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Monologue〜流竜馬〜
Dona nobis pacem



Confiteor Deo Omnipotenti
Beatae Mariae semper Virgini
Beteo Michaeli archangelo
Sanctis apostolis omnibus sanctis


我が罪を告白し奉る、全能の主よ
永遠の乙女なる聖母マリアよ
祝福されし大天使ミカエルよ
そして、すべての諸聖人たちよ



ゲットマシンに乗るようになって、もうどれくらいの時が流れたんだろう。
ゲッターロボに乗り、いくつの戦いを俺は超えてきたんだろう。
恐怖が慣れという感覚に浸食されていき、やがてはそれが常態になる。
『ハ虫人』たちに、恐竜帝国の奴らに地上を侵略なんてさせるわけにはいかない、
俺たちはそれを止められる、俺たちはそれを許さない。


O, salutaris hostia
Quae caeli pandis ostium
Bella premunt hostilia
Da rober, fer auxilium
救い主よ、天国の門を開けたまえ
敵が我らを取り囲む
力を与えたまえ、
助けをもたらしたまえ



それでも、俺は―時に思う
いや、思い知らされる。



俺が、紛れもない罪人であるということを。



畜生、だってあいつらは冷酷に『人間』を殺すくせに、
平気で何の罪もない人たちを殺すくせに。

そのくせ、時折あいつらは見せやがるんだ、
あいつらもまた、情も理も、苦悩もあるイキモノだってことを―

そして、それが俺のこころを容赦なく攻め立てる、
そういうふうにこころあるイキモノを、「自衛」の名の下に
あの紅の巨人で砕け散らせてきた俺を。



…ああ!!



Mea culpa, Mea maxima culpa! 我が過ちなり、我が最大の過ちなり!
 
 
「俺は、負けた…お前たち、『人間』のこころに負けた!」
 
Mea culpa キャプテン・ラドラ! 我が過ちなり
 
「『恐竜』と『人間』が、争うのはやめて…」
 
Mea culpa ミユキさん! 我が過ちなり
 
「リョウさん…!」
 
Mea maxima culpa ユンケ…! 我が最大の過ちなり
 
畜生、どうしてあんたたちはそんなに『人間』らしかったんだよ、
 
Mea culpa あんたたちがその見かけどおりの冷血なトカゲ野郎だったら、 我が過ちなり
 
俺はあんたたちを簡単に憎めたのに!
 
Mea culpa 畜生、じゃあ俺はどうすればよかったってんだよ、 我が過ちなり
 
『人間』らしい、だけど『人間』の『敵』のあんたたちを前にして、
 
Mea maxima culpa 俺たちはああする以外に、一体何が出来たって言うんだよ?! 我が最大の過ちなり





俺は死んでも地獄に落ちるだろう、
俺は多くの人を殺した。
例えその理由が、『人間』を救うためだったとしても…
俺が斧を振るって砕き割ったあのメカザウルスども、
その中にいたはずのキャプテンたち…

その人にだって、生きてきた歴史が、
そして生きていくための夢が、未来があったはずなんだ。


だから、
ああ、
俺は。





Dies irae, dies illa

Solvet saeclum in favilla
Quando Judex est venturus
Confutatis maledictis
Flammis acribus addictis


神罰の下る日

世界は焼きつくされ、灰となろう
審判者がやってくる
罪深き者は
燃え上がる炎の底に落とされる




せめて、忘れないで生きていく。

Kirye Eleison
主よ、あわれみたまえ。

そうして、背負ったまま戦い続ける。

Kirye Eleison
主よ、あわれみたまえ。

自分が「正義」でも何でもないことを、
俺が自分と自分の守りたい人たちを守るため、彼らを平然と踏みにじってきたことを、

Kirye Eleison
主よ、あわれみたまえ。

か細い、甘っちょろい希望と感傷を捨てないでいられるように。
それでも、俺が戦い続けられるように。




そうして、その最後、俺は決然として―





当然のように、地獄に落ちるのだ。






Mors stupebit et nature

Cum resurget creatura


死と生の混沌

再び、創造の時が訪れる。




Kirye Eleison. 主よ、あわれみたまえ。





どす黒いほどに重い掌編ですが、これは原作版ではなくテレビアニメ版のリョウです
(私が書くゲッターチームは、基本的に全てテレビアニメ版です)。
恐竜帝国との戦いの中で、敵である「ハ虫人」とのこころの交流…それを一番持っていたのは、他でもないリョウだったように思えます。
そんな彼であるからこそ、通り抜けてきた悲劇の中、自らがかかわってしまった彼らに対して
無関心ではいられなかったと思うのですが…

そういう私の勝手な想像を、Requiemの詩とからめて書いてみました。

表をいっぱい使っているので、ウィンドウを最大化して見てみるといい感じです。




Dona nobis pacem―我らに平安を与えたまえ。