2022   Re^7:韓国語の音と周波数
2004/11/17 3:08:41  ijustat   (参照数 107)
これは 2018 [Re^6:韓国語の音と周波数] への返信です

pdca様、氷雨様、こんにちは。ijustatです。

トマティス氏の『人間はみな語学の天才である』に、一応目を通しました。途中までは興味を感じられず、途中から難解になったため、ほとんど斜め読みのような形で読み終えました。

音域についてはついにはっきりした理解を得ることができませんでした。たぶん倍音の使用域のことではないかと思いますが、具体的な音素との関係があまり明瞭に説明されていなかったので、結局はわかりませんでした。

しかし、地域と音声の関係に関する仮説は、もしかしたらそうかもしれないと思わせるものがありました。それは、日本語とまったく系統の違うアイヌ語が、ぼんやり聞くと、日本語と似たように聞こえるからです。沖縄語は、形を見れば明らかに日本語と起源を同じくする言語だと分かりますが、響きは少し違います。

また、西日本から韓国にかけての音声も、言語の壁を越えて、似通っているような気がします。

また、地中海北部の言語は、どれも似たような響きがあるようです。どうしてそう考えるかというと、ラテン系のスペイン語とイタリア語が似ているのはともかく、系統の違うギリシャ語まで、ラテン的な響きを持っているからです。若干摩擦音が多いので、ラテン系の言語とは少しは違いがあるでしょうが、母音が五つで音節が明瞭であるなど、かなり似たような音声的印象があります。

系統的に見ると、ギリシャ語は、ラテン語とサンスクリット語との中間あたりにあるそうです。しかし、サンスクリット語とギリシャ語は、響きはずいぶん違うようです。サンスクリット語の姉妹語の子孫だといわれるヒンディー語の響きと比べてみると、その違いは歴然としています。

トマティス氏は「エスノグラム」と言っていますが、もしかしたら、「ジオグラム」と言ったらいいか、「ジオフォノグラム」とでも言ったらいいか、そんなものがあるのかもしれないなあ、などと思ってみました。

トマティス氏の主張は、その言語の音声の特徴に同調できるとその外国語が早く身に付くというもののようです。何しろ斜め読みだったので、読み間違えているかもしれませんが、そのように主張しているようでした。トマティス氏はそれをあまりに強調するので、違和感と抵抗を感じるのですが、まったく根拠のない話でもなさそうだという気もします。

外国語を習得する場合、発音の良し悪しと習得の度合いとに、何か相関関係があるような気がします。英語に関しても、そんな感じがしました。私は英語が得意ではありませんが、それでも、発音を初歩の初歩から洗い出す形でやり直ししたとき、急に学びやすくなったのを感じました。トマティス氏が「オックスフォード英語」と言っていましたが、あの歯切れよい子音の響きと、どことなく緊張感のある母音の発音は、エスノグラムで表されていた高い周波数帯域を表しているのかもしれません。その響きに乗って英語を勉強すると、今までとは違った理解の仕方をしているような感じがするのです。

私はトマティス氏の意見に疑いを持ちながら読みましたが、以上の点は、正しいかもしれないという気がします。

ちなみに、『人間はみな語学の天才である』の訳は、もしかしたら問題があるのではないかと疑っています。それは、著者が自分の文体について言及している箇所があるのですが、私はこの訳文に、著者の言っているような文体を感じないからです。

著者は「私はイタリアから、ほとんどギリシャ・ローマ的と言ってよい南国的な考え方を受け継いだ。私の書く文章は息継ぎが長く、ひとつの文章がキケロばりにピリオドもカンマもなく延々と続く。フランス人のリズムとはちょっと違うのだ」と言っています。しかし、息継ぎの長い文章には見えません。ただ、話の流れに自然なリズムがなく、どうもゴツゴツして読みにくいという印象を受けました。

もしかしたら、本当は長々とした文章の中で読みやすいリズムがあったものを、翻訳者が適宜日本の読者が読みやすいようにと短く切ってしまい、その結果、リズムが壊れて読みにくくなっているのではないかと思います。まあ、私はフランス語が分からないので、あくまでも推測から離れることはできないのですけれども……。