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バレンタインに戦争を(4)


「はい!これで終わり…ねえ、おいしかった?おいしかった?」
「…。」
ラストひと欠片を、青年の口の中に放り込み。
エルレーンは、何度も何度もケーキの味を聞いてくる。
けれども最後の意地なのか、問われても無言を貫くラグナ。
「…もう!」
むうっ、とむくれるエルレーン、その表情は年相応のものよりずっと幼く見える。
「そんなんだからカノジョもできないんだからね!」
「…うるさい」
ちくりと刺す現実的な指摘に、弱々しく吐き捨てるのがせいぜい。
相も変わらず意固地で変わらない、自分の兄弟子に肩をすくめながら…
それでも、エルレーンは微笑して。
「…来年は、私以外の人からもらえるといいねぇ?」
「や、っ、やめろ、馬鹿!」
まるで子どもにするように、ラグナの頭を優しくなぜるものだから。
さすがのラグナも、頬を赤く染める。
今日は、2月にしては温暖で。
あたたかな太陽の光がぽかぽかと地上を照らす。
昼下がりの公園は、穏やかで。
人気の少ない大きめのこの公園には、ただ鳥の鳴き声と…




「…うふふ」




くすくすと笑う、少女の声がかすかに響くだけ。




はらり、と身を縛り上げていた拘束が解かれても、非モテ騎士は動かないし少女と目を合わせようとしない。
打ちのめされた敗者は、いつだってそうする。
そんな情けない兄弟子の後姿を呆れたように見て、エルレーンは苦笑する。
「それじゃあね!まったねー!」
「…。」
ぱたぱた、と足音が鳴り、どんどん小さくなっていく。
去りゆく宿敵を、それでもラグナは追おうともせず。
ただ、苦々しい表情で、ちらり、とだけ視線をやり…




「…だから、あいつは嫌いなんだ」




捨て台詞にもなっていないような言葉を、ぽつっ、とこぼすだけだった。




<追記>
アパートの部屋でエルレーンに投げつけられたチョコレートには、アイシングで
「非モテ騎士テラワロスm9(^Д^)プギャー」
って書いてありました…


ラグナ「くそっ…くそっ…!」(←悔し泣き)


 
 イラスト…久門くれは様