今度はムサシの番だ…分離するゲッター3、ゲットマシンは三機に分かれ…
上から、イーグル、ジャガー、ベアー号の順に積み重なる。
じゃきん、がしん、という硬質な音とともに、腕が伸び、脚が伸び…
地面にふわり、と舞い降りるは真紅の巨体!
ゲッターロボ・空専用モード…ゲッター1だ!
「や、やっぱり、それじゃあ…あ、あんたは、」
「おう!オイラ、巴武蔵だぜ!」
そして、やはりそのイーグル号・ゲッター1のパイロットとなっているのは…ゲッター3に乗っているはずの男・巴武蔵であった。
普段はリョウの着ているパイロットスーツ姿、こういっては失礼だが…似合わないことこの上ない。
彼のでかい頭がどうしてあのメットに入ったのか、大変な疑問だ。
「…え、えと、その…」
「気にしない気にしない!あっはははは〜!」
一応言うだけは言ってみようとしたキャプテン・ハガチだが、能天気にからから笑い飛ばされ、やはり先の二人と同じセリフで片付けられてしまった。
「それじゃあ、いっくぜ〜ッ!…ゲッター・トマホークッ!」
あくまで明るい巴武蔵の掛け声とともに、ゲッター1は攻撃を開始した!
じゃきん、と肩から飛び出したトマホークを引っつかみ、思いっきりメカザウルス・バズ目がけて投げつける!
「うりゃうりゃうりゃ!トマホーク・ブーメランみ・だ・れ・う・ちィッ!」
「うわっ?!ふぎゃっ?!のわあっ?!」
リョウと違って多少狙いの甘い、ムサシの投げるトマホーク。
それでも、びゅんびゅん空を斬って迫り来る斧の嵐は、相手を恐怖させるには十分だ。
ざんざか雨のように降ってくる無軌道なトマホークの群れを、ひいこら言いながら必死に避けるキャプテン・ハガチ。
と、冷や汗かきながら回避に専念していたキャプテン・ハガチの耳に、次に飛び込んできたのは…こんな会話だった。
「いよっしゃあ!…よ〜し、言うぞ言うぞ〜ッ!…オイラ、いっぺんこれ言ってみたかったんだよなぁ!」えらくうれしそうな、うきうきしたムサシの声。
「ようし!俺が採点してやるから、思いっきりやってみろッ、ムサシッ!」それに応じるのは、リョウ。
「とちるなよ!とちったらお前、すげえカッコ悪いぜ!」これはハヤトだ。
「リョウ!お前に負けないぐらいにすッげえ気合入れて言ってみせるから、よ〜く聞いてろよ〜ッ!」
戦場にいる戦士が交わすものとはとても思われないくらい、能天気で影がなく、底抜けに明るいその会話…
そして、その彼らのセリフから…
彼らがこんなことをしているのは、何も深遠な作戦が裏にあるからではなく、単にそれは遊び…
つまり、ゲッターロボで自分と真剣に戦うつもりなどさらさらなく、三人で遊んでいるだけなのだ、ということに気づくに至り、今の今までわけもわからず混乱状態だったキャプテン・ハガチ、ようやく彼もはかがいくと同時に…
ぷちん、とおキレになってしまった。
「それじゃあ、1番!巴武蔵、いっきま〜すッ!…げったぁああぁ・びぃいぃいい…」
「ば、馬鹿たれえぇええぇえぇぇええぇえっっ!!」
『?!』
突如、ムサシの技声をも上回る馬鹿でかい大声が戦場に響き渡る。
ぎょっとするあまり、思わず三人は言葉を失っていた…
さっきまでの浮かれ気分がすうっと覚めていってしまう。
いきなり怒り出したキャプテン・ハガチ…通信画面に映る彼、怒りのあまりかぶるぶる震えているのが見える。
「お、お前らは、一体自分たちの立場というものをどう考えてるのだ!」
「た、立場って…」
「黙れ!ここ座れ!」
ムサシの言うことなど聞かず、自分のすぐ前の地面をびしっと指差し命令するメカザウルス・バズ。
「え、えと…」
「はよ座れ!」
「…は、はい…」
キャプテン・ハガチのあまりの勢いに、思わずムサシは素直にその命令を聞いていた。
メカザウルス・バズが、どっかりと胡坐をかいて座り込んでいる…
その前に、ちょこなん、と正座して座るゲッター1。
ようやく殊勝な態度を見せたゲッターチームに、キャプテン・ハガチはとうとうと語りはじめた。
「…お前たちなあ、さっきから黙ってみておれば!一体この戦いを何だと思っておるのだ?!遊びではないのだぞ、もっと真剣にやれ、真剣に!」
「な、何を言うんだ!俺たちは…」
「真剣ではなかったよなあ、ん〜〜?!…そうでなければ、自分たちの乗るゲットマシンを交換してきゃあきゃあ騒いだりはせんよなあ?!」
「…」
反論しかけたリョウも、ずばりと真実を突かれて黙り込む。
敵にすら指摘されたことで、急に先ほどまでの自分たちの所業が恥ずかしくなってしまったのか…その端正な顔をかあっと赤らめた。
「俺から見れば、その考え自体が浅はかで、自分自身の適性すら放り捨てる愚かなものだ!」
はあっ、と、一旦息をつき、ぎんっ、と通信画面の三人を見据え、キャプテン・ハガチは語り始めた。
もはや、己の職務など完璧に忘れ去っていた。
「…いいか?!お前らはな、別に三人がどのゲットマシンに乗ろうが同じだと思って、こうゆう所業に出たのだろうが!それは真っ赤な間違いだぞ?!」
「『真っ赤な間違い』、って…」
「それを言うなら、『真っ赤な嘘』だよなぁ」
「黙らんか!ちゃんと聞きなはれ!」
「…」
突っ込みを入れたリョウとハヤトに、間髪いれず怒鳴り返すキャプテン・ハガチ(何故か京都弁で)。
その激しさに、二人は黙り込んでしまった。
そして、再びキャプテン・ハガチの説教が始まる。
「巴武蔵!お前は、『丈夫で長持ち!』が身上の、力自慢のキャラクターではなかったのかッ?!
