520   質問にお答えします。
2001/07/19 21:17:45  ijustat   (参照数 19)
氷雨様、こんにちは。ijustatです。

> これはですね ある高校の日本語の期末テストに出た問題なのです
>
> 次の( )に入れられないものは? (一番適当ではないもの)

いちばん適当でないものということは、適切なものから誤用までそれぞれに程度の違いがあるということですね。では、見てみましょう。

> ( )をする
>
> 1.歌(うた) 2.買(か)い物(もの) 3.ギター 4.ピアノ 5.電話(でんわ)

ううん、これは、「一番適当ではないもの」という、程度の差をほのめかす質問とは裏腹に、適当なものと適当でないものが真っ二つに分かれます。中間はありません。つまり、質問が間違っています。

○適当なもの:
「買い物」、「電話」

○適当でないもの:
「歌」、「ギター」、「ピアノ」

> 出題をした先生によると答えは4番だそうです.

4番! 「電話をする」は正しい表現です。これは、「電話をかける」という意味と、「電話で話をする」という意味の両方に用いられています。『新明解国語辞典』に「あとで電話します」という用例が登録されています。

「買い物をする」も正しい表現です。これは誰も異論がないようですね。

では、不適切なものは、

「歌をする」は、意味の不明な表現です。「ギターをする」と「ピアノをする」も、意味がはっきりしない表現です。文脈さえ与えられれば、意味は通じるかもしれません。しかし、文脈よりも個々の単語の意味が文全体の意味を支配する状況では、これらはどういう意味を表すのか、明瞭な意味の把握はできません。

この3つは「歌をうたう」、「ギターを弾く」、「ピアノを弾く」と言わなければいけません。ピアノは「ピアノを叩く」という言い方も時にはします。でもこれは、“演奏”の意味ではなくて、鍵盤を叩く動作しか意味しません。

もっとも、詩などで破格の表現をするときには、場合によってはできるかもしれません。「旅客機は冷たいマントルの海で力なく泣き崩れた」とか、「入り口よ、そのこずえにカメラを浸して逃げ去れ!」だとかのように、ありえない意味でも創り出せるのが詩ですから。そのとき、「ギターをする」は、“ギターに乗って空を飛ぶ”とか、“ギターを抱きしめて猥褻に愛撫する”とか、“人や動物をギターのように、左腕で抱いて右手で掻きむしる”とか、あるいは、“枕か何かをかかえて、ギターを抱いているような格好をする”などの意味で使われるかもしれません。いずれにしても、どんな意味を持ってその表現が出現するかは予測できないものです。

> なんか変ではないかなって思っていますが...?
> 生徒たちのほとんどは1番ではないかなと言っています

1番を不適切とする生徒たちの感覚は正しいものです。ただし、答えは1つではありません。3つです。

> 答えを選ぶのに迷ってるのはまだ
> "韓国式の日本語"を卒業しなかったってわけなんでしょうか

迷わず間違えるよりはいいと思います。

これは、先生の資質が否定されるような誤りですが、氷雨さんは、このことを他の友達には言わないで秘密にしておいてください。先生の生活に響きます。ただ、この書き込みをプリントアウトして、こっそりその先生に見せてあげてください。

最近は、日本語学習者の急増にともなって、他の外国語の先生が仕方なく日本語の先生にさせられることがよくあります。新しい外国語を極めるのは、大変難しいことです。ですから、苦しみながら日本語の勉強をし、完成には程遠い状態で学生たちに教えなければならない先生の苦労は本当に涙ぐましいものなのです。

くれぐれも、先生の出した質問も答えも全て間違っていたということは、友達にも父兄にも、他の先生たちにも言わないようにしてください。