資料:各辞書による前置詞anの記述

『小学館独和大辞典』

<以降に出てくる丸付き数字はこの小学館独和大辞典の意味と対応する>

1.(密着・密接・近接を示す)

       a)(空間的)〜[の表面]に、〜[の表面]に沿って(@)

       b)(密着の意味から、付属物・属性などの本体・持ち主を示す)(3格と)

        〜の、〜に付属している、〜には(A)

       c)nahe an [die]の形で)約、〜ぐらい(B)

2.(意味が希薄になり、単に空間的な場を示す)

       a)(一般に場所・部位を示す)〜で、〜に[おいて]、〜へ、〜のほうへ(C)

       b)(あて先)(4格と)〜あてに、〜に対して(D)

       c)aufに相当する古義が残っている表現で)〜の上[]に(E)

3.(時間的な場、すなわち時点を示す)〜[のとき]

       4格と、普通bisをともなって)〜まで(F)

4.   a)(持続的な活動の場、特に職場を示す)〜に勤務[在任]している(G)

       b)(従事・進行中・継続的状態を示す)〜しつつ、〜の途中で、

〜の状態で(H)

       c)am ..stenの形で最上級を作る)もっとも〜の状態で、一番〜で(I)

5.(密着の意味から転じて、よりどころ・根拠を示す)(3格と)(J)

       a)(動作の手がかり)〜をつかんで、〜を頼りにして、〜を使って

       b)(認識の根拠)〜によって、〜から見て、〜からして(K)

6.(因由・責任・義務・権限などの所在を示す)

       a)(原因・理由)(3格と)〜のゆえに、〜のために(L)

       b)(責任・義務・担当・権限)(3格と)〜の努め[責任]で、

〜の担当[権限]で(M)

       c)(帰属)〜に帰属して(N)

7. (限定・局限を示す)

       a)(外延的・内包的)(3格と)〜については、〜に関しては、

〜の点[]では

        (an sich/an und für sichの形で)それ自体[としては](O)

       b)(知情意の働きや行動の対象を限定する)〜に対して、〜に関して(P)

       c)(特に、密着して多少とも継続的・漸進的に行われる動作の対象を示す)

3格と)〜をずっと[絶えず]、〜を幾度も、〜を少しずつ(Q)

 

『クラウン独和辞典』

1.(接触・付着)〜に(≒@)

2.(隣接・接近)

    a) (接触するほどの接近を示して)〜のきわで、〜に接して(≒@)

    b) (特に末端、先端と考えられる地点を示して)〜に、〜へ(≒C)

    c) (同一語をつないで、接触・隣接を示して)〜を接して(≒@)

    d) (anの意味を補う副詞を伴い、特に移動の際の接触、接近の場所を

示して)(≒@)

      〜に触れながら、〜に沿って、〜のそばをとおって

    e) (慣用的に)〜に、〜へ(≒E)

3.(日時)

    a) (朝夕・日付・事の開始(終了)時などを示して)〜の時に(≒F)

    b) (特に南部で、zuの代わりに)〜に

4.(所属)〜で、〜に(≒G)

5.(対象)〜に対して

6.      a) (理念、信仰などの対象)〜を(≒P)

    b) (訴え、質問、以来などの相手)〜に対して、〜に向けて(≒D)

    c) (書信などの宛て先)〜に充てて(≒D)

7.(体の特定の部位を示して)〜において

8.(ある行為の対象との接触個所を示して)〜の箇所において、〜の箇所へ(≒J)

9.(ある行為の直接の手がかりを示して)〜を手にして、〜をつかんで(≒J)

10.(測定・認識・説明などの手がかりを示して)〜に則して、

〜を手がかりに(≒K)

11.(原因・きっかけを示して)

    a) (死亡・失敗・消滅の原因)〜のために、〜が原因で

    b) (ある心的状態の動機・対象)〜のことで

12.(関係を示して)

    a) (責任・判断の所在)〜のせいで、〜において(≒L)

    b) (義務の担い手)〜として(≒MN)

13.(関与、関心の対象を示して)〜に対して(≒P)

14.(特性などの所有者の主体を示して)〜において、〜に関して(≒A)

15.        a) (所有・欠乏などの具体的内容を示して)〜における、

〜の点で(≒AO)

    b) (増減・変化などの具体的内容を示して)〜の点で(≒O)

16.(内容的一致を示して)〜に即して(≒O)

17.(復讐・批判・反抗などの対象を示して)〜に対して(≒P)

18.(部分的処理の対象を示して)〜を少しずつ

    a) (持続性がともなって)〜を少しずつ(≒Q)

    b) (部分的集中の激しさがともなって)〜をぐいっと(≒Q)

    c) (持続的な仕事の対象を示して)〜をいじくって、〜の仕上げに(≒Q)

19.(ある時点における動作・状態を示して)〜しているところに(≒H)

20.((接近の意から)仕事への着手を示して)〜に(≒H)

21.(最高級とともにam ...stenという形で)(≒I)

 

Duden Deutsches Universalwörterbuch

1. 空間的

    a)(対格と)方向の記述(≒CD)

    b)(与格と)位置、感覚、接触するものの記述(≒@AE)

    c)二種のおなじモノ同士のあいだで、多数もしくはある一群の

規則性の記述(≒@A)

2. (与格と)時点の記述(≒F)

3. (与格・対格と)空間・時間に依存しないあるものや属性の関係を示す

(≒CHLNOP)