そのお前から、力を取ったら何になる!
ゲッターの中で最もパワーのあるゲッター3を捨てたお前など、裏返しにされたカメ同然だッ!」
「か、かめ…」
「神隼人!お前はゲッターチームの中でも、常にクールで冷静、かつニヒルな影のある男という設定だろう!
…そんな男が!『だぁいせぇつざぁああん・おぉおおろおぉおおしぃぃぃぃ』とか、力技に走っちゃダメだろう!
しかも何だその格好は!『ボインちゃん好き』で名を馳せたお前が、そんなウケを狙った格好をするのかッ?!
全国数百万人の神隼人ファンは泣いておるぞッ!」
「…」
「そして、流竜馬!ゲッターチームのリーダーであるお前が乗るのは、イーグル号・ゲッター1しか考えられんだろうが!
…チームの要たるリーダーが、ゲッタービームというシメの必殺技を放てるゲッター1に乗るのは、当然の帰結でしょーが!
ドリルぶんまわして、喜んでんじゃないのッ!」
「…」
リョウも、ハヤトも、ムサシも、何だか居心地悪そうにもじもじしながらその説教を聴いている。
その様は、まったく教師に叱られる悪ガキどもそのものだ。
うつむきっぱなしのゲッターチームに、なおもキャプテン・ハガチの説教は続く。
「…また!リーダーは赤、ニヒルは青、お笑いは黄色のマシンに乗るというのは、古き良き伝統に基づいておる!
これを外せば、ちいさいおともだちのみんなが混乱するだろう?!」
「…お、オイラ、『お笑い』…?!」
「に、『ニヒル』って…」
「ちいさいおともだち」って誰やねん、と突っ込むことすら忘れたゲッターチーム…
もはやただぽかんとしたような顔つきでキャプテン・ハガチの熱弁を聞いているのみ(特に、「ニヒル」と「お笑い」)。
「わかるか、若僧ども!」
「…!」
「…のう、巴武蔵よ…よいこのみんなは、お前の『大雪山おろし』を待っておるのだよ。
ゲッター3がその怪力を発揮して、並み居る敵を投げ飛ばす。
それが出来るのは、ゲッターチームではお前しかおらぬのではないかな?」
「…」
「神隼人よ。ヒット&アウェイの効率的かつ正確な戦略を得意とするのが、ゲッター2の特色ではなかったのかね?
