1338   Re^8:アメリカと宮崎監督
2003/05/02 14:56:51  Kotori   (参照数 151)
これは 1336 [アメリカと宮崎監督] への返信です

ijustat様、皆様、こんにちは。

>そういえば、宮崎監督の「千と千尋の神隠し(Spirited Away)」がアメリカで評判になったという話を、日本語の学生から聞きました。宮崎監督の作品は、日本をはじめとするアジアでは人気が高いのですが、アメリカでは今まであまりパッとしなかったそうです。「もののけ姫」では、日本では15億ウォンの興行収益があったそうですが、アメリカでは300万ドルに留まり、字幕の翻訳代500万ドル(だったかな?)よりも少なかったとか。

そうですね。宮崎駿という名は、「Spirited Away」がオスカーをとるまで、一般のアメリカ人にはほとんど知られていませんでした。知られていたのはマニアックなアニメ・ファンの間だけ。大手スーパーマーケットの店頭で見かけることができる宮崎映画といえば、ディズニー配給の「Kiki`s Delivery Service(魔女の宅急便)」と「My Neighbor Totoro(となりのトトロ)」だけで、子ども向け映画として扱われていました。「Princess Mononoke(もののけ姫)」のビデオもアメリカで販売されてはいましたが、配給がミラマックスだった為(確かミラマックスはディズニーの傘下だったと思いますが・・・)、専門店(CD/レコード店など)以外で見かけることはまずありませんでした。あとは・・・あ、宮崎さんが監督をした「The Castle of Cagliostro(ルパン三世・カリオストロの城)」を、レンタル・ビデオ屋で見かけたことがあります。私はそれ以外の宮崎映画を、米国で見たことがありません。だから、「Spirited Away」がオスカーにノミネートされて、しかも受賞したことは、宮崎映画がアメリカで評判になり始める大きなきっかけだったと思います。とはいえ、日本やアジア圏でのような人気とは程遠いですが・・・。

>私も、「もののけ姫」はあまり面白いと思いませんでしたが、「千と千尋の神隠し」は、素晴らしい作品だと思いました。日本で両作品が一般にどう比較されているのかも気になりますが、アメリカではどう受け取られているのか、ちょっと聞ける人もいないので、もっと気になります。

私が「Princess Mononoke」を初めて見たとき、まるで「風の谷のナウシカ」の焼き直しみたいだったので、ちょっとがっかりしました。怒り狂って暴走するイノシシの姿が、暴走するオームの群れと重なってみえました。人間と自然の関係の描きかたとかも似ていたと思います。では、風の谷のナウシカを見たことがないアメリカ人たちの感想はどうだったかというと、私が直接聞いた限りでは、「悪くはなかったけど、話がダークで複雑で意味がよくわからなかった。」というものがほとんどでした。

>私の想像では、「もののけ姫」と「千と千尋の神隠し」との評判の大きな差は、アメリカがキリスト教の価値観を持っているからではないかと想像しています。キリスト教的な視角から「もののけ姫」を見ると、“神”と呼んでいる存在が高々全長1キロ程にしかならないドラゴンだというのは、まるで神の“ミニチュア”みたいなのです。それに対して、「千と千尋……」の描く世界は、人間の本質を象徴的に描いているものなで、申し分ありません。

確かにそれはそうかもしれませんね。「Princess Mononoke」では、Godと称されていた神ですが、「Spirited Away」では、Godではなく spirit と言われていました、そういえば。しかし、キリスト教のアメリカ人でも、ギリシャ・ローマ神話の神々や、ほかの宗教のいろいろな神々の存在についてはよく知っているので、アニメに出てくる神もそれなりに理解できるんじゃないかという気もします。例えば、アメリカにはキリスト教以外にもたくさんの宗教があるわけで、昨年のクリスマスなど、12月によく交わされる「Merry Christmas!」というごく普通の挨拶が近所の市役所職員内では禁止され、「Happy Holidays!」に統一されました。この決まりには、職員たちからかなり不満が出ていましたが・・。

