先日、1年生の学生2人と話しながら、学生から見た教授たちの授業スタイルと、その中での私の位置が、よくわかりました。学生たちはけっこうきついキャンパスライフを送っているようです。そうして来年にはもう就職活動です。この冬には日本語能力試験も受けなければなりません。できれば2級を受けたいですが、実力が伴いそうもないので3級を受けようとしています。しかし、3級ではアピールしません。それで、いろいろ学習戦略について一緒に考えました。
それはともかくとして、今回は、覚えるための方法についてお話したいと思います。重要なのは、1)理解すること、2)慣らすこと、3)確認することの3つです。
実際の学習では、どのような順番になるかは人それぞれ違うでしょう。しかし、いずれにしても、いつもこの3つの要素が働いているようです。
以前、イファ女子大学の言語教育院というところで日本語を教えていたとき、作文のテストと称して、日本語の文を暗記させるテストをしたことがあります。そのとき、特に成績の良かった学生たちの方法を聞きながら、上の3つの要素があることに気づきました。
ここで「覚える」というとき、単語とその訳語だけを覚えることは、度外視しています。これは、部分的には役に立ちますが、学習の中心に据えられるようなものではありません。ここでは、短文や文章の暗記を念頭に置いています。
まず、理解ですが、ある学生は、日本語を読みながら、文法や単語がわからないところを韓国語訳で確かめたと言っています。またある学生は、漢字に特に注意を払ったと言っていました。面白いのは、ある学生は、句読点の数をかぞえていました。徹底した観察ぶりです。
慣らしは、理解の度合いによって違うようです。すごく理解力の高い学生は、2〜3度確認するだけで、ほとんど満点を取っていました。しかし、普通の学生は、何度も音読したり、何度も筆写したりして、そのテキストに慣らしていました。特に、理解が簡単なほど、慣れるまで繰り返す数は少なくなり、理解が難しくなればなるほど、慣れるまで繰り返す数は多くなるようです。だから、少し難しいテキストを覚えようと思ったら、まず最初にかなり念入りに理解するのが、結果的には学習のエネルギーを短縮させてくれそうです。
最後に確認ですが、驚いたことに、いちばんできる学生たちは、覚えるためのテキストを渡されたその日に、帰りの地下鉄の中で、韓国語訳を見ながら日本語に訳してみて、間違った部分だけに注意して、そこだけを勉強していました。つまり、最初から理解も慣らしも通り越して、確認から始めていたわけです。しかし、普通の学生は、理解したものを十分に慣らしたあと初めて、韓国語訳を見て日本語で言ったり、書き出してみたりして確認していました。いずれにしても、点数は同じく満点です。
ちなみに、理解という点で言うと、そこに驚きや感動があったりする場合、記憶に残りやすくなるようです。それが甚だしいときには、慣らしたり確認したりしなくても、心に刻み込まれてしまう場合もあります。自分が好きな分野のものを読むことが勧められるのは、そういう点にあるんですよね。好きなものだったら、記憶に残る歩合がよくなりますから。
それから、十分理解してからでないと音読しない方がいいとは思わないほうがいいようです。中には、目で見るとよく理解できなくても、音読してみると意味がはっきり伝わってくるという文章もありますから。ただし、目で見たら理解できるけれども音読すると意味を忘れてしまうような文章の場合は、まず十分黙読して理解したあと、その理解が伝わるように、抑揚や間の取り方に気をつけながら、黙読する必要があると思います。
ちょっと問題ではないかと思うのは、慣らしをあまりしないですぐに暗唱しようとする態度です。就職活動のために面接試験の練習をさせているとき、そのことに気づきました。自己紹介をしてくださいといったら、虚空を見つめながら、たどたどしく、つっかえつっかえ話すのです。文法も間違いだらけです。これには参りました。もし暗唱するなら、十分理解し、十分慣らしたあとで、はじめて暗唱を試みるのがいいのではないかと思います。暗唱の前には、まずスラスラ読みが必要です。でも、自己紹介の準備は、暗唱するのではなく、何度も考えながら口で言ってみたり、頭の中で言ってみたりして、徐々に慣らしていくべきだと思います。……まあ、余談でした。
というわけで、今回は「覚えるには」ということで、私の気づいた3つの原則をお話しました。まだ他にも重要な原則があるかもしれません。そのときは、ぜひ教えていただければありがたいと思います。
今回も、終わりに質問を付けておくことにします。お役に立てれば幸いです。
質問: 1.あなたは外国語を勉強するとき、よくテキストの本文を暗記する方ですか。 2.あなたは暗記をするとき、理解にどれくらい注意を向けていますか。 3.自分なりの暗記テクニックをまとめてみてください。
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