チームの中で、常に冷静で深謀深慮のお前が、そのゲッター2を駆る最も適任な男とは思わぬか?」
「…」
「そして、流竜馬よ…チームのリーダーたるお前が、最後のトリを飾る。
そのフィナーレを飾るのは、ゲッターロボの最強武装、ゲッタービーム以外にありえまい。
それを外すことなく、着実に決めること…それが、ゲッターチームのリーダーたるお前のつとめだとは思わんかね?」
「…」
先ほどとはがらりと変わり、穏やかで、何処かあたたかみのある口調で語られるそのセリフ。
まるで、それは道を踏み外しそうになる若者に、それを諭しとどめようとするような大人のやさしさにも似た…
最初は厳しくびしっと叱っておいて、後からやさしい愛情あふれる言葉をかける。
キャプテン・ハガチという男は、なかなかに人身掌握の術を心得ている男であった。
感情的に揺れ動きやすい若人が、それに平然として耐えられるはずもなく…
「う、うう…ッ!」
効果はテキメン。一番最初に泣き出したのは、やはり感動屋さんのムサシだった。
「わかったな、ゲッターチームよ…お前たちは、伊達にそれぞれのゲッターを任されておるのではない。
お前たちのゲッターは、お前たちそのものなのだ…それを自ら捨てるとは、何と言うことをするのだ」
早乙女博士の言いそうなセリフを、真顔で、真剣に、心を込めて口にする…「敵」の、「ハ虫人」の、「キャプテン」の、キャプテン・ハガチ。
その彼の言葉を聞く三人の胸に、じいんと何かがひろがっていき…
「…!」
「ち…畜生…!…や、やけに、涙がこぼれやがるぜッ…!」
「うう、オイラ、オイラ…一生ゲッター3でやっていくよッ!お、オイラは、ベアー号・ゲッター3のムサシなんだッ…!」
嗚呼、リョウもムサシも、ハヤトすら。
一体何が彼らの琴線に触れたか皆目不明だが、ともかくキャプテン・ハガチの説得は強烈に胸に沁みたらしい。
感動の涙を浮かべながら、厳しいが心のこもった彼の言葉に聞き入る三人…
己の過ちを認め、素直に反省した若者たちを見て、キャプテン・ハガチは満足そうにうなずいた。
「す、すまなかった、キャプテン・ハガチ…俺たちは、本当に馬鹿だったよ…!」
「ああ…今日の俺たちは、自分のゲッターロボだけじゃなく、自分自身をも捨てちまっていたんだ。自分自身を捨てて、どうなるもんかよ…!」
「うん…!お、オイラ、もうゲッター1に乗りたいなんていわないッ!オイラ、ゲッター3でばんばん『大雪山おろし』しまくるよッ…!」
浮かんできた涙をぬぐいながら、素直に詫びるリョウたち。
詫びる相手が違うだろう、という気もするが、感動の渦の中にいる今の彼らには、そういう常識的な応えは届かない。
そして、それはキャプテン・ハガチも同様だった…
もはや、敵の小童を前にしているというよりは、自身の弟子を見ているようなあたたかい視線を彼らに向けながら、これまたあたたかい励ましの言葉を口走っている。
「わかってくれればよいのだ…若い時には、過ちをすることもあるだろう。しかし、それを素直に認め、己を省みることが何よりも大事なのだ」
「…」
無言でうなずくゲッターチームの面々。
「次こそ、…次こそ、お前たち本来のゲッターロボに乗り…俺に、お前たちの真の力を見せてくれ!
そして、その時こそ…俺のメカザウルス・バズと、正々堂々の勝負を繰り広げようではないか…!」
「あ…ああ、わかったぜ、キャプテン・ハガチ…!」
「後悔するなよ、キャプテン・ハガチさんよ…俺のゲッター2は、あんたなんかにゃ負けやしねえぜ…!」
「おう!オイラのゲッター3だって、すごいんだからなッ…!」
「うむ!その意気やよし…!」
いつの間にかすっかりと日が暮れ、戦場は鮮やかな橙色に染まっていた。
風渡る夕暮れの草原に、対峙する敵同士…
だが、その間には、確かにそれ以上のものが芽生えていた。
その胸にあふれるのは如何なる感情なのか、ともかく今キャプテン・ハガチを見るゲッターチーム三人の瞳に宿るのは、すばらしい精神を持つ敵に対する、ある種の敬意ともいえるようなものだった。
自身の心ある説諭に改心した若き人間の戦士たちを見、思わず落涙するキャプテン・ハガチ…
そして、彼らは近い日の再戦を…今度は、己がゲッターロボで、本当の力を出し切って、正々堂々と戦うのだ…誓い合うのだった。
夕日をバックに、影絵のように地面に伸びているメカザウルス・バズとゲッター1の影…
それはまるで、戦友(とも)どうしのように、まっすぐお互いを見つめ向かい合っているのだった。
そして…

早乙女博士、早乙女ミチルら早乙女研究所の一同、そして遠く離れたマグマ層、恐竜帝国マシーンランドでその戦いを見守っていた帝王ゴールらハ虫人類の皆様も…もはや、口を「ぽかーん」と開けたまま、そのアホらしくも感動的な光景を眺めていることしか出来なかったのであった。

こうして、暑苦しい涙の大円団という形をもってして、彼らの挑戦は終わった。
もちろん帰還後に、リョウたちは早乙女博士にこってりと説教されることになるのだが…
ゲッターロボ撃破という任務を「スコーン」と忘れて、若者たちが道を誤れるのをただしたことに満足しきったキャプテン・ハガチ…のんきにマシーンランドに戻っていった彼もまた、帝王ゴール以下首脳陣に「お前一体何しにいったんじゃい」と、たっぷりしぼられることになるのである。



めでたし、めでたし(何がじゃ)。