>私にそのことを話してくれた学生の考えでは、アメリカ人の情緒は、ディズニーのアニメに見られるように、楽しくて、ハッピーエンドで終わるものを喜ぶのだそうです。「もののけ姫」では、最後に主人公の少年と狼に育てられた少女とが、互いに心引かれながらも結ばれず、それぞれの世界にまた帰って行きますが、日本人や韓国人の心に訴えるこの場面は、アメリカ人には理解できないそうです。それが「もののけ姫」が振るわなかった理由だと分析しています。

アメリカ人が、「楽しくて、ハッピーエンドで終わるものを喜ぶ」という説には私もまったく同感です。感情が複雑にからまった映画とか、私は大好きなんですが、アメリカ人の友人たちはそういうものを面白いとは感じないようです。以心伝心とか、沈黙は金なりとかいう価値観はアメリカではあまり理解されないように感じます。そういった、表面に出さない感情がわからないんじゃないでしょうか。

>これが私の想像よりもずっと説得力のある説明だと思いますが、実際にアメリカに住んでいる人たちに聞くことができないので、ぜひとも「千と千尋……」に関する生の声を、聞いてみたいと思いました。

「Spirited Away」は私も大好きです。私の考えでは、「Spirited Away」が「Princess Mononoke」と大きく違うのは、主人公の千尋がごく普通の10歳の女の子で、最初はものすごく臆病だし、迷い込んだ奇妙な世界も千尋自身全然理解していなくて、そのぶん観客が千尋と同じ立場で冒険できる、というところではないかと思います。観客が千尋について行ける。もののけ姫やアシタカ少年は勇敢で強かったし、話も複雑だったので、アメリカの観客は取り残されてしまったのでは?「Spirited Away」を映画館で見たとき、私の真後ろに6歳ぐらいの女の子とそのお父さんが座っていましたが、女の子が映画の最中怖がっていたので、お父さんは 小声で少し解説を加えながら 「怖くないよ」となだめていました。おもしろかったのは、お父さんが映画を見ながら 「That`s weird...」とつぶやくと、すかさず千尋が映画の中で「That`s weird...」と言うのです。観客が主人公と一体になっていることがわかります。豚になった両親を助けるためにがんばる、というのも誰にでも理解しやすいでしょうし。千尋が迷い込んだ世界がまったく宮崎監督の想像の世界で、毎分が驚きの連続・・見る者を飽きさせないというのも大きな魅力だと思います。

ちなみに、クロアチアのM.U.D.仲間にもアニメ・ファンがいるのですが、彼は「Princess Mononoke」がとても良かったといいます。理解に苦しむこともなかったそうで。映画の中で描かれる、人間や神々の部族間の対立などが、現実にバルカンで民族間の戦争を経験している彼にとっては身近に感じられたのかもしれません。

>このように、韓国では日本の文化に対してかなり多くの人が関心を持っています。特に、宮崎駿監督のアニメは、根強いファンの層があります。

私の周りで日本に興味をもっているアメリカ人たちは、ほとんどが漫画&アニメのせいみたいです。彼らは「Princess Mononoke」を見たといいますが、監督の名前を聞くと誰も覚えていませんでした・・・。宮崎監督の名前を知っていたのは、レコード屋のお兄さんだけ。私が「Spirited Away」のDVDを買ったら、レジで「ぼくは宮崎映画の大ファンなんだよ!」と言われました。アメリカで販売されていない宮崎映画のDVDを日本から取り寄せて見ているそうです。普通、日本製のDVDはタイプが違うのでアメリカ製のDVDプレイヤーでは再生できないんですが、このアメリカ人のお兄さんは、どんなタイプのDVDでも再生出来るプレイヤーを買ったそうで・・かなりのマニアさんかもしれません(^^)

「Spirited Away」と同時に、「Castle in the Sky (天空の城ラピュタ)」と「Kiki`s Delivery Service」( <--パッケージを変えて再発売)が発売になりました。「Castle in the Sky」 は、2年程前に発売されるはずで、英語版の吹き替えも済んでいたはずなのに、お蔵入りになってしまって・・・。今回本当に発売されて、やっと!やっとか!という感じです。