4. (対格と・bisが先行する)空間的・時間的な広がりの記述(≒F)

 

Wörterbuch Deutsch als Fremdsprache

1. 与格と

    1.1 具体的なものを示す概念との結びつきで(≒@)

    1.2 地理的概念との結びつきで(≒@)

    1.3 ある特定の場所との結びつきで(≒C)

    1.4 事物を記述する概念との結びつきで(≒J)

    1.5 教育機構を示す概念との結びつきで(≒G)

2. 対格と

    2.1 事物を記述する概念との結びつきで(≒@)

    2.2 地理的概念との結びつきで(≒C)

    2.3 教育機構を示す概念との結びつきで(≒G)

3. 与格と

    3.1 時点との結びつきで(≒F)

    3.2 (対格+bis)ある時点の広がりを示す(≒F)

4. 最上級(≒I)

5. 動詞などとの強い結びつきで(≒KP)

 

Langenscheidts Großwörterbuch Deutsch als Fremdsprache

1. (与格と)空間的近さや接触を示す(≒@)

2. (与格と)時点を示す(≒F)

3. (与格と)〜を助けにして(≒J)

4. (与格と)職業的機関に従事している(≒G)

5. (与格と)仕事や、携わっているものを示す(ただし、まだ完了してはいない)

(≒H)

6. (与格と)不特定のものと関連していることを示す(≒)

7. (与格と)性質を示す(≒)

8. (与格と)理由を示す(≒L)

9. (与格と)ある特定の動詞、名詞、形容詞と補語をつなげるために

つかわれる(≒LNP)

10. (対格と)ある特定の方向への動きを示す(≒C)

11. (対格と)ある特定の動詞、名詞、形容詞と補語をつなげるためにつかわれる

(≒P)

12. bis an   どこへ、どこまでをしめす(≒F)

13. etw. an etw. 同様の名詞間で空間的近さや、同様のものの多数を強調するためにつかわれる(≒@)

14. an was=woran

15. an und für sich(≒O)

 

Basiswörterbuch

1. (与格と)wo?の答えとして

   (対格と)wohin?の答えとして、それがどこにあるかを示す(≒@)

2. (与格と)ある特定の時点を示す(≒F)

3. (与格と)wo?の答えとして

(対格と)wohin?の答えとして、ある特定の場所を示す(≒C)

 

<参考文献・資料>

Drosdowski, G.(1989): Duden Deutsches Universalwörterbuch, Mannheim: Bibliographisches Institut.

Eisenberg, P. &Gelhaus, H. & Henne, H. &Sitta, H. &Wellman, H.(1998): Duden Grammatik der deutschen Gegenwartssprache: Duden Verlag.

Engel, U. (1977): Syntax der deutschen Gegenwartssprache, Berlin: Erlich Schmidt verlag.

Engel, U. & Schumacher, H.(1976): Kleines Valenzlexikon deutscher Verben, Tübingen: Verlag Narr.

Götz, D., & Hänsch, G. &Wellmann, H.(1998): Langenscheidts Großwörterbuch Deutsch als Fremdsprache, Berlin: Langenscheidt Verlag.

Hecht, D. & Schmollinger, A.(2000): Basiswörterbuch, Stuttgart: Ernst Klett Verlag GmbH.

Kempcke, G.(2000): Wörterbuch Deutsch als Fremdsprache, Berlin: Walter de Gruyter GmbH & Co. KG.

 

川澄哲夫(1976):「訳読の歴史―江戸時代から今日まで」『英語教育』7月増刊号、大修館書店

国松孝二他編(2000):『小学館独和大辞典』(第2版)東京小学館

在間進(1995):「ドイツ語における結合価研究の功罪」『月刊言語』Vol.3、大修館書店

清水誠(1993):「独和辞典へのヴァレンツ理論の応用について」『ドイツ語教育部会会報』第43号、日本独文学会

関口存男(1984):『意味形態を中心とするドイツ語前置詞の研究』(第4版)、三修社

成田節(1994a):「補足成分と添加成分の区別をめぐって」『大阪市立大学文学部紀要人文研究』第46巻第12分冊、大阪市立大学文学部

成田節(1994b):「結合価の記述と説明―前置詞格目的語の場合」『富山大学人文学部紀要』第20巻、富山大学人文学部

濱川祥枝他編(1998):『クラウン独和辞典』(第2版)三省堂

G・ヘルビヒ, J・ブッシャ(在間進訳)(1993a):『現代ドイツ文法』(第5版)、三修社

G・ヘルビヒ, J・ブッシャ(在間進訳)(1993b):『新・ドイツ語ハンドブック』、第三書房

山本茂雄他編(1992):『マイスター独和辞典』、大修館書店

吉田有(1973):「動詞にとって前置詞とは何か―ヴァレンツ理論から前置詞の機能を考察する試み―」『上智大学外国語学部紀要』No.8、上智大学外国語学部

吉田有(1980):「動詞結合価の最小値と最大値について」『エネルゲイア』第6号、朝日出版社

吉田有(1983a):「ヴァレンツ理論の問題点」『ドイツ文学』第71号、郁文堂

吉田有(1983b):「ヴァレンツ理論の意味論的展開」『海外言語学情報』、大修館書店

 


*書いたのは「ゆどうふ(Yudouhu 2003.)」です。 Die Verfassarin ist Yudouhu(Natürlich ist das nicht mein wirkliches Name